血情報                               0203−69
照射赤血球MAP「日赤からの細菌検出例について
  医療機関において,輸血前に照射赤血球MAP日赤の色調異常(黒変)が発見され血液センターで精査を行った結果セラチア リクファシエンス(Serratia liquefaciens)が検出されました(当該血液は輸血には使用されませんでした).
 輸血用血液の使用前には色調等外観に異常がないかどうかを確認し1)異常がみられた場合は使用せずに赤十字血液センターにご連絡をお願いします.   
 なお輸血用血液は生物学的製剤基準による各製剤の貯法に従って適正に保管してください. 

    【全血製剤赤血球製剤(4-6℃) 血小板製剤(20-24℃要振とう) 血漿製剤(-20℃以下) 】
事 例 概 要
  
◆当該製剤:照射赤血球MAP「日赤」
◆発見時の保存日数:採血後14日
◆検出菌:Serratia liquefaciens
◆発見年月:2001年10月
◆保管管理:4〜6℃で保存
本事例では、セグメント中の血液(赤血球層)と
 バッグ中の血液の色調が異なっていました。

【参考】正常品




輸血用血液にセラチアが検出された症例報告について
  セラチアは腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌で健常人においても一過性の菌血症を起こすことがありますが通常は生体免疫系の働きにより速やかに処理されほとんど病原性のない弱毒菌とされています.
 しかしセラチアは低温でも増殖し輸血によりエンドトキシンショック症状を起こした症例が1992年6月から1999年1月までに米国疾病対策予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)へ5例報告されておりうち4例が死亡症例ですこれらの症例で使用された赤血球製剤では 暗赤色ないし黒色への変化が認められています2
)
  
主な輸血用血液の無菌試験結果について
生物学的製剤基準に基づき平成10年度から平成12年度に日本赤十字社が実施した無菌試験の結果は以下のとおりであり、検出された菌の多くは皮膚の常在菌でした。
輸血用血液 検査数 陽性数 率(%) 検出菌(件数)
人全血液 6,977 2 0.03 P.acnes(2)
人赤血球濃厚液 137,496 53 0.04 P.acnes(45),P.propionicus(1),P.granulosum(1),
P.spp.(1),S.capitis(1),S.spp.(2).
C.spp.(2)
洗浄人赤血球浮遊液 2,825 1 0.04 P.acnes(1)
新鮮凍結人血漿 21,813 7 0.03 P.acnes(6),S.paucimobilis(1)
人血小板濃厚液 10,750 1 0.01
P.acnes(1)

<検出菌について>
  
主に皮膚に存在: P.acnes(Propionibacterium acnes), P.granulosum(Propionibacterium granulosum),
            
P.spp. (Propionibacterium spp.), S.capitis(Staphylococcus capitis), S.spp. (Staphylococcus spp.)
  
主に口腔内に存在: P.propionicus(Propionibacterium propionicus), C.spp. (Corynebacterium spp.)
  
自然界に存在: S. paucimobilis(Sphingomonas paucimobilis)
  
輸血用血液への細菌混入とその防止対策について
日本赤十字社では献血受付時の問診内容の充実(発熱・下痢等の確認)、採血時の皮膚消毒薬変更(0.5%グルコン酸クロルヘキシジンアルコール液から10%ポピドンヨードエタノール液に変更)等、種々の対策を実施しております。
しかし、完全に細菌を排除することは現状では極めて難しい事実があります。この輸血用血液への細菌混入の原因としては、消毒が困難な皮膚毛嚢を貫いた採血、無症候の菌血症状態にある献血者からの採血等が考えられます。

輸血を実施するにあたっては外観検査を行い、色調等の異常の有無をご確認ください1)。

■参考文献

1 )血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針について
 (平成11年6日10日医薬発第715号厚生省医薬安全局長通知)
2 ) Roth VR, Arduino MJ, et al.: Transfusion-related sepsis to Serratia liquefaciens in the United States. Transfusion,40, 931-935,2000


更新日:2002.12.14 文責:輸血部