平成27年度 産業医科大学 卒業式 が挙行されました


産業医科大学では、3月4日(金)10時から、卒業式を執り行いました。


学長式辞については、以下のとおりです。DSC_0104.JPG

学長  式辞 
                   
東   敏昭

 

卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、長い間この日を待ち望んでおられたであろうご家族の皆様方に対して、産業医科大学の教職員を代表し心からお慶び申しあげます。

 

大学を卒業することは、自分の判断と責任に基づく社会生活を開始する、人生にとっての一大転機です。これから、皆さんには様々な地、組織に入って、職業人として研鑽する日々が待っています。

 

入学時、皆さんは全国から産業医科大学で学ぶためにこの地に集まり、学生生活を共にしてきました。同級生同士は勿論のこと、先輩・後輩、教職員、地域社会との関係すべてが、新たな人生の出会いであったと思います。大学在学中に教育で修得した専門の知識・技術に加え、これら全てが大学生活で得た財産です。私は、皆さんの学生時代が、有意な時期であったと信じますが、それにも増して、より充実した幸せな時期を、これからこそ持っていただきたいと思います。そのために、大学生活で得た財産を大いに活用して欲しいと考えます。

 

今、否応なく進む国際的な競争に、大学も無関係ではありません。特色や強みを持ち、高い社会的評価を得ることが求められます。医科大学は、構成員の研究や診療面での業績や社会貢献等により評価されますが、卒業生の活躍はそれにも増して大切な要点です。大学の評価が上がれば優秀な学生が集まるという、正の循環につながります。また、卒業生自身が社会で活躍する上でも母校の評価は大切で、評価が高ければ活躍範囲と機会が広がります。皆さんが活躍すればするほど大学と卒業生両者がその果実を得るという循環関係を築くことになります。

 

本学は本年度末で開学後38年を経過します。卒業生が社会で活躍し始めて30年を超えた今、日本の産業医学・産業衛生ならびに産業保健制度は、産業医科大学の輩出した人材なくしては語れないまでになってきました。世界で唯一の産業医学・産業保健を中心にすえた大学として認められた本学が、より一層その真価を発揮できるかは、国内外での卒業生の活躍にかかっています。産業医学・産業保健の実務の分野での活躍と合わせ、医科大学の一つの評価尺度として、卒業生からの教授就任数があります。医学部卒業生では、現在までに、本学教授に18名が就任しており、本学以外の39名を加えると、合計57名が活躍しています。また、産業保健学部でも前身の医療技術短期大学を含め、これからも卒業生の活躍が期待されています。比較的後発の医科大学にとって、この数は決して少なくありません。

 

本学は、学外において環境医学や産業医学関係が評価されております。本学は改めて言うまでもなく産業医学を専門とする大学です。大学の中にいると、社会が大学をどのように見ているかという視点を失いがちですが、産業医科大学の卒業生が産業医学・産業保健の場で活躍するのは、外部の目からは極めて自然に写り、素直に評価されやすいためです。

 

DSC_0167.JPG皆さんが社会を支える立場になる日本は、現在、世界で最も急速に高齢化し、加えて、少子化の問題にも直面していますが、これに対応する社会制度の未整備などから、国際社会の中で相対的地位や将来への期待度が低下していることは否めません。世界の国々は、日本がこのような状況の中で、どのように活力を高め、多くの国民が安心して、幸福感をもって生活できる社会を創るかに、大きな関心を寄せています。本学卒業生は医師や看護師保健師作業環境測定士、衛生管理者など、全員が何らかの国家資格を取得しますが、いずれも働く人を中心として、人々の活力を支える仕事で、今、最も必要とされている分野です。真に社会的期待に応えられる専門家になるための研鑚や経験を、まさにこれから積むことになります。

 

ただ、これから皆さんが活躍しようとしている我が国や世界は、様々な面で激動の時期を迎えています。長年にわたり築き上げられてきた秩序や価値体系は変わらざるをえないかもしれません。皆さんはいわゆる「手に職を持つ」人たちで、景気動向による影響を受けにくい側面があるかもしれませんが、研鑽、努力を怠れば、科学技術の進歩、産業構造や社会制度の変化に対応できなくなります。皆さんの前には安定した社会は全く保証されていないと覚悟し、本当の専門家として、環境の変化にも科学技術の進歩にも遅れることなく、専門家として社会に受け入れられるよう十分な研鑚に励んでください。

 

平成23年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく5年になり、未曾有の大災害として記憶に残っていることと思います。本学においては発生当初から被災地や福島第一原子力発電所に医師派遣などを行い、被災地での医療支援及び原発復旧作業に関わる作業員の方々等の健康管理を行っており、現在も継続しています。被災地の復興や原発の処理は、いまだ問題が山積しています。皆さんもこの震災を忘れずに意義ある活動の継続に是非貢献していただければと思います。また、いつ起こるかわからない災害などに対して、いつでも手を挙げられるよう、努力と準備をしていただければと思います。ここでも、普段からの知識や技術の習得が不可欠です。

 

最後に、紀元前5~4世紀の古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、医学を迷信や宗教的な対応から、臨床観察を重んじ、原因を究明する科学へと変容させたことから、現在でも医聖と呼ばれています。人間がおかれた環境が疾病の発生に関与することを示した著作もあります。彼が残した言葉の中に「5つの箴言」があります。人生は短い(Vita brevis)、されど、技芸は永遠である(Ars longa)という有名な言葉で始まります。ここでいうArsは技術、芸術、学問を指します。これに続く言葉が、好機は逃げやすい(Occasio praeceps )、経験は騙されやすい(Experientia fallax)で、チャンスは瞬く間に消えることが多く、経験というものはあまり信用できないとしています。そして、最後が判断するというのは最も難しい( Judicium difficile)という言葉です。

 

医科大学は、多くの知識と技能とともに、創造性と人間性を身に着ける場でもあります。箴言にある、限られた時間の中で、普遍の力を、機会を逃さず、一部の経験にとらわれず、真摯に判断する力(哲学する力)を養う修練の場でもあります。建学の精神として多くの卒業生に引き継がれている「哲学する医師・保健職」とは、「どうあるべきか、いかに行動すべきかを考え抜く医療人」を指します。

 

皆さんの大学生活は、保護者や教職員ばかりでなく、修学資金、大学への補助金という形で、経営者や働く人たちといった社会からの支援によって支えられてきました。そこには、働く人の健康を守り、働く人を支援するという形で社会に貢献することへの期待が込められています。皆さんが、常に「人が働く上で必要な健康に関わる支援」について考え、寄与するためにいかに行動するかということを念頭においていただければと思います。産業医科大学を卒業した職業人あるいは学究として、何を成すべきかを常に思い起こしていただきたいと考えます。

働く人々のために、一人でも多くの卒業生が、本学の目的である産業医学・産業保健の発展に寄与してくれることを期待して、記念すべき日の餞の言葉といたします。

 

                                              

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