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【輸血用血液製剤と薬剤の混注は避けてください】

なぜ混注はいけないのでしょうか?

薬剤によっては凝固や凝集、溶血、タンパク変性等を起こすからです。また、
外観上変化が見られなくても品質が低下していることがあります。期待した 
輸血効果が得られないばかりでなく副作用の原因になることもあります。  


これまで質問のあった主なものについて、ご紹介します。
 
問1.輸血用血液製剤の希釈液として輸液を使用したいのですがどのようなものがよいですか
回答.
  通常、輸血用血液製剤を希釈する必要はありません。赤血球M-A-P 「日赤」のヘマトクリットは約60%です。何らかの理由で希釈する場合は、生理食塩液のみが使用可能ですが、 腎不全、心不全等の患者についてはナトリウム負荷にご注意ください。
  下記の「各種薬剤の混注が輸血用血液製剤に及ぼす影響について」をご覧ください。
質問2.輸血によるアレルギー反応を予防するために抗ヒスタミン剤を混注するのはよいでしょうか。
回答.
  蕁麻疹など軽症のアレルギー性皮膚反応には抗ヒスタミン剤の予防投与が有効なことがあります。
  しかし、混注は製剤に変化を及ぼす可能性があります。また、抗ヒスタミン剤は拮抗阻害剤であり、輸血開始30分前に事前投与するのが最も効果的で輸血と同時に投与するのでは有効ではありません。
 また、同剤の使用により、アナフィラキシーの初期症状の把握が困難になることから、血圧低下や呼吸困難、意識障害といったショック症状が急激に現れる可能性がありますので、患者の十分な観察が必要となります。
質問3.薬物点滴ライン側管からの輸血はできますか。
回答.
  輸血は単独ラインで行うことが原則です。しかし、血管確保が不可能な場合等にやむを得ず留置針を介して点滴ライン側管から輸血する場合は、次の点に注意してください。



・輸血開始前後には、生理食塩液でラインをリンスします。

・点滴ライン合流部(三方活栓部等)から留置針までのラインを短くします。




これまでに報告された各種薬剤の混注が輸血用血液製剤に及ぼす影響について
分 類  薬剤名(販売名) 影 響
カルシウム含有薬剤1) カルチコール、コンクライトCa、ハルトマン、
ラクトリンゲル、ラクテックG、ポタコールR、
リンゲル、リセクトールU、ハイカリック1号・
2号、パレメンタールA
カルシウムが凝固系に作用する
ため、血液は凝固する.
ブドウ糖含有薬剤1)2) 5%ブドウ糖液、10%ブドウ糖液、ワスタ、プラ
スアミノ、リセクトールU,ハイカリック1号・
2号、バレメンタールA、フィジオゾール3号
赤血球の凝集を高め、泥状にな
る.
ブドウ糖電解質液 溶血
糖単独薬剤2)3) 5%ブドウ糖液、5%果糖液、5%キシリトール
ビタミン剤1)2)4) ビタメジン(Vt.B1,B6,B12)、アスコルチン
(Vt.C)、ケイツー(Vt.K2)、M.V.l(総合
ビタミン剤)
赤血球製剤は褐色〜黒褐色に変
化する(微小凝集、沈殿が生じ
ることがある)。
抗生物質1)4) ケプリン 赤血球製剤は褐色〜黒褐色に変
化する.
ミノマイシン、トブラシン
血漿製剤と混注すると凝固する
ことがある。
血漿代用剤5) 高分子デキストラン 赤血球集合を促進する。
グロブリン製剤5) ヴェノグロブリンI、グロブリン-N、べニロン、
ガンマペニン、静注グロブリン、グロブリンV、
グロベニン、ヴェノグロブリン
抗A抗B凝集素等により赤血球
集合(凝集+集合)を促進する.
※記載されていない薬剤については、データ等がないということで、混注が可能ということではありません
薬剤の血液成分に対する副作用について
 代表的なものとして、非ステロイド抗炎症剤(アスピリン6)、ピロキシカム6)など)の血小板機能抑制作用が挙げられます。
 このような薬剤を投与している場合は、輸血効果等に影響がありますので、投与薬剤の添付文書をご覧ください。
■ 参考文献
1)本田 盈: 日赤薬剤師会血液センター部門委員会61年度共同研究:血液製剤との配合薬剤の実態調査.日赤薬剤師会会誌, 56, 7-14. 1998.
2)本田 盈: 日赤薬剤師会血液センター部門委員会62年度共同研究:血液製剤と薬剤との混注について.日赤薬剤師会会誌, 56, 15-21. 1998. 
3)中村 幸夫,他 :赤血球濃厚液と併用される各種輸液製剤の赤血球浸透圧抵抗に及ぼす影響.弘前医学.36, 417-427. 1984.
4)本田 盈:日赤薬剤師会血液センター部門委員会63年度共同研究:血液製剤と薬剤との混注 その2について. 日本薬剤師会会誌. 57. 6-9,1989.
5)前田 信治:臨床で用いられる高分子製剤と赤血球集合.赤血球凝集機構および抑制に関する基礎的研究:昭和62年度科学研究費補助金一般研究(C)研究成果報告書 pp.42-49, 1988.
6)AABB : Uniform donor history questionaire. News Briefs, July, 9-12, 1995.



更新日:2002.12.22 文責:輸血部

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