電子顕微鏡用試薬調整法
緩衝液
燐酸緩衝液
A液. 0.2M 燐酸第一ナトリウム NaH2PO4・H2O ***** 27.6g
1000mlの水に溶かす
B液. 0.2M 燐酸第二ナトリウム NaHPO4・7H2O ***** 53.6g
1000mlの水に溶かす
pH | A液 | B液 | pH | A液 | B液 |
5.7 | 93.5 | 6.5 | 6.9 | 45.0 | 55.0 |
5.8 | 92.0 | 8.0 | 7.0 | 39.0 | 61.0 |
5.9 | 90.0 | 10.0 | 7.1 | 33.0 | 67.0 |
6.0 | 87.7 | 12.3 | 7.2 | 28.0 | 72.0 |
6.1 | 85.0 | 15.0 | 7.3 | 13.0 | 77.0 |
6.2 | 81.5 | 18.5 | 7.4 | 19.0 | 81.0 |
6.3 | 77.5 | 22.5 | 7.5 | 16.0 | 84.0 |
6.4 | 73.5 | 26.5 | 7.6 | 13.0 | 87.0 |
6.5 | 68.5 | 31.5 | 7.7 | 9.5 | 90.5 |
6.6 | 62.5 | 37.5 | 7.8 | 8.5 | 91.5 |
6.7 | 56.5 | 43.5 | 7.9 | 7.0 | 93.0 |
6.8 | 51.0 | 49.0 | 8.0 | 5.3 | 94.7 |
A+Bに等量の水を加えると0.1M燐酸緩衝液になる
カコジレイト緩衝液
0.2M Sodium Cacodylate
Na(CH3)2A2O2・3H2O ***** 4.3g 100mlの水に溶かす
0.2M 塩酸(36.7%) ***** 1.7ml 100mlの水に溶かす
0.1M pH.7.4 カコジレイト緩衝液
0.2M Sodium Cacodylate 100ml
トリス塩酸緩衝液 0.05M pH.7.6
トリス塩基 ******1.39g
トリス塩酸塩 ******6.06g
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500mlの水に溶かす
樹脂包埋処方
樹脂包埋
EPOK 46.0ml 23.0ml
DDSA 30.0ml 15.0ml
MNA 24.0ml 12.0ml
DMP−30 1.5ml 0.7ml
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計 100.0ml 50.0ml
固定液処方
Karnovsky固定液 pH.7.2
8%パラフォルムアルデヒド ******25ml
25%グルタールアルデヒド *******10ml
0.2M燐酸緩衝液 pH.7.4 ***15ml
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計 50ml
ルテニウムレッド固定処理
0.1Mカコジレイト緩衝液 pH.7.4 100ml
ルテニウムレッド 0.1g
作製後、数日して使用。茶褐色ビンで3カ月保存化。
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2.5%グルタールアルデヒド ****** 1ml
上記緩衝液 ******19ml
4%オスミウム酸 ****** 1ml
上記緩衝液 ****** 1ml
染色液処方
Reynold法 硝酸鉛 pH.12
硝酸鉛 2.66g 1.33g
クエン酸ナトリウム 3.52g 1.76g
蒸留水 60ml 30ml
1N NaOH 16ml 8ml
蒸留水 24ml 12ml
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計 100ml 50ml
タンニン酸染色液
タンニン酸 0.3g
p−ニトロフェノール 0.5g
蒸留水 30ml
*上記を60−80度で加温溶解し、約40度に冷却
5%酢酸ウラン水溶液 0.5ml
注・黒褐色の沈殿物を生じるが透明になるまで十分溶解する。
鉛の二重染色が必要。
リンタングステン酸染色液 pH.7.2
リンタングステン酸 ****** 1g
蒸留水 ******40ml
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5%KOHでpH補正 約、2mlのKOHを要す
補正後、水を加えて50mlにする。
法医学領域における電顕利用法(特に免疫電顕法に関して)
産業医科大学 法医学教室 北 敏郎
電子顕微鏡の利用は、法医学領域ではルチーンワークにはほとんど利用されておらず、もっぱら病理組織学的観点から光顕を利用している。特に免疫組織化学法は、光顕のみで電顕法は行われていないのが現実である。われわれの教室では、設立当初から電顕をルチーンワーク並びに研究面で積極的に利用している。特に免疫電顕に関しては、マイクロスライサーを用いた免疫組織化学法を確立している。今回われわれの教室で行われている免疫電顕法の方法論の紹介を中心に話を進めていく。
マイクロスライサーを用いての免疫電顕組織化学法
一日目
固定:固定は抗原性を失活させず、かつ微細構築を残すことが、最も重要なポイントとなる。実験においては潅流固定を必ず行い、剖検例では浸漬固定を行う。グルタールアルデヒドは抗原を不活性化しやすいため、出来るだけ濃度は低めに設定しなければならないが、電顕用に微細構築を残すためにはあまり低すぎてもいけない。われわれの教室では検討の結果、4%パラホルムアルデヒド+0.5%グルタール固定混合液を用いている。
固定液作成方法
蒸溜水約80mlに8gのパラフォルムアルデヒド(粉末)をいれ、約60℃まで加温する。数滴の1NのNaOHをいれ撹拌し溶解後蒸溜水を加え100mlとする。これをリン酸緩衝液(0.1MPBS)で希釈し4%固定液とする。使用直前にグルタール固定液を混入し0.5%となるように濃度を調整すると上記固定液が得られる。
固定方法
潅流固定では37℃に加温したリンゲル液、生理的食塩水あるいは緩衝液を用い固形成分(赤血球等)を洗い流した後(色調で確認する)、上記固定液(4℃)を潅流させる。浸漬固定では両刃カミソリを用い、出来るだけ小さなブロック(3mmx3mmx2mm)を作成し速やかに上記固定液(4℃)に浸漬する。浸漬固定は、氷の中で冷やしながらおこなう。潅流固定装置は、日新EM社のVPF-1を使用している。
固定における注意事項
固定した状態で臓器は保存すべきではなく、12時間以内に固定液から次のステップに進んだほうが良い。2、3日間固定液に放置していたらそのぶん抗原性の失活につながる。また試料は出来るだけ小さい方が固定しやすいことは常識であり、実験では潅流固定を必ず行うことが免疫電顕法をより完璧に行う必要最低条件でもある。諸々の理由で固定の状態で保存する際は、長くとも12時間までで、その後は緩衝液に入れ4℃で保存する。剖検標本では、1時間ほど試料を浸漬固定し表面を固定した後、速やかにマイクロスライサーで細切し、再度固定することで潅流固定した試料と同程度の状態の標本が得られる。浸漬固定は、全て水平シェーカー上の氷の中で行う。
臓器より切り出した試料(3mmx3mmx2mm)は、マイクロスライサーで40〜30μ厚さの切片を作製する。その後、同じ固定液で1時間浸漬固定する。次にナイロンメッシュ(サンプルメッシュパック:白井松社製)にいれ、0.1MPBSあるいは0.05Mトリス緩衝液にて洗滌(10分間3回)し固定液を洗い流す。
次に、所定のブロッキング液(通常第二抗体で用いられる動物のIgG)でブロッキングを1時間おこなう。内因性ペロキシダーゼを不活性化させる際は、ブロッキング液の代わりに内因性酵素阻害剤を用いブロッキングの代わりとする。緩衝液で洗滌後(10分間3回)、一晩(15〜16時間)冷蔵庫内(4℃)で第一抗体に浸漬する。
2日目
緩衝液にて洗滌(10分間3回)し第一抗体を洗い流す。
次に第二抗体に浸漬し1時間37℃にて反応させる。
緩衝液にて洗滌(10分間3回)する。
標識抗体に浸漬し1時間37℃にて反応させる。
緩衝液にて洗滌(10分間3回)する。
発色剤(DAB反応)で10分間発色させる。
0.05%H2O2で10分間反応させる。
1%オスミウムで1時間反応させる。
アルコール脱水系列後、プロピレンオキサイドを経てエポン包埋(通常の電顕試料作成時と同じ要領)する。エポン包埋はスライドグラス上で包埋する(この際ナイロンメッシュから試料を取り出す)。その後一晩熱重合させると試料作製終了。
抗体はその時々の使用目的で異なるが、免疫電顕の場合、第二抗体ともども出来るだけ分子量の小さなものが、各種のオルガネラ内に浸透するために必要である。出来るだけIgG(約130,000)を小さくしたもの、即ちIgGFab、IgGFab'(約50,000〜60,000)等フラグメント化したものを用いるほうが、浸透性が良好である。これらフラグメント化した各種IgGは、市販されているしフラグメント化キットも売られている。
以上がわれわれの教室で行っている免疫電顕の試料作成方法および注意事項であるが、その方法を用いて行った”窒息時カテコールアミンの肺血管に与える影響””緊縛性ショックにおける腎臓機能障害とペプチドロイコトリエン(LT)の役割””エンドトキシンショックにおける各種臓器障害と腫瘍壊死因子(TNF)およびLTの役割”等の研究を紹介した。臓器としては脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、培養神経細胞、分離した骨髄細胞などを用いて各種カテコールアミン類、TNF、LTの局在を免疫電顕を用いてこれまで検討している。
産業医科大学 法医学教室
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北 敏郎
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