平成28年度卒業式が3月3日に挙行されました

 

 平成28年度 卒業式が 3月3日(金)10時から挙行されました。

 

 学長式辞は、以下のとおりです。

 

  

平成2933

平成28年度 卒業式 式辞 

学長 東 敏昭

 

 

今年、本学を巣立つ皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、長い間この日を待ち望んでおられたであろうご家族の皆様方に対して、産業医科大学の教職員を代表し心からお慶びを申し上げます。

大学卒業は、自分の判断と責任で社会生活を開始する、DSC_0551.JPG人生にとっての一大転機です。これから、皆さんには様々な組織に入って、職業人として研鑽する日々が待っています。入学時、皆さんは全国から産業医科大学で学ぶためにこの地に集まり、学生生活を共にしてきました。同級生同士は勿論のこと、先輩、教職員、地域社会との関係のすべてが、人生における新たな出会いであったと思います。大学在学中に修得した専門的知識・技術に加え、これら全てが大学生活で得た財産です。私は、皆さんの学生時代が、とても有意義な時期であったと信じますが、それにも増して、より充実した幸せな時期を、これからこそ持っていただきたいと思います。そのために、大学生活で得た財産を大いに活用して欲しいと考えます。

皆さんが高校以降の学生生活を送った時代は、リーマンショック、シリア内戦の勃発と激化、テロの頻発、日本では東日本大震災、熊本地震などの大きな事件や災害がありました。現在、海外で進む閉鎖的な潮流と対立の拡大への危惧があります。これから皆さんが活躍しようとしている我が国や世界は、様々な面で激動の時期を迎えています。長年にわたり築き上げられてきた秩序や価値体系は変わらざるを得ないかもしれません。皆さんはいわゆる「手に職を持つ」人たちで、景気動向による影響を受けにくい側面があるかもしれませんが、研鑽、努力を怠れば、科学技術の進歩、産業構造や社会制度の変化に対応できなくなります。DSC_0510.JPG皆さん方の前には安定した社会は全く保証されていないと覚悟し、本当の専門家として、環境の変化にも科学技術の進歩にも遅れることなく、専門家として社会に受け入れられるよう十分な研鑚に励んでください。

また、皆さんが社会を支える立場になる日本は、現在、世界で最も高齢化が進み、少子化問題に直面しています。これらに対応する社会制度の未整備などから、国際社会の中で日本の相対的地位や将来への期待度が低下していることは否めません。世界の国々は、日本がこのような状況の中で、どのように活力を高め、多くの国民が安心して、幸福感をもって生活できる社会を創っていくかに、大きな関心を寄せています。本学卒業生は、医師や看護師、保健師、作業環境測定士、衛生管理者など、全員が何らかの国家資格を取得しますが、いずれも働く人を中心として、人々の活力を支える仕事で、今、最も必要とされている分野です。真に社会的期待に応えられる専門家になるための研鑚や経験を、まさにこれから積むことになります

こうした国内外の変化に、大学も無関係ではありません。特色や強みを持ち、高い社会的評価を得ることが求められます。本学は改めて言うまでもなく産業医学を専門とする大学です。特に学外ではDSC_0513.JPG、環境医学や産業医学関係が評価されています。大学の中にいると、社会が大学をどのように見ているかという視点を失いがちですが、産業医科大学の卒業生が産業医学・産業保健の場で活躍するのは、外部の目からは極めて自然に写り、素直に評価されやすいと考えます。医科大学は、構成員の研究や診療面での業績、社会貢献等により評価されますが、卒業生の活躍はそれにも増して大切な視点です。大学の評価が上がれば優秀な学生が集まるという正の循環につながります。また、卒業生自身が社会で活躍する上でも母校の評価は大切で、評価が高ければ活躍範囲と機会が広がります。皆さんが活躍すればするほど、大学と卒業生両者がその果実を得るという循環関係にあります。

本学は本年度末で開学後39年が経過します。卒業生が社会で活躍し始め、社会的地歩得た今、DSC_0531.JPG日本の産業医学・産業衛生ならびに産業保健制度は、産業医科大学の輩出した人材なくしては語れません。これから、世界で唯一の産業医学・産業保健を中心にすえた本学への評価は、本学構成員のみならず国内外での卒業生の活躍にかかっています。現在、数多くの卒業生が産業医学・産業保健の実務の分野で活躍しています。また、卒業生からの教授就任数は、医学部卒業生では現在までに、合計60名を数え、比較的後発の医科大学にとって、この数は決して少なくありません。近い将来、産業保健学部卒業生からも新たな教授の誕生が期待されます。

平成23311日に発生した東日本大震災からまもなく6年になります。未曾有の大災害として記憶に残っていることと思います。本学においては発生当初から被災地や福島第一原子力発電所に医師派遣などを行い、被災地での医療支援及び原発復旧作業に関わる作業員の方々等の健康管理を行っており、DSC_0520.JPG現在も支援を継続しています。いまだ被災地の復興や原発の処理は、問題が山積していますが、その処理に関わる作業者の健康影響調査研究にも参画しています。皆さんもこのような意義ある活動の継続に是非貢献していただければと思います。いつ起こるかわからない災害などに対して、いつでも手を挙げられるよう、努力と準備をしていること、普段からの知識や技術の習得が不可欠です。昨年発生した熊本地震への義援金活動などに示された本学学生の速やかで多大な貢献に、私は感動し、また大変頼もしく思いました。

紀元前5~4世紀の古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、医学を迷信や宗教的な対応から、臨床観察を重んじ、原因を究明する科学へと変容させたことから、現在でも医聖と呼ばれています。人間がおかれた環境が疾病の発生に関与することを示した著作もあります。彼が残した言葉の中に「5つの箴言」があります。「人生は短い(Vita brevis)、されど、技芸は永遠である(Ars longa)」という有名な言葉で始まります。ここでいうArsは技術、芸術、学問を指します。これに続く言葉が、「好機は逃げやすい(Occasio praeceps )、経験は騙されやすい(Experientia fallax)、チャンスは瞬く間に消えることが多く、経験にというものはあまり信用できない」としています。そして、最後が「判断するといIMG_6007.JPGうのは最も難しい(Judicium difficile)」という言葉です。

医科大学は、多くの知識と技能とともに、創造性と人間性を身につける場でもあります。また、箴言にある「限られた時間の中で、普遍の力を、機会を逃さず、一部の経験にとらわれず、真摯に判断する力(哲学する力)」を養う修練の場でもあります。建学の精神として多くの卒業生の記憶に引き継がれている、人類愛に徹し「哲学する医師・保健職」とは、どうあるべきか、いかに行動すべきかを考え抜く医療人を指します。一人の人間として、常に自らの理性と倫理観をもって、社会や組織に悪しき流れがあっても、これに流されることなく凛として立つあり方をさしています。この倫理観と見識は、人間としての力の基本です。常に心に留めておいてほしいと思います。

最近報道されている、企業における多くの不祥事で、背景にある制度や環境に注目が集まっていますが、根本は人間として独立し、人間のあるべき姿を真摯に考え、凛として行動する人間力が弱くなっていることが問題と考えます。他者に対する思いやりに乏しく、不自然なこと、問題のあることをただす勇気の欠如です。幸い、皆さんは、働く人への健康阻害要因を正す行動が社会から期待される職業に就きます。常に「人間愛に徹し、哲学する医師・産業保健専門職たれ」とする建学の精神を、心に持っていてほしいと思います。

最後に、皆さんの大学生活は、保護者や教職員ばかりでなく、IMG_6012.JPG修学資金、大学への補助金という形で、経営者や働く人たち、社会からの支援によって支えられてきました。そこには、働く人の健康を守り、働く人を支援するという形で社会に貢献することへの期待が込められています。皆さんが、常に「人が働く上で必要な健康に関わる支援」について考え、寄与するためにいかに行動するかということを念頭においていただければと思います。産業医科大学を卒業した職業人あるいは学究として、何を成すべきかを常に思い起こしていただきたいと考えます。

働く人々のために、一人でも多くの卒業生が、本学の目的である産業医学・産業保健の発展に寄与してくれることを期待して、記念すべき日の餞の言葉といたします。

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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