産業衛生学専攻

博士前期課程

 教育課程

 博士前期課程の教育課程は、「共通科目」と「専門科目」の2つに分けて構成しています。

 「共通科目」は、医学研究科に共通の科目(研究科共通)と産業衛生学専攻に共通の科目(専攻共通)があり、学生は共通科目をすべて履修し、大学教育で履修していない内容でも産業衛生学において必須の知識が教授されます。

 「専門科目」は、産業衛生学のうち専門的な13領域の特論、演習、実習及び論文指導の科目であり、学生は大学の教育課程での履修内容に基づいて推奨する領域の中から1領域を選択し、その特論、演習、実習及び論文指導をすべて履修し、産業衛生学の具体的な課題を探究するために必要な専門的な知識と手法が教授されます。

 

ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針) 

 産業衛生学専攻(博士前期課程)では、本研究科の規定する修業年限以上在学し、次に示す高度な学識及び研究能力を身につけるとともに、所定の単位を修得し、かつ、必要な研究指導を受けたうえ、修士論文審査及び最終試験に合格した学生に、修士(産業衛生学)の学位を授与します。
 1. 産業衛生学分野の基礎的知識及び専門に関連する知識を修得している。

  2. 学術的意義、新規性、創造性等を有する研究について、倫理性を備えて推進・実施することができる。
  3. 研究成果を論理的に説明できる。

 

カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針) 

  1. 産業衛生学専攻(博士前期課程)は、13の産業衛生学の専門領域で構成し、「共通科目」と「専門領域科目」を配置した教育内容としています。
  2. 「共通科目」は、産業衛生学分野の学習を深化、進展させるための能力を身につけるための基盤となる科目としています。さらに、幅広い知識を得るために、本研究科に共通の科目(研究科共通)と産業衛生学専攻に共通の科目(専攻共通)を設置し、学生は、これらの科目をすべて履修し、大学教育で履修していない内容でも産業衛生学において必須の知識が修得できる内容としています。
  3. 「専門領域科目」は、特論、演習、実習及び論文指導の科目で構成し、学生は、大学の教育課程での履修内容に基づいて推奨する領域の中から、1領域を履修できる内容としています。
  4. 学生の能動的学習活動を支援するために、学生参加型の授業を展開しています。
  5. 修士論文作成への指導・支援を行い、多様な視点からの指導が可能となるよう複数の指導教員により指導します。

 

「職業性腫瘍学領域」

 職業性腫瘍学は、職場や作業に内在する化学的、物理的あるいは生物的要因に起因するがんについて発生メカニズムを明らかにして、その予防、早期発見、治療に関する方法を探求する領域である。「特論」では、職業がんのこれまでの歴史を学び、一般生活環境とは異なる発がん要因を理解し、職業がんの特徴について学ぶ。さらに、個々のがん原性物質の性状、存在形態、曝露形態などを知ると共に、発がんメカニズムに関する知識を整理し、がん原性物質の管理ならびに予防対策に実践応用するための能力を習得する。「演習」では、がん原性物質の環境中濃度、曝露量、がん原性の強さなどを考慮した理論的演習や事例検討を通して、職場の発がん要因と労働者への健康影響を的確に判断して問題点を明確化できるように構成し、職業がんの予防に向けた取り組みを実践できる能力を身につける。「実習」では、がん原性を予測する試験を行って、発がんメカニズムについて実際に結果を得て考察する過程を通して、予防対策に応用できる知識の整理をする。同時に、がん原性物質の安全な取り扱いについても実際に学び、有害物質の安全な取り扱い方法について実践的な能力を習得する。「論文指導」では、まず研究課題の設定を行い、次に、研究倫理、専門的な研究を行うための文献調査の手法、得られた結果に対する統計的な検討、結果について既知の事象と比較しながら考察し結論を導く方法などについて教示する。また、各専門領域及び関連の深い周辺領域の実践について熟知させる。そのうえで、主体的な探求、発想、思考、分析によって職業性腫瘍学領域における研究課題の探求能力を修得させる。この科目を通して、職場や作業に起因する発がんに関するさまざまな課題を解決することができる能力を付与する。

 

「呼吸病態学領域」

 呼吸病態学は、有機・無機粉じん、工業用ナノ材料などの職場に存在する吸入性化学物質により引き起こされる多岐にわたる職業性肺疾患の発生機序や病態生理を解明し、肺疾患の早期発見や労働者の曝露影響を未然に防ぐ方策を確立する領域である。「特論」では、様々な職業性肺疾患の特徴や病態生理の習得と知識の蓄積を目指す。「演習」では、職業性肺疾患における分子生物学的アプローチの手法に関する幅広い基礎知識を実践的に習得し、研究発表や討論能力の基礎的指向性の習得を目指す。「実習」では、職業性肺疾患に関する研究テーマを企画し、具体的な研究の目的、計画、評価手法などを議論し、研究デザインの構築を図る。「論文指導」では、研究テーマにおいて得られた結果の妥当性や信頼性を検証し、問題の分析、調査、論理的思考能力を養うと同時に、論文の独創性・科学的意義を遂行しつつ、結果から導き出された新たな事実を検証し、完成させる。この科目を通して、自ら科学的に問題を発見し、解決する能力を養成する。

 

「産業保健経営学領域」

 産業保健経営学は、産業保健に対するニーズに対して、労働安全衛生マネジメントシステムおよび産業保健マーケティングの手法を活用して、産業保健プログラムを企画・実施・評価する一連の領域である。「特論」では、マネジメントシステム、マーケティング、活動の評価手法等の専門的・技術的事項を教育するとともに、適用の場である企業や事業場についての理解を深めさせるための講義を行う。「演習」では、ケースメソッド、抄読会、カンファレンスなどの手法を通して、ニーズに基づく産業保健プログラムの企画や評価に関する実践を学ぶ。また、演習機会を通して、プレゼンテーション、ディスカッションおよびファシリテーション技法を習得する。「実習」では、特定の企業や事業場におけるフィールド演習と担当教員との討論等を通じて、産業保健経営学の実践技法を習得する。「論文指導」では、研究課題の設定を行い、文献調査の手法、統計的な検討、研究倫理などについて指導した上で、研究を遂行させる。これによって、産業保健経営学の領域及び関連の深い周辺領域に関する課題の探求能力を修得させる。この科目を通して、企業および事業場に存在する産業保健活動のニーズを明確にし、優先順位を付けたうえで、科学的知見に基づくプログラムを企画・運用して、活動の評価を行う能力を付与する。

 

「精神保健学領域」

 精神保健学は、産業医学の中で、特に労働者の精神保健を扱う領域である。メンタルヘルス不調例の一次予防(未然予防、不調の二次予防(早期発見と早期対応)、三次予防(職場復帰支援)と、幅広い活動を対象とする。「特論」では、本領域全般について、その専門的な知識と技術、研究手法などを教育し、実践の基本を踏まえ、それを発展応用していく能力を修得させる。「演習」では、理論的演習、事例検討をはじめとする多彩な機会を通して、本領域の知識・技術を実践的に修得させる。「実習」では、具体的な研究方法、研究倫理等に関する議論を通じて、特に本領域に関連の深い科学的な思考、リサーチマインドを醸成する。「論文指導」では、得られた研究結果に対して多角的に議論を繰り返し、研究のまとめ方、論文の構築の仕方を系統的に修得させる。本領域の特色は、事業場の特色を十分に理解した上で人事労務管理部署や事業場外の関連資源と有機的な連携を図ることが重要となる点である。この科目を通して、本領域の特色を踏まえた課題解決能力を付与する。

 

「健康開発科学領域」

 健康開発科学は、労働者の健康保持・増進に関するシステム及びプログラムの開発、実践、評価を行う領域である。「特論」では、健康開発科学の全般にわたり、基礎知識を得ると同時に実践応用するための経験を蓄積することで、健康開発科学の基本を学び、発展応用する能力の習得を目指す。「演習」では、健康開発科学全般にわたる幅広い基礎知識を実践的に習得するとともに、大学院生自ら発表・議論を行うことにより、プレゼンテーションおよびディスカッション能力の基礎を身につけ、自ら研究テーマを見出し、解決していく能力を獲得する。「実習」では、自分の研究テーマの概要が決まったのち、指導教員のもとで具体的な研究の方向性や手技・手法、研究倫理などに関する議論を行い、研究の組み立てを学ぶ。「論文指導」では、自分の研究テーマについて、指導教員のもと、討論し、問題点を明らかにする過程を繰り返し行うことで研究のまとめ方を学ぶ。論文執筆においては、実際に論文を書きながら、論文投稿のプロセス・発表の倫理などを系統的かつ実践的に習得する。この領域の特色は、産業保健分野でも重要な労働者の健康保持・増進についての実践と評価を科学的に行うことである。この科目を通して、現在顕在化している労働者の高齢化、身体活動量の低下や過食、喫煙にともなう生活習慣病の増加などの問題を、職場の状況に応じて解決することができる能力を付与する。

 

「作業関連疾患予防学領域」

 作業関連疾患(Work-related Diseases)とは、職業に由来するいわゆる「職業病」と異なり、一般人口にも見られる多原因性疾患であり、その発病原因の一つに職業性因子が関わっているもの、あるいは職業性因子は直接原因でないが増悪・促進に関与しているものを指す。作業関連疾患予防学は、その疾患の職業性因子を解析し、発症予防・管理法を究明する領域である。就業と疾病の関係を明らかにするという点では産業医学分野の重要な領域であり、特に現場での作業態様のデータを基にして多角的に解析するということで実践的な産業医学である。「特論」では、職域における産業保健の課題として、特に先進諸国においては従来の職業性疾病に代わり重要な対策対象となっている作業関連疾患の範囲、就業との関連、発症および進展予防に資する対策について理解し、現場での対策、教育の方法を習得する。「演習」では抄読会、カンファレンス、セミナー、研究会などの多彩な機会を通して、作業関連疾患予防学の幅広い基礎知識を実践的に習得するともに、大学院生自ら発表・議論を行うことにより、プレゼンテーションおよびディスカッション能力の基礎を身につける。「論文指導」では、自分の研究テーマの概要が決まったのち、指導教員の下で具体的な研究の方向性や手技・手法、倫理的配慮などに関する議論を行い、研究の組み立てを学ぶ。

 

「放射線健康医学領域」

 放射線健康医学は、放射線被曝の歴史と今後、東京電力福島原子力発電所事故並びに廃炉作業に携わる従業員の低線量放射線被曝の影響について考えていく上で必要なこれまでの様々なデータに基づき学習して放射線の人体への影響を正しく理解させる。「特論」では、放射線の種類と性質、線量単位、放射線の人体への影響、放射線障害の歴史、放射線防護の基本理念、放射線安全取扱い、放射線に関する法令について理解させる。「演習」では、放射線障害を生じた事故や放射線防護対策等に関する事例の検討や放射能濃度の計算を行わせることで、自ら研究テーマを見出して解決していく能力を獲得させる。「実習」では、放射線防護の実習や検出器等を用いて放射能濃度を計測する実習等を実施させて放射線の人体への影響を正しく理解させる。「論文指導」では、東京電力福島原子力発電所での廃炉作業に携わる従業員の低線量放射線被曝の影響について考えていく上で、具体的に出たデータをまとめ、放射線影響を論理的に解析していく。

 

「医学概論領域」

 医学概論は、生命倫理学と医療人類学を主な学問領域とする社会医学であり、人間の文化的価値観や歴史的変遷の観点から医療システムのあり方を科学的に分析する学問である。「特論」では、産業衛生学の基盤となる医学概論(生命倫理学・医療人類学)の基本を学び、発展応用する能力の習得を目指すのが目的である。「演習」では、産業衛生における医学概論の幅広い基礎知識を実践的に習得するともに、プレゼンテーションおよびディスカッション能力の基礎を身につける。自ら研究テーマを見出し、解決していく能力の獲得を目指す。「実習」では、指導教員の下で具体的な研究の方向性や手技・手法、研究倫理などに関する議論を行い、研究の組み立てを学ぶ。研究結果に至るまでの討論などを通して、科学的及び倫理的なものの考え方、リサーチマインドを理解する。「論文指導」では、実際に論文を書きながら、指導教員との議論、繰り返しの修正過程などの経験を通して、論文の構造・構成、記載法、さらに論文投稿・発表の倫理などを系統的かつ実践的に修得する。この学問領域の特色は、人間の歴史的な文化的背景(慣習・価値観・倫理など)から医学・医療のあり方を科学的に探求することにある。この科目を通して、産業保健システムの国際比較、労働者の健康意識・思想と健診結果との関係、精神障害者の職場復帰時の倫理的諸問題といった課題を解決することができる能力を付与する。

 

「産業保健疫学領域」

 産業保健疫学は、職場における健康状況とそれに関連する要因の分布を明らかにし、働く人々の疾病発生の予防、寿命の延長、生活の質の向上を目指す学問である。「特論」では、働く人々の心身の健康の維持増進を図るための科学的アプローチを教育する。また産業保健疫学的研究の歴史的展開と今後の課題を展望し、「労働と健康の調和を図る」ことの本質を理解させる。「演習」では、国内外の産業保健疫学の動向を把握し、職場環境改善に有効な方法論の検討を行う。最新の疫学的・生物統計学を学びながら課題の明確化や分析、解決アプローチ法を具体的に考案できるように構成する。「実習」では、産業保健現場で考えられる最善のアプローチを考慮しながらフィールドワークを行う。疫学研究を行う際に必要な研究手法や研究倫理などにも配慮した指導を行うとともに、得られた結果の解釈の仕方、まとめ方について学ぶ。「論文指導」では、研究課題を明確にし、専門的な研究を行うための文献調査の方法、データの収集方法、統計解析、研究倫理などについて指導する。その上で国内外の専門誌や学会で研究発表を行い、また実践の場面で役に立つ人材の育成を行う。指導に当たっては、主体性をもって自分の発想やオリジナリティーを重視する。

 

「産業衛生工学領域」

 産業衛生工学は、労働環境における有害因子の発生メカニズムとその測定法および制御法について学ぶ科目である。特論では、産業衛生学領域における工学的対策手法の重要性について認識するとともに、作業環境改善の効果的な方法を理解する。演習では、抄読会、カンファレンス、セミナー、研究会などの多彩な機会を通して産業衛生工学全般にわたる幅広い基礎知識を実践的に習得するとともに、自ら発表、議論を行うことにより、プレゼンテーションおよびディスカッション能力の基礎を身につける。実習では、現場で問題となっているテーマを選択し、実験、実習を通して科学的なものの考え方、リサーチマインドを理解する。論文指導では、まず、選択した研究課題について、研究の背景、関連する文献調査の方法、研究方法等について教示する。次に、課題を解決するための実験系を組み立て、データを収集する。得られたデータについて指導教員とのディスカッションを重ねながら産業衛生工学的考察を行い、研究成果を修士論文としてまとめる。

 

「作業環境管理学領域」

 作業環境管理学は、作業環境や作業工程に存在する健康有害要因(化学物質、粒子状物質、騒音、電磁波など)を的確に予測し、計測・評価し、そして管理する現実的かつ効果的な方法を探求する学問領域である。「作業環境管理学特論」では、有害性の特定、最新の環境計測技術、曝露アセスメント法、リスク評価法などについて習得し、「作業環境管理学演習」では、事例研究を通して作業環境や作業工程の問題点を指摘し、評価・改善する能力を修得させ、さらに「作業環境管理学実習」では、産業現場で得られた課題について具体的な改善方法を提案することを目指す。「作業環境管理学論文指導」では、得られた研究成果について議論を繰り返しながら研究のまとめ方を学び、かつ、論文の構造、構成、記載方法、投稿の倫理などを実践的に修得する。この「作業環境管理学」の特色は、労働衛生学、化学、中毒学、衛生工学、人間工学、健康科学、疫学、生理学などの幅広い領域の知識や技術をもとに、作業環境や作業工程に存在する健康有害要因を的確に予測し、認識し、評価し管理できる高い能力、すなわちオキュペイショナルハイジニストに相当する能力をこの科目を通して修得することにある。

 

「安全衛生マネジメント学領域」

 安全衛生マネジメント学は、現実の産業現場における有害要因を見つけ出し、労働者に対する影響を評価し、防止対策を策定するための理論や手法を研究する領域である。「特論」では、有害要因のリスクアセスメント・リスクマネジメントに関する専門技術・理論や研究方法を教育し、「演習」では、事例検討や机上演習を通して、職場の有害要因と労働者への健康影響を的確に判断して、有効な対策を考案できる能力を修得させ、「実習」では、産業現場におけるフィールド調査を行い、具体的なリスクアセスメント・リスクマネジメントの実践学習と問題解決能力の獲得を目指す。「論文指導」では、研究課題の設定に続いて、文献調査の手法、統計的な検討、研究倫理などについて教示し、安全衛生マネジメント学領域及び関連の深い周辺領域の実践について熟知させる。そのうえで、主体的な探求、発想、思考、分析によって専門領域における研究課題の探求能力を修得・実践させ、研究論文を完成させる。この領域の特色は、産業現場の複合した有害要因を幅広く捉え、有効に労働者を防護する多面的な対策を考案するところにある。

この科目を通して、実際の産業現場の有害要因から労働者を保護するための実践課題を抽出し、解決策を考案することができる能力を付与する。

 

「産業人間工学領域」

 人間工学の英語名称であるergonomicsは、science of work(仕事の科学)を意味するギリシャ語に由来する。しかし、現在、人間工学は人間活動のすべての局面に行き渡っているシステム志向の学問領域となっている。本専攻における産業人間工学は、人間工学が包括する広範な領域から、産業現場で抱える問題への解決方策に関わるテーマとして、疲労、ストレス、ヒューマンエラーを取り上げる。「特論」では、疲労およびストレスに関する様々な評価手法を紹介するとともに、ヒューマンエラーが起因する多くの事故事例を紹介し、人間工学的対策を考える。まず、ひとの生理反応の特徴に続いて、疲労、メンタルワークロード、ストレス、快適性の説明を行うことで、これらの生理的評価方法を理解させる。次に身体人間工学とヒューマンエラー、事故事例を紹介し、産業人間工学の広い領域の知識を得るとともに、実習、論文作成に繋げられるような応用力を身につけることを目的とする。「演習」では、論文輪講を通して産業人間工学に関する社会情勢を学び、合わせて産業人間工学を実践する技術を身につける。抄読会、セミナーなどの多彩な機会を通して、人間工学の手法についての基礎知識を実践的に修得するともに、大学院生自ら発表・議論を行うことにより、プレゼンテーションおよびディスカッション能力の基礎を身につける。「実習」では、生理的、主観的、他覚的にひとを評価する種々の手法を学び、それらの意義とその応用について理解させる。産業人間工学においてはひとの状態の計測が重要なポイントとなるため、その技術を修得する。「論文指導」では、自分の研究テーマについての研究計画の素案の作成方法を指導し、実験計画の策定、実験システムの構築、得られたデータの統計解析の方針等について討論し、研究計画素案の問題点を明らかにする。このような過程を繰り返して、研究テーマの設定から、実験実施および結果の解析とまとめまでの一連の過程を学び、実験を実施して、データを得る。論文執筆においては、実際に論文を書きながら、指導教員との議論、繰り返しの修正過程などの経験を通して、論文の構造・構成、記載法、さらに論文投稿・発表の倫理などを系統的かつ実践的に修得する。この科目を通して、疲労およびストレスの評価と対策、職場の快適化、ヒューマンエラー防止対策を提案でき、さらに、厳密に統制された条件下における実験室実験を計画・実施して、産業現場で応用できる評価手法の検討を行うことができる能力を付与する。

 

博士後期課程

教育課程

 博士後期課程の教育課程は、「共通科目」と「専門科目」の2つに分けて構成しています。
 「共通科目」は、学生の主体性や能動性を引き出す教員と大学院生による双方向型の講義を行い、研究の思考性の元となる多面的アプローチを行う素養を身につけさせます。
 「専門科目」は、産業衛生学の中で履修者が専門とする領域に関する探究を深めることができるように構成しています。

 

ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針) 

 産業衛生学専攻(博士後期課程)では、本研究科の規定する修業年限以上在学し、次に示す高度な学識及び研究能力を有するとともに、所定の単位を修得し、かつ、必要な研究指導を受けたうえ、博士論文審査及び最終試験に合格した学生に、博士(産業衛生学)の学位を授与します。
 1. 産業衛生学分野の高度で幅広い専門的知識を修得している。
 2. 学術的意義、新規性、創造性等を有する研究について、倫理性を備えて企画・推進・実施することができる。
 3. 高度な普遍性を持つ研究成果を論理的に説明できる。

 

カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針) 

  1. 産業衛生学専攻(博士後期課程)は、前期課程における産業衛生学の13の専門領域を、後期課程では6領域に集約し、「共通科目」と「専門領域科目」を設置した教育内容としています。
 2. 「共通科目」は、学生の主体性や能動性を引き出す教員と学生による双方向型の講義を行い、研究の思考性の基となる多面的アプローチを行う素養を身につける科目としています。
 3. 「専門領域科目」は、産業衛生学の中で履修者が専門とする領域に関する探究を深めることができる内容としています。
 4. 博士論文作成への指導・支援を行い、多様な視点からの指導が可能となるよう複数の指導教員により指導します。
 5. 後期課程からの入学者は、「産業衛生学研究概論(前期課程の必修科目)」の受講を推奨しています。

 

 

「職業病態学領域」

 職業病態学は、重篤な職業病であるがんや線維化などの不可逆性病変を伴うあるいは不可逆性病変へ進行する疾患を扱う。具体的には、職場に存在する有機・無機粉じん、工業用ナノ材料などの吸入性化学物質により引き起こされる多岐にわたる肺炎症・線維化疾患、ならびに化学的、物理的あるいは生物的要因による職業がんなどの発生機序や病態生理を培養細胞試験、動物実験などを介して解明し、不可逆性病変の早期発見とともに労働者への有害物質の曝露影響を未然に防ぐ方策を提言する領域である。「特別論文指導」では、様々な職業がんや職業性肺疾患の特徴および詳細な病態生理の習得を行い、不可逆性病変の機序解明の実践的能力を習得する。さらに、職業がんならびに職業性肺疾患に関する論文を集約し、研究テーマを見出し、有害性要因と病態との関連等に対して自ら仮説を立てて、仮説の解明に必要な分子生物学的アプローチを含めた解析手法の習得をめざす。また、自らの研究テーマに対する、具体的な研究計画や評価手法について議論し、研究デザインの構築を図る。最終的に自らの研究課題の設定、研究倫理、文献調査、研究方法と得られた結果に対する統計学的検討、既知の事象を踏まえた考察から結論を導くまで課程などを総合的に討論し、独力で科学的に推敲し解決できる能力を養う。この科目を通して、職場や作業に起因するがんや呼吸器疾患の予防、低減に向けて自ら課題を見出し、科学的に解決する能力を付与する。

 

「産業健康科学領域」

 産業健康科学は、労働者の健康、すなわちwell-being(良好な状態)を確保するための科学的方法の探求と実践を行う領域である。具体的にはメンタルヘルス不調、ストレス・疲労、すべての年代にわたる健康の保持増進、労働者の高齢化、等に関わる問題点を自ら指摘し、具体的で実現可能で、かつ、事後の評価が可能な指標をもたせた改善対策を提案し、かつ、実践し、それにより労働者の健康の保持・増進を評価し、最終的には労働現場における生産性の向上が期待できる研究を遂行する。「特別論文指導」では、修士課程に引き続き、まず、メンタルヘルス不調、ストレス・疲労、職域における健康増進に関する介入研究、労働者の高齢化対策に関する最新の情報を自ら調査する。従来用いられている研究手法およびその結果を理解した上で、未解決の問題や早急に取り組むべき課題を自ら見出し、産業領域に貢献しうる研究テーマ・仮説を自ら見いだす。さらに、その研究テーマ・仮説を立証するための実験・調査手法を自ら立案し、実験計画を遂行するための議論を行い、研究を遂行する。得られた結果に対する統計学的検討、既知の事象と対比して考察を行い、結論を導き、海外一流雑誌へ掲載できるレベルの論文を自ら作成する総合的な能力を養う。それにより労働者のwell-beingを最適に保てるような実践を行い、産業領域へ貢献できる科学者としての能力を身に付ける。

 

「有害業務管理学領域」

 有害業務管理学は、職業において利用あるいはそれに伴う化学的要因、物理的要因、生物的要因、並びに複合的要因によって引き起こされる作業関連疾患について、対象となる範囲とその疾患の基本的な病態、就業との関連、発症及び進展予防に資する対策について理解し、労働者への有害物質の曝露影響を未然に防ぎ、現場での対応並びに教育の方法を取得する領域である。先進諸国の職域における産業保健の課題は、過去の職業性疾病と異なり、生活習慣病を罹患している労働者が業務従事する場合の対策が重要である。特に福島原子力発電所の事故における放射線曝露や、その過酷な労働状況における対策については今後重視されると思われる。「特別論文指導」では、有害業務で引き起こされる様々な疾患とその特徴および詳細な病態生理を理解したうえで、それに対する防護並びに安全配慮、職務の適性配置等産業保健上重要な課題を分析し、自ら研究テーマおよび作業仮説を見出すことを目指す。さらに、その仮説の解明のための解析方法を自ら実践し、結果を科学的及び論理的にまとめあげ、研究テーマの設定、研究方法、結果、考察、結論、研究倫理、文献調査について相互議論により構築しながら科学論文として自ら執筆できる能力を養う。この科目を通して、有害業務に起因する疾患の予防、低減に向けて自ら課題を見出し、科学的に解決する能力を習得する。

 

「産業疫学・医学概論領域」

 産業疫学・医学概論は、疾病の予防、寿命の延伸、生活の質の向上を目指して、職場に所属する個人・集団・組織を対象に科学的根拠に基づいた効果的な支援を行うために、職場の健康状況とそれに関連する要因の分布および健康の文化的価値観(生命観・病気観・死生観等)を疫学、予防医学、生命倫理学、医療人類学、保健学、看護学、行動科学等の学際的な観点から明らかにする学問である。具体的には、働く人々の心身の健康維持増進を図るための科学的・実践的アプローチを習得すると共に、産業社会および産業保健システムの歴史的変遷を生命倫理の視点も含めて考察し、労働者や職場にとって有効な支援方法や産業保健システムのあり方を検討する。「特別論文指導」では、文献調査の方法、データ収集方法、統計解析、研究倫理など必要不可欠な能力を習得すると共に、プレゼンテーションおよびディスカッション能力を養う。さらに、自ら課題の明確化や分析・解決アプローチ方法を具体的に考案でき、最適な方法に基づいて研究活動を展開できることを目指す。本領域の博士課程の最終目標として、自らの疑問や課題意識に基づいて収集した研究データを分析し、国内外の学会で研究発表を行い、国際的に一流の産業保健関連雑誌や生命倫理学雑誌に掲載することを目指す。この科目を通して、産業保健の現場での疾病の予防、低減に向けて独力で科学的根拠に基づく支援を行う能力を習得する。

 

「産業衛生工学領域」

 産業衛生工学は、作業環境や作業工程に存在する健康有害要因を的確に予測し、計測し、評価し、管理するための現実的かつ効果的な方法を探求する学問領域である。そのためには、まず、作業環境中に存在する有害因子を正しく把握することが重要である。作業に伴って発生する有害要因としては、粉じんやガス、蒸気などの化学物質、騒音、振動、電離放射線などの物理因子があるが、近年はバイオエアロゾルなどの生物因子も注目されつつある。産業衛生工学領域の目標は、これらの有害要因を制御する方法を学ぶことである。「特別論文指導」では、この目的を達するため、まず、有害因子の環境中への発生のメカニズムや発生原因を分析することから始める。次にそれらの有害要因の環境中での挙動の計測法、予測法の開発、環境中の有害化学物質や有害要因の評価法の検討、さらに、これらの有害要因を環境から除去するための工学的手法を学ぶことにより、産業衛生学分野における有害因子の制御法と作業環境の効果的な改善手法、さらにはリスクアセスメントの方法について理解することを目指す。具体的には、関連分野の文献調査を行うことはもちろん、カンファレンス、セミナー、研究会、学会などの多彩な機会を通して、産業衛生工学全般にわたる知識を身につけることにより、自ら主体的に問題を解決する能力を養うとともに、プレゼンテーションおよびディスカッション能力を磨くこと。自らの研究テーマについて、課題を解決するための実験系を組み立て、データを収集すること。得られたデータについて指導教員とのディスカッションを重ねながら産業衛生工学的考察を行い、研究成果を博士論文としてまとめることになる。「産業衛生工学」では、労働衛生学、化学、中毒学、衛生工学、人間工学、健康科学、疫学、生理学などの幅広い領域の知識や技術をもとに、作業環境や作業工程に存在する様々な諸問題を解決する能力を持った人材、すなわち、欧米のオキュペイショナルハイジニストに相当する人材や、産業衛生分野で指導的立場となる技術者、研究者を養成する。

 

「産業保健マネジメント学領域」

 産業保健マネジメント学は、企業・事業場に存在する労働者の健康リスク等の産業保健上の課題に対して、マネジメントシステムおよびマーケティングの手法を活用して産業保健プログラムを企画・実施・評価し、その中で労働者の健康リスクの低減を図るための理論体系の構築と実証研究を行う領域である。「特別論文指導」では、労働安全衛生マネジメントシステムや産業保健マーケティングといった産業保健活動の基盤と、有害要因のリスクアセスメント、労働者の健康リスク低減対策などの手法と理論を習得する。さらに、企業・事業場のリスクやニーズに応じた産業保健プログラムによる介入や労働安全衛生マネジメントシステムの運用に関する論文を渉猟し、そこから研究テーマを見出し、産業保健プログラムの介入方法とその効果評価等に関する自らの仮説を立てて、仮説の解明に必要な疫学的アプローチを含めた解析手法の習得をめざす。また、自らの研究テーマに対する、具体的な研究計画や評価手法について議論し、研究デザインの構築を図る。最終的に自らの研究課題の設定、研究倫理、文献調査、研究方法と得られた結果に対する統計学的検討、既知の事象を踏まえた考察から結論を導くまで課程などを総合的に討論し、独力で科学的に推敲し解決できる能力を養う。この科目を通して、労働者の健康リスク等の産業保健上の課題に対して、マネジメントシステムおよびマーケティングの手法を活用して、科学的根拠に基づく産業保健プログラムの提供と評価に関する能力を付与する。

 

 

産業衛生学専攻シラバス  

 

 

産業衛生学専攻を構成する講座等

医学部

産業生態科学研究所

産業保健学部

医学概論

職業性腫瘍学

作業環境計測制御学

 

 

 

呼吸病態学

安全衛生マネジメント学

産業保健経営学

産業・地域看護学

精神保健学

 

 

 

 

健康開発科学

作業関連疾患予防学

放射線健康医学

 

 

 産業衛生学専攻設置認可申請・履行状況報告 

<産業衛生学専攻設置認可申請書> 平成25年12月設置認可

 (1) 基本計画書

 (2) 校地校舎等の図面

 (3) 学則

 (4) 趣旨等を記載した書類資料

 (5) 教員名簿 

 

<産業衛生学専攻課程変更認可申請書> 平成27年8月課程変更認可
      (1) 基本計画書
      (2) 校地校舎等の図面
      (3) 学則
      (4) 趣旨等を記載した書類、資料

      (5) 学生の確保の見通し等を記載した書類
      (6) 教員名簿

 

<産業衛生学専攻設置計画履行状況報告書> 

  設置計画履行状況報告書(平成26年5月1日現在)(博士前期課程)

  設置計画履行状況報告書(平成27年5月1日現在)(博士前期課程)

   設置計画履行状況報告書(平成28年5月1日現在)(博士後期課程) 

   設置計画履行状況報告書(平成29年5月1日現在)(博士後期課程)  

 

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