教育内容
生体物質化学は1996年のカリキュラム改訂により従来の化学に代わって新設された1年次生の科目である。従来のどの理科系学部の学生にも適用できる一般化学ではなく、生体物質に重点を置く内容を精選し、医学を学ぶ学生向きに内容を一新した。すなわち、生体物質を材料として化学の基本的原理を学ぶことと同時に、生化学(医化学)の基礎となる生体化合物の化学構造と性質について有機電子論的背景もふまえて深く理解することをめざし、生体機能を化学的に研究する上での最も基礎的な部分を充実させることとしている。
| 主な講義項目 | |
| 1. | 原子の量子論的構造 |
| 2. | 有機化合物の多様性と炭素原子の構造 |
| 3. | 共有結合の分極 |
| 4. | カルボニル基の有機電子論的特徴 |
| 5. | 有機化合物の立体構造 |
| 6. | アミノ酸の化学とタンパク質の一次構造 |
| 7. | 脂質の化学 |
| 8. | クロマトグラフィーの原理と実例 |
| 9. | ヌクレオチドの化学と核酸の一次構造 |
| 10. | スペクトルと比色分析 |
| 11. | 糖質の化学と糖鎖生物学 |
| 12. | 緩衝液と生体におけるpH維持機構 |
| 13. | 反応の方向性、自由エネルギー変化と平衡 |
| 14. | 生体エネルギー論の基礎と還元電位 |
| 講義のねらい | |
| 1. | 生体物質の有機化学的構造を理解させる。 |
| 2. | 生体有機化合物の共有結合に関与する電子の偏りと分子内の分極が化学反応性や化合物の性質、生体物質の機能に大きな関わりを持つことを理解させる。 |
| 3. | 生体物質の立体異性体の重要性を理解させる。 |
| 4. | 生体物質の分析化学的方法の原理を理解させる。 |
| 5. | 科学における仮説の設定と実験による証明の重要性を歴史的大発見に即して紹介し、科学における人間の営みの偉大さにふれさせる。 |
学生実験も、生体物質に重点を置く種目を精選し、上記のような講義の目的に沿うものとした。
| 学生実験の特色 | |
| 1. | 全体として材料を生体物質に取ることにより生化学(医化学)の基礎となる内容をめざし、医学を学ぶ学生にとってより興味を持ちやすいものにしながら、あわせて化学の基本的原理をも学ぶことを目的としている。 |
| 2. | 従来の化学実験より時間数は大幅に減少したが、その時間不足を高感度で高速の分析ができる現代的な機器を学生にも使用させることよってカバーし、多数のデータによって考察できるように努めた。 |
| 3. | このカリキュラム改訂の目標の一つである少人数対話型教育の実現をめざして、1クラスの人数を30数人に減らし、その学生に対して、3人の教員が指導する体制をとった。したがって10余人の学生に一人の指導者がつくことになり、教員と学生が緊密なコミュニケーションを保ちながら、実験を進めていくをめざしている。 |
学生実験の内容とねらい
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ATPの化学 |
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内 容 |
1. | 紫外吸収スペクトルによる未知ヌクレオチドの塩基の同定。 | ||
| 2. | 同じ未知ヌクレオチドの全リン酸と易分解性リン酸の測定。 | |||
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ねらい |
1. | 上記実験によりヌクレオチドの構造決定の一端を経験する。 | ||
| 2. | 二種類のリン酸結合の性質の相違を考える。 | |||
| 3. | 独立した二つの実験からひとつの構造を導くことに驚きを感じさせる。 | |||
| 4. | スペクトルの実測、電子直示天秤による正確な秤量、ピペットとメスフラスコによる正確な希釈、比色定量など、化学実験のいくつかの基本操作を実体験させる。 | |||
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脂質の化学 |
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内 容 |
1. | 液状および固形油脂の脂肪酸組成のガスクロマトグラフィーによる分析。 | ||
| 2. | 大腸菌リン脂質の抽出と薄層クロマトグラフィーによる分析。 | |||
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ねらい |
1. | 分離する試料の性質によってガス、および薄層という二種類のクロマトグラフィーを使い分ける。 | ||
| 2. | 脂肪酸組成と油脂の物性の関係を考察する。 | |||
| 3. | リン脂質の呈色反応によって含まれる官能基を検出する。 | |||
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分子模型 |
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内 容 |
1. | ブタンとグルコースの配座異性。 | ||
| 2. | グリセルアルデヒド、酒石酸、トレオニンなど不斉炭素原子による立体異性体。 | |||
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ねらい |
1. | 紙に書いた二次元的構造式だけでは理解しにくい分子の立体構造を実感をもって把握する。 | ||
| 2. | 生体における分子の立体構造のもつ重要性の理解。 | |||
| 発 表 会 | ||||
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内 容 |
7月に実験終了した後、夏休み中に準備して9月上旬に4人一組で全員がいずれかの種目の実験の発表を行う。1組10分発表、5分討論。7月と8月末に各組が教員から発表についての指導を受ける。 | |||
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ねらい |
1. | 発表するために各自が実験内容について徹底的に考える機会をもつ。 | ||
| 2. | 口頭で人に伝える、というプレゼンテーションの訓練をする。 | |||
| 3. | 少人数参加型教育の一例である。学生の個性的な発表準備を最大限尊重しつつ、誤りの最小限の訂正と、より効果的なプレゼンテーションのための助言といった個別の指導をする。 | |||
学生実習テキスト:「生体物質化学実験」(第8版)産業医科大学・医学部・生体物質化学教育研究会編 (2007年版)
[文責:生体物質化学教室 更新日2008年8月]