学会受賞者

2013 EULAR賞 受賞報告

第14回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2013)が、6月12日〜15日の間スペイン・マドリッドにて約110カ国から約14000人が参加して開催されました。3800題超の登録演題から選出された一般口演320題、ポスター発表約1800題と、330人の招請発表者による約750題の講演が行われました。当科派遣研究員である近藤真弘先生が、関節リウマチの関節修復に関する研究でEULAR賞を受賞しました。全登録演題の中から採点により、臨床部門と基礎部門のそれぞれ上位6名、計12名が選出され、近藤先生は基礎部門で受賞しました。当科からは2009年の田中良哉教授と中野和久講師、2010年の訪問研究員前島圭佑先生に続く受賞であり、日本人で5人目となる大変な快挙です。

近藤先生の研究は、慢性炎症に重要なサイトカインであるIL-17の新たな作用として、間葉系幹細胞(MSC)から軟骨細胞への分化を阻害することを明らかにし、その作用メカニズムには転写因子SOX9のリン酸化制御が重要であることを見出しました。MSCは軟骨細胞への分化能を有することから、軟骨組織の恒常性維持に重要な細胞であるとともに、MSCを破壊関節に補充する再生医療のツールとしても注目されています。今回の研究成果は、IL-17が病態形成に関与する関節リウマチにおいて、軟骨の再生という視点からIL-17阻害療法が有用である可能性を示唆した点で、高く評価されたと思われます。

学会初日の12日に学会場の最も大きなホールで欧州リウマチ学会理事長のMaxime Dougados教授の挨拶に引き続き、表彰式が始まりました。その後フラメンコ劇団による演舞などの歓迎セレモニーが行われました。また、最終日に大勢の観衆の前で近藤先生の口演が行われ、多くの人の関心を引き、たくさんの質疑応答が行われました。近藤先生に加えて、当科の他の先生の講演やポスターもいつも超人気で、今や受賞の「常連」となった田中良哉教授を中心とした当科のグループは、世界的にも高く評価され、注目されていることが実感されました。今後、この分野の臨床・基礎研究のレベル向上とともに、受賞を続けるべく努力しようと気持ちを新たにし、EULAR2013受賞報告とさせていただきます。

(若松病院リウマチ糖尿病内科助教 花見 健太郎)



第5回EAGOR 受賞報告

この度、第5回EAGOR (East Asian Group of Rheumatology)において Young Investigator Awardを受賞いたしました。学会では「Tリンパ球の分化における可塑性と関節リウマチの病態形成への関与」に関する基礎および臨床データを発表いたしました。今後も本研究を更に発展させるよう尽力して参ります。どうぞご指導・ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。

(中山田 真吾)
第57回日本リウマチ学会 奨励賞 受賞報告


第57回日本リウマチ学会が2013年4月18日から20日まで京都国際会館で開催され、私は日本リウマチ学会奨励賞を受賞いたしました。大変名誉ある賞であり、光栄に存じます。
私は、主に自己免疫疾患、特にSLEにおけるB細胞に関する研究を行ってまいりました。研修医〜専門修練医時代に、難治性のSLE症例と直面する中で、より病態を明らかにし、少しでも多くの患者を治せるようになりたいと考えていました。幸い、当科では他施設に先駆けて、SLEに対するB細胞除去療法リツキシマブの治験が開始され、その劇的な効果を目の当たりにしたことが、B細胞研究のきっかけでした。大学院に進学し、SLE患者におけるリツキシマブによるリンパ球表面抗原の変化に関する解析を始めました。そして、B細胞の再構成に加え、T細胞の質的変化が、長期寛解維持に重要であることを明らかにしました。また、リツキシマブで寛解導入後の再燃例では、再燃に先立ち、活性化メモリーB細胞が増加する型と、CD4+メモリーT細胞が増加する型とが存在することを見いだしました。
さらに、B細胞の機能を詳細に検討するため、in vitroにてヒトB細胞を用いた解析を行い、B細胞受容体のアダプター蛋白で、かつ、チロシンキナーゼ蛋白であるSykを介したB細胞受容体シグナルが、TRAF-6の適切な発現誘導に重要であり、効率的なCD40、TLR9シグナル伝達がもたらされることを明らかにしました。また、SLE患者では末梢血B細胞でSykのリン酸化が健常人に比べ亢進していることを見いだし、SLEの病態形成においてSykを介するB細胞活性化が重要な役割を担っていることも明らかにしました。
田中良哉教授のご尽力により、本年4月より、米国国立衛生研究所(NIH)に留学させていただき、T細胞の研究を行うこととなりました。今後も少しでも臨床に還元できることを目標に、日々研究に励んでおります。今回の奨励賞受賞、および現在のような素晴らしい環境で研究活動に邁進できるのも、田中良哉教授をはじめ、関係の先生方のご指導、ご鞭撻のお陰であり、心より感謝申し上げます。

(第一内科学講座 岩田 慈)

国際骨代謝学会 受賞報告

国際骨代謝学会よりTravel bursaryをいただき、神戸市で執り行われた国際骨代謝学会・日本骨代謝学会第2回合同国際会議に参加しました。骨芽細胞分化とWntシグナル経路の役割についての研究成果を発表するとともに、全世界の研究者達と私の演題または彼らの演題について討論を交わすことができるいい機会でした。また、本学会では、「留学への準備」および「論文投稿のコツ」に関する若手研究者向け特別企画があり、大変参考になりました。

(園本 格士朗)

国際骨代謝学会(IBMS)が2013年5月28日から6月1日まで神戸コンベンションセンターで開催され、『New Investigator Travel Grant Requirements』を受賞させていただきました。今回の発表演題は、「Vitamin D deficiency and insufficiency and their relevance to bone metabolism in type 2 diabetes」でした。今回、2型糖尿病患者の骨折リスク上昇に、ビタミンDが関与しているのではないかと考え検討しました。その結果、2型糖尿病患者では90%以上の症例がビタミンD欠乏状態であり、その結果、PTHが上昇し高骨代謝状態を来たし橈骨骨密度減少を齎すことが明らかとなりました。特に中等度VD不足である25(OH)D19以下では骨粗鬆症を来たしやすく、骨折リスクの高い糖尿病患者の骨折予防にはビタミンDの管理による骨代謝病態改善が重要であるのではないかと提唱しました。このような自主研究が国際学会で認められ、非常に喜ばしい結果となり、今後の当科における臨床研究の勢いにつながればいいと思われました。

(森 博子)

  文責:第1内科学講座 中山田 真吾 更新日:2014年09月22日
 
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