教授 田原 昭彦
 産業医科大学眼科学講座は産業医科大学の開学と同時に1978年(昭和53年)に開設され、2008年(平成20年)に開設30周年を迎えました。初代 栗本晋二教授(在任期間:1978-1987 年)、第二代 秋谷 忍教授(在任期間:1988-1997年)を経て、1999年(平成11年)からは、私 田原昭彦が講座の世話をしています。現在、100万都市、北九州市唯一の医科大学の眼科学講座として、緑内障、網膜硝子体疾患、産業眼科を3本柱に、眼科の診療、研究、教育に取り組んでいます。

       診療体制
 産業医科大学病院眼科は、北九州市を中心に、その周辺の市や町、関門海峡を挟んだ山口県の一部を医療圏としています。

  緑内障、白内障、網膜硝子体疾患、斜視・弱視や未熟児網膜症などの小児眼疾患、角膜疾患、ぶどう膜疾患、視神経疾患など眼疾患一般の診療を行っています。中でも緑内障、網膜硝子体疾患は先端の診療技術を有しています。緑内障の診断では、緑内障進行判定プログラムを用いた視野検査や光干渉断層計(OCT)による視神経障害の評価など客観的な診察を取り入れています。また治療面においても、手術療法が効きにくい難治性の緑内障に対して羊膜を使用した手術を行い、治療成績の向上を図っています。網膜硝子体疾患では、手術、とくに未熟児網膜症を含む小児の網膜硝子体手術は日本でも屈指の技術を有しており、九州、中国、近畿地方からの紹介も受けています。また、加齢黄斑変性に対し最新の機械を使用して診断、治療法方針の検討を行い、光線力学療法や抗血管内皮増殖因子療法を実施しています。さらに、産業医科大学病院には産業医大アイバンクが設置され、角膜移植の推進を図ると共に、角膜移植を積極的に行っています。


       研究活動
 緑内障に関して、臨床研究では、眼圧測定に関する研究、とくに「真の眼圧」の測定方法に関する研究を行っています。また、血管新生緑内障に対する抗血管内皮増殖因子療法の有用性や緑内障の遺伝子診断についても検討しています。基礎研究では、種々の緑内障眼の組織を形態学的、免疫組織学的に調べて、緑内障の発症機序を調べています。また、培養細胞を使用して、酸化ストレスと緑内障との関係や、緑内障治療薬の作用機序などを分子生物学的に調べています。
 網膜硝子体疾患に関して、臨床研究では、血管新生や眼循環障害が原因で起こる未熟児網膜症、加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などに対する抗血管内皮増殖因子製剤の効果的な使用法について臨床的に調べています。また、先天性網膜硝子体疾患の原因遺伝子の解明を進めています。基礎研究では、抗血管内皮増殖因子製剤を使用して手術をした症例の手術の時に採取された組織を形態学的、免疫組織学的に調べて、抗血管内皮増殖因子療法の作用機序を検討しています。

産業医学の分野では、眼精疲労に関して主に調節を指標に研究を進めています。眼精疲労の緩和に有効な薬物の検討を行うと共に、眼精疲労緩和機器の開発も手がけています。
その他の臨床研究として、白内障手術における水晶体嚢拡張リングの前嚢収縮防止効果の検討、眼感染症の分野で抗菌点眼薬を中心とした細菌の薬剤感受性判定プレートの開発などを行っています。



       教育体制
 産業医科大学の卒後臨床研修医の教育体制は他の医科大学とほとんど差異はなく、産業医科大学の卒業生に限らず、他の医学部、医科大学出身者にも広く門戸を開いています。前期課程では選択科目として2年目で眼科を選択することができます。眼科スタッフの大半が研修医指導の講習を受け、指導医の資格を取得しています。
 卒後3年目以降の後期課程研修医は眼科所属の医局員となり、当初の1年目は、通常、大学病院で研修を行います。外来実習、病棟実習を通して眼科医としての基礎を学びます。2年目以降に関連病院に出張し、白内障手術を中心に執刀医として眼科手術を身に付けます。手術の技術習得のためには、豚眼を用いた模擬手術を24週間に1回行っています。さらに、眼科専門医を取得する前後の時期に、6か月間病棟業務に専念し、すべての入院患者を主治医と共に管理するポスト(主任病棟医:チーフレジデント)を設けています。その間は、カンファレンスなどで主導的役割を果たし、網膜硝子体手術や緑内障手術、眼外傷の手術など大学病院に集まりやすい手術を数多く執刀します。いわば眼科研修の総仕上げと言ったものです。
 産業医科大学も大学院を有しています。基礎の講座とも連携し、先端の研究知識、技量を身に付けた教室員が育っています。社会人大学院制度も導入されており、臨床業務などを行いながら大学院で勉学することも可能です。
 産業医科大学眼科学講座は誕生して30余年と若い講座ですが、大学の体制、医療体制、医療教育体制が変化する中、様々な苦難にもまれながら成長してきました。今、壮年期を迎え、講座も充実してきました。今後とも、医科大学の眼科として、産業医学の発展を担う講座として、診療と研究に貢献し続けたいと考えています。



<文責:産業医科大学眼科学教室 更新日:平成23年12月9日>