主な研究成果

衝突によって放出された粒子からなるクレーターレイの生成

月の表面で目をひくものの一つに,衝突クレーターから放射状に伸びる明るい模様があります. この模様のことをレイ(光条)と呼びます. レイの特徴については月に探査機が行く前から研究されており,その後,各国の探査機によって撮影された詳細な画像により理解が飛躍的に高まりました. レイが明るく見えるのは,月表面の物質と衝突クレーターから飛び出し降り積もった物質の組成や風化度(新鮮さ)が異なるからであることがわかってきました. ところが,なぜクレーターから飛び出した物質は一様に降り積もらず,複雑な模様ができるのかについては,これまではよくわかっていませんでした.

そこで,室内衝突実験を行い,日本の月探査機「かぐや」による月面画像データおよび数値計算を組み合わせて以下のことを明らかになりました.

昨年打ち上げられたはやぶさ2は,小惑星1999JU3の上で衝突クレーターを作って観察する予定です. 今回の研究結果を応用すると,はやぶさ2の分離カメラでレイが観察される可能性があります. 観察されれば,史上初めて,惑星スケールのレイの形成過程をリアルタイムに捉えることになります.

科学雑誌Newton(ニュートン)2015年7月号のSCIENCE SENSORのページ(p. 6)で紹介されました.

この研究成果は,2015年4月付でアメリカ天文学会惑星科学部会が出版している国際学術雑誌「Icarus」に発表された下記の論文に関するものです.

こちらの「かぐや」サイトも参照してください

白亜紀末の生物大量絶滅は,隕石衝突による酸性雨と海洋酸性化が原因

世界初!!宇宙速度での衝突蒸発実験に成功

約6550万年前(白亜紀末)に,生物の大量絶滅が起きました. この絶滅が,巨大隕石の衝突により引き起こされたという仮説は,1980年に最初に提唱され,現在の科学界では広く支持されています. しかし,天体衝突がどのような環境変動を引き起こし,それがいかにして大量絶滅をもたらしたのか,具体的なメカニズムは全く決着がついておらず,様々な仮説が乱立しています.

産業医科大学医科物理学の門野敏彦教授は,千葉工業大学惑星探査研究センターの大野宗祐(上席研究員),東京大学の杉田精司(教授)らと研究チームを組み, 硫酸の酸性雨に着目し,大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの高出力レーザー激光XII号を用い,世界初となる宇宙速度での衝突蒸発・ガス分析実験に成功しました.

本実験で,以下の点が明らかになりました.

今回の研究成果は,英国学術雑誌「Nature Geoscience」のオンライン版で,日本時間2015年3月10日午前3時に発表されています.