産業医科大学医学部 第2内科学 産業医科大学
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産業医科大学第2内科学教室便り 2010年度 第4号

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研究紹介


1)診療
心不全・心エコーグループ
心エコー図検査(血管エコーを含む)を中心とした心血管疾患の診断、治療を行っています。これらを弁膜症や心筋症の重症度診断や心不全の診断・治療に役立てていますが、さらに詳細に評価するために三次元経食道心エコー図検査を当院では取り入れて立体的な評価をおこなっています。また運動負荷や薬物負荷心エコー図検査を積極的に行っており、心筋虚血の診断や心予備能、運動耐容能や弁膜症の評価、心不全の治療効果の判定などに用いています。そして弁膜症の外科的治療の可否については心臓血管外科医への円滑な橋渡し役を行い、心臓血管手術の際には術中経食道心エコー図検査にて外科医へのサポートを行っています。2014年の実績としては経胸壁心エコー7286例をはじめ、負荷エコー81例、経食道心エコー259例、その他頚動脈・下肢動静脈エコー・腎動脈エコーも数多く行っております。また心不全治療としては、従来の薬物治療や補助循環併用に加えて運動療法を主体とした心臓リハビリテーションを進めています。



冠動脈疾患・動脈硬化グループ
冠動脈疾患治療グループは血行動態の評価が必要な循環器疾患(冠動脈疾患、弁膜症、肺高血圧症、心不全等)の心臓カテーテル検査を担当すると共に、冠動脈疾患である狭心症や急性心筋梗塞に対する冠動脈インターベンション治療を行っています。冠動脈インターベンション治療のほとんどがステントの植え込みによる血行再建になっていますが、その成功率は99%前後で推移しています。問題であった再狭窄も薬剤溶出性ステントの導入により10%未満に低下しています。ステント留置時には、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)、プレッシャーワイヤーを用いて、合併症の少ない、質の高い治療を行っております。急性心筋梗塞は救急部とも協力して24時間症例を受け入れる態勢を整えています。さらに、二次性高血圧症の重要な原因のひとつである腎動脈狭窄症や閉塞性動脈硬化症といった末梢血管病変に対してもインターベンション治療を積極的に行っております。



経皮的冠動脈形成術治療成績
再狭窄率 8.0%(2014年)



また、冠動脈疾患の危険因子である高脂血症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)、高血圧症、最近注目されていますメタボリック症候群などの治療にあたっています。生活習慣病の治療は、食事や運動、日常生活活動性などの習慣の是正と薬物療法の組み合わせで治療を行います。また、家族性高コレステロール血症や難治性高コレステロール血症、高中性脂肪血症については、酵素欠損の診断やLDLアフェレシスなどの治療を積極的に取り入れています。

肺高血圧グループ:エコノミークラス症候群などの肺血栓塞栓症と原発性肺高血圧症、膠原病による肺高血圧症、先天性心疾患などの肺動脈性肺高血圧症を対象にしています。いずれも心・血管エコーや肺血流シンチ、心臓カテーテル法などによる診断とボセンタンやシルデナフィル、エポプロステノールなどの先進的な薬物療法を行って実績を上げてきています。)

不整脈グループ

心電図異常の診断から種々の不整脈疾患(心房細動や上室性不整脈、洞不全症候群や房室ブロック等の徐脈性不整脈、心室頻拍・心室細動等の頻脈性不整脈)の診断と治療、更には失神発作や心臓突然死のリスク評価や心不全患者に対する非薬物治療まで含めた広範な分野を取り扱っています。得意とする分野は、徐脈性不整脈に対するペーシング治療、上室性および心室性頻脈性不整脈に対するカテーテル心筋焼灼術、致死性不整脈に対する植込み型除細動器(ICD)治療、難治性心不全患者に対する心室再同期治療(CRT-D)です。また、失神の原因精査・診断・治療では、国内では最も進んだ施設の一つです。

1) ペースメーカ植込み手術:
本院におけるペースメーカ手術は年間100件程度施行しており、九州地区大学病院としては手術症例数が最も多い。ほぼ全例で生理的ペーシングを行なっていますが、心機能改善効果が高い右室中隔ペーシングを全国に先駆けて行ない、内外から高い評価を得ています。ペースメーカ電池交換手術は、「日帰り外来手術」を行っており、合併症は殆どなく、その発生率は1%以下です。





2) 植込み型除細動器(ICD)手術:
心室頻拍や心室細動等の心臓突然死予防目的で植込み手術が施行されています。手術件数は、下記CRT-D手術と合わせ、年間45例程で、九州地区大学病院では、1位の手術実績です。

3) 除細動機能付き心室再同期治療(CRT-D)手術:

心不全治療ならびに心臓突然死予防目的として当院でも開始しています。薬物治療抵抗性心不全患者において、本治療は心臓突然死の予防と心不全の改善効果を示すことが科学的に証明されています。本院では、詳細な術前検討を行なった上で改善効果が期待される患者様を対象に、心エコー専門医とチームを組み、治療を行なっています。

4) 「失神」の診断と治療:
失神発作で来院する患者様は非常に多く、失神発作により外傷をきたしたり、あるいは突然死をきたす場合もあるため、原因を正確に同定し、速やかに治療を行なう事が最も重要です。しかしながら、失神は一過性の症候で原因も多岐にわたるため、一般的な検査で確定診断に難渋し当科にご紹介頂く事も稀ではありません。特に突然死の原因となり得る心原性失神を見逃さない事が極めて重要ですが、当院では植込み型ループレコーダー(ILR)を積極的に用いて多くの患者で原因を確定・的確な治療を行い、顕著な成果を上げています。また、失神の原因の約半数は神経反射性失神ですが、この診断には傾斜台試験(ヘッドアップチルト試験)が非常に有用です。本院は、失神の診断と治療に関しては、全国でも有数の医療施設であり、失神を予防するためのトレーニング治療は本院で開発された新しい治療法です。失神の診断と治療に関する専門医のいる施設は全国的にみても非常に少ないのですが、本院は全国的にみても数少ない失神のスペシャリストのいる医療施設です。

5) ペースメーカ・ICD専門外来:

当院で植込まれたペースメーカやICD、CRT-D患者様はもとより、他院で植込まれた患者さまに対しても、機器のチェックや電池寿命の測定、設定変更等を行なっています。当院のペースメーカ・ICD専門外来は、デバイス治療のトレーニングを受けた循環器専門医が対応しているため、単なる植込み機器の状態のみならず、社会生活や就労、日常生活上での不安や自動車運転から身体障害者認定、更生医療等に関しても専門的アドバイスができるので、積極的に活用して下さい。

6) 心臓電気生理検査/カテーテル心筋焼灼術:

カテーテル心筋焼灼術(アブレーション)とは不整脈の原因となる回路をカテーテルという細い管を使って焼灼する治療です。不整脈回路が一定であれば原因そのものを根本的に消滅させることで完全な治癒が得られる根治療法であり、当院では複雑な不整脈に対しても最新の三次元マッピングシステムなどを駆使して積極的に行っております。殆どすべての頻拍性不整脈(発作性上室性頻拍症(WPW症候群や房室結節回帰性頻拍など)・心房粗動・心房頻拍・薬剤抵抗性有症候性心房細動・心室頻拍)が適応になります。当院における疾患ごとの(手技成功率, 遠隔期再発率)はそれぞれ、発作性上室性頻拍症(95%, 0%)、心房粗動(100%, 5%)、心房頻拍(90%, 0%)、心房細動(88%, 12%)、心室頻拍(83%, 16%)です。年間約100症例に対して施行しています。

産業医科大学医学部第2内科学講座 更新日:2016年7月1日 文責:穴井 玲央


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