輸血関連 NEWS EYE   2003.01.27

「輸血によるE型肝炎」の報道と「針刺し事故で医療従事者がHIV感染」の報道がありました.

 ◆当院におきましても,輸血後に副作用等が発生した場合は,早急に輸血部へご連絡下さい.
  原因究明のための検査を行い,以後の輸血に備えています.

[朝日新聞ニュース速報]
輸血でE型肝炎に感染 国内で初の確認、全国調査へ[2003-01-18-10:53]


  北海道室蘭市内の病院で昨年7月、心臓手術を受けた60代の男性が輸血が原因でE型肝炎ウイルス(HEV)に感染、発病していたことが日本赤十字社の調査でわかった。
 輸血によるHEVの感染が確認されたのは国内では初めて。 ウイルス性肝炎の疫学調査をしている厚生労働省研究班は日赤と共同で、献血者に感染させる恐れのある人がどれくらいいるかを知るため、全国調査を実施する。
 研究班長の吉沢浩司・広島大教授は「輸血で感染する確率は極めて低いと考えられる」と話している。
 吉沢教授によると、この男性が手術後にE型肝炎を発病したため、輸血した23人分の血液を調べたところ、そのうちの1人からHEVが検出され、遺伝子の型が男性のものと一致した。男性はすでに完治している。
 献血血液の検査では、感染が持続するC型肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)、劇症肝炎を引き起こす危険のあるB型肝炎ウイルスなどについて調べているが、主に飲食物を介して口から感染し、感染が持続しないHEVやA型肝炎ウイルスは検査の対象になっていない。
 肝炎などになると血液中に増える酵素(ALT)は検査しており、HEVで肝機能に異常が出ていれば、献血しても除外される。今回は献血者に自覚症状はなく、ALT検査でも異常値を示さなかった。 HEVは急性肝炎を発症しなければ数カ月で血液中からなくなる。輸血でHEVに感染する危険があるのは、献血者が感染してから数カ月以内に献血し、ALT検査もすり抜けてしまう場合という。
 ALT検査で除外された献血血液を全国から集めて、どれぐらいの割合でHEVが検出されるか調べる。この結果をもとに、献血時に新たな安全対策が必要かどうか検討する。  

 <E型肝炎> 汚染された水や食べ物からウイルスに感染する。感染後5〜6週間で発熱、だるさ、黄疸(おうだん)などの急性肝炎症状が起きる。ほとんどの場合、水分や栄養の補給と安静によって1カ月ほどで回復する。症状が出ないことも多い。死亡率は0.4〜4%。C型肝炎のように慢性化することはない。


[共同通信]
[日本医師会デイリーニュース 2003/01/22]
針刺し事故でHIV感染 医療従事者なら国内初 男性、厚労省に01年報告 追跡調査せず非公表に 情報公開請求で判明  −1−


 エイズウイルス(HIV)への感染経路が「国内での針刺し事故」とみられる感染例が二○○一年、国に報告されていたことが二十一日までに、共同通信の請求に対し公開された厚生労働省の内部資料で分かった。感染者は男性といい、発生届には職業が書かれていないが、医療従事者が汚染注射針を誤って刺して感染した国内初の事例だった可能性がある。
 厚労省は「医療従事者と断定する根拠はなく、詳細な内容も不明」として公表せず、追跡調査や医療現場への注意喚起などの対応策も取っていなかった。同省疾病対策課は「針刺し事故でのHIV感染対策は、以前から医療機関に徹底を呼び掛けており、あらためての注意喚起は必要ないと判断した」としている。
 感染症予防法はHIV感染の実態を把握するため、医師に対し、新規の感染者や患者を把握した際は国に報告することを義務付けている。
 発生届には、感染者らの話に基づき医師が「推定される感染経路」として(1)性的接触(異性間、同性間)(2)静注(静脈注射)薬物使用(3)母子感染(4)輸血(5)その他(6)不明―から選択して記載する。
 今回判明したケースは○一年四月に厚労省のエイズ動向委員会に報告された。推定感染地を「日本国内」とした上で、推定感染経路の「その他」の欄に「針刺し事故」とだけ記載していた。
 厚労省によると、プライバシー保護のため感染者らの氏名や職業は記載されず、推定感染経路をどこまで詳細に聞き取り記載するかも医師によってばらつきがあるのが実情という。
 厚労省は定期的に感染者らの人数を性別や年齢層、感染経路別に集計し公表しているが「今回のように個々のケースの詳細は非公開とすべき個人情報に当たる可能性があり、現時点で公表する考えはない」としている。
 針刺し事故をめぐっては、同じ○一年に推定感染経路として「病院手術室の清掃業者、針刺し頻回」と記載された感染報告があり、やはり非公表とされ、その後報道で判明したケースがある。


[共同通信]

「事実確認すべきだった」 専門家、厚労省に疑問 −2−

 以前から懸念されていた医療従事者の針刺し事故によるHIV感染。実際にその可能性がある報告があったのに、何ら具体的な対応を取らなかった厚生労働省に対し、専門家からは「きっちり事実確認するべきだった」との声も出ている。
 医療従事者が、患者に使用した注射針を誤って自分の手などに刺してしまう針刺し事故は、医療現場で頻繁に発生している。旧厚生省の研究班がエイズ拠点病院を対象に一九九八年に実施した調査では、エイズ患者診療中に起きた針刺し事故が一年間に三十件あった。
 別の調査では、エイズ患者診療中以外のケースも含め、九六―九八年の三年間のエイズ拠点病院での事故件数が約一万一千八百件、百床当たり年間四件発生とのデータもあり、それすら氷山の一角とみられている。
 旧厚生省は一九九七年と九九年に、針刺し事故後に、必要に応じて速やかに抗HIV薬を服用できる体制の整備を医療機関に求める通知を出しており、厚労省は「医療現場では既に十分な感染防止体制が取られているはずだ」としている。
 だが、針刺し事故に詳しい名古屋市衛生研究所の木戸内清微生物部長は今回判明したケースについて「個人のプライバシーに配慮しながら事実関係を確認し、対策に生かすべきだった。医療従事者の針刺し事故によるHIV感染が確認されれば、大きな警鐘になるはずだ」と指摘している。


◆ 当院における血液汚染事故は毎年100件前後あり,その内の7割が針刺し事故によるものです.
  輸血部では病院内で発生した汚染事故の手続きと毎月のフォロー検査を実施しています.
  事故後のご連絡はお早めに!
(学生の場合は大学保健センターにご連絡を)

 院内でHIVの汚染事故が発生した場合は,汚染後2時間以内に抗HIV薬を予防内服するようになっています.
  時間内はまず輸血部に連絡し,輸血部が担当医への連絡と事務手続き等迅速に対応します.
  時間外は被事故者本人が担当医に連絡を取り,指示を受ける体制になっています.
   (担当医:小児科 白幡先生  第1内科 齋藤先生  輸血部 中田先生)
  ◆詳細は業務マニュアルの輸血部「院内でのHIV暴露事故後の対応」を参照して下さい.)


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更新日:2002.12.20 文責:輸血部