化学物質による呼吸器障害


 
作業環境中のエアロゾル

粉じん (粉砕や研磨などの機械的な外力によって分解された固体粒子)
       シリカ、石綿
フューム(蒸気又はガス状の燃焼生成物が、凝縮して生成する固体粒子)
溶接フューム
ミスト (液体が蒸発 凝縮したものまたは噴霧により生成した液体粒子)
スモーク(不完全燃焼により生ずる生成物) タバコ(環境タバコ煙)

職業性肺疾患の呼吸障害別分類

  1. じん肺 / 肺線維症、
  2. 過敏性肺臓炎、農夫肺
  3. 職業性喘息
  4. 職業性肺癌、
  5. 肺炎(間質性肺炎等)

1)じん肺
じん肺の概念

無機粉じん吸入によって惹起される肺疾患で、吸入粉じんの生物学的毒性の程度によって線維増殖性変化の強い病変から、単に粉じんの沈着にとどまるものまで、様々な組織変化をきたす疾患。これに、気道の慢性炎症性変化を伴い、重症例は進展することにより、肺気腫、肺性心が出現。

平成12年 粉じん作業上やじん肺に関する統計
粉じん作業従事労働者
350,427人 
事業所数
47, 306
じん肺健診受診者
187,323人
有所見者
12,053人
有所見率
6.4 %
新規のじん肺や合併症
1180人


じん肺を引き起こす職業(粉じん職場)
窯業、土石製品製造業、鋳物業、造船、鉱業
これらのうち、溶接(フューム)に伴うじん肺が4分の1を占める。

症状   咳、痰、息切れ、

じん肺の診断
じん肺のレントゲン(珪肺;シリカによる線維症、石綿肺;アスベストによる線維症)

珪肺

1)上肺野を中心とした多数の粒状影(小陰影から大陰影に)
2)卵殻状石灰化 
3)粒状影周辺のbullaやemphysematous lesion

石綿肺 

1)下肺野を中心とした網線状影、最終的にはhoney combへ
2) 胸膜肥厚や石灰化、胸水 

肺機能テスト   拘束性障害、混合性障害

健康管理区分と措置

じん肺管理
区分
じん肺検診の結果
管理1
じん肺の所見がない
管理2
第1型で著しい肺機能の障害(F(++))がない
管理3のイ
第2型で著しい肺機能障害がない
管理3のロ
第3型もしくは第4型B以下(大陰影が一側側の1/3以下)で著しい肺機能障害がない
管理4
第4型C以上(大陰影が一側肺の1/3以上)第1.2.3.4A.4B型で著しい肺機能障害が認められる




合併症
じん肺

石綿肺

  1. 肺がん、
  2. 悪性中皮腫

治療
呼吸不全;酸素療法
線維症が急性増悪:ステロイド(パルス)
慢性気管支炎や気管支拡張症;気管支拡張剤、ステロイド

2)職業性喘息
ある特定の労働環境にのみ存在する原因あるいは条件により引き起こされる可逆性の気流障害、及びあるいは非特異的気道過敏性

拡大

職業
プラスチック加工業者(トルエンジイソシアネート(TDI)・無水フタル酸(TMA))・パン製造業(グルテン)・食品加工業(こんにゃく、そば)・養蚕業、製材所労働者・大工・伊勢エビ漁
病態
沍^アレルギー(即時型)とそれに引き続く炎症反応(好酸球など)(遅発型)。
そのほか、。型や「型アレルギー関与を示す報告もあり。
症状
通常の気管支喘息と同じ;喘鳴、咳嗽、呼吸窮迫、胸部圧迫感
これらの症状が作業中(即時型)、ないしは作業終了後数時間後(遅発型)におこる。  週末や休日はおこらない。しかし、通常の気管支喘息のように夜間、夜明けに起きることもある。
診断
吸入誘発試験 抗原を生理食塩水に溶解、吸入前後で1秒量の測定。
15分後に1秒量が20%以上減少したら陽性。
血清検査:IgE (RIST, RAST) 、抗原によるRAST抑制試験
胸部レントゲン写真:基本的には正常(繰り返し曝露により慢性気管支炎になることも)
治療
抗原から回避
治療は通常の喘息治療に準ずる(吸入ステロイド薬、b刺激薬、好アレルギー薬など)

診断(チャート)

3)過敏性肺臓炎(農夫肺)
外因性の有機塵埃の吸入によって個体が感作され、再吸入によって肺にアレルギー反応に基づく諸病変を引き起こす疾患、。「型アレルギーによるびまん性肉芽腫性間質性肺炎

職業

椎茸、ナメコ栽培、農場(特にカビの生えた枯れ草を取り扱う農夫)、畜産業者、グリーンハウス従事者

原因

1. 好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris, Micropolyspora faeni)
2. ナメコや椎茸の胞子
症状 抗原に感作されて3-6時間後に悪寒、発熱、咳嗽、呼吸困難

診断

治療

BALF; Tリンパ球の増加、CD4/8は高値(夏型過敏性肺臓炎は低値)
胸部レントゲン写真;スリガラス様ないしは細粒散布性
好熱性放線菌抗体陽性(抗原抗体沈降反応)
治療 抗原回避やステロイドの内服

4)職業性肺がん
石綿
肺がん、中皮腫
クロム
肺がん、上気道がん
コークス
肺がん、皮膚がん

石綿による肺がんの認定基準
 X線で1型以上の石綿肺患者
 石綿肺所見のない肺がん
  (1) 石綿曝露歴が10年以上
  (2) イかロの医学的所見がある
    イ 肺底部の捻髪音、胸膜プラーク、喀痰中の
石綿小体
    ロ TBLB、剖検に基づくびまん性線維性増殖、胸膜プラーク、肺組織内の石綿繊維や石綿小体の病理学的所見
 上記以外の肺がん
  

 短期間高濃度石綿曝露を受けた作業(吹き付け、断熱被覆、石綿建造物、施設、船舶の補修や解体)に従事し、イ及びロの所見及び石綿曝露作業内容や従事歴が明らかなもの

石綿による中皮腫の認定基準

1)石綿曝露作業期間が概ね5年以上
2)イかロの医学的所見を認める。
  イ 胸部レントゲン写真で第1型以上の石綿肺
  ロ イがない場合、剖検に基づくびまん性線維性増殖、胸膜プラーク、肺組織内の石綿繊維や石綿小体の病理学的所見

5)肺炎(間質性肺炎)
  金属(コバルト、タングステン)による巨細胞性間質性肺炎(giant cell interstitial pneumonia (GIP))
症状
乾性咳嗽、労作時呼吸困難

所見 

胸部レントゲン写真 

両側性に微細粒状結節、線状網状影
病理
リンパ球を主体とした細胞浸潤を伴った間質性肺炎(細気管支中心)
巨細胞;貪食能あり、組織球を貪食
治療
曝露から回避、ステロイド
 

いかにしてこれらの肺障害を予防するか?
どのような肺障害がおきているか、確認
有害物質が特定できている場合、労働衛生3管理に基づく対策を行う
有害物質が特定できていない場合、
  原因物質の調査(今後、アレルギー疾患が多くなると思われる)
  職場巡視を行い、作業員の話を良く聞く。
  そこで使用している物質が既知の有害物質があるか、また、使用しているすべての物質のMSDSを用意する。
   有害と思われる物質が肺障害をひきおこすか調査し、確定できた後、労働衛生3管理に基づく対策を行う。

労働衛生管理の3管理
1作業環境管理、(作業環境中の有害物質を低減化)
2 作業管理、(作業のスタイルを変えることにより有害物曝露から回避)
3 健康管理 (健康診断にて有害物質の生体影響を調査)

作業環境管理

  1. 有害物質の使用を中止(代替物の使用等)
      有害性の小さい物質への転換
      断熱材:石綿→発砲スチロール
  2. 生産工程、作業方法の改善(湿式化等)
  3. 設備の密閉化、自動化、遠隔操作
  4. 局所排気装置  
      局排の改善について
    フードの設計や吸引方向の検討(作業手順や発じん方向の観察)
    フードは:囲い式>外付け。囲い式は、開口面積を小さく、外付け式は、発散源に近づける。
    フランジの活用
    ON/OFF スウィッチの使用
    メンテナンス(間隙を塞ぐ)
    掃除機の併用可能
  5. 全体換気装置

作業管理

保護具.  防じんマスクと防毒マスク

マスクの適切な選択と使用キャプション
マスクの選択
(面体、ろ過式、給気式、)
マスクの使用
(ろ過材や弁の点検、フィットネステスト)(密着性の確認)
ろ過材の交換
(著しい息苦しさや目づまり、破過時間)
マスクの保守管理
(保管場所、清潔で乾燥した状態)

 
 



健康管理
粉じん職場における特殊健康診断
   自他覚所見、胸部レントゲン写真、肺機能検査、血液ガス分析