Department of Blood Transfusion Medicine,UOEH 



 ■自己血輸血のご案内

 自己血輸血とは、手術の際の出血に備えて、前もって採血し保存しておいた自分の血液を輸血することです。
同種血輸血( 他の人の血液を輸血すること) の安全性も高まり、感染症の危険性なども以前に比べ、格段に少なくなっていますが、現在でも100% 安全な血液は存在しません。
 ですから、自分の血液を保存しておき輸血することが出来れば理論上、最も安全な輸血となります。
 但し、自己血輸血にも危険がありますし、採血には苦痛を伴います。
 そこで、患者様のご希望、輸血の可能性の高さなどにより、自己血輸血を実施するかどうか主治医とよく相談して決定して下さい。
   
 
 1.自己血輸血の対象となる患者様
  1. 手術中の出血量が予測でき、輸血の可能性が高い場合で、患者様の全身状態が良く、手術までの日数がある場合。 
  2. 稀な血液型や以前に同種血輸血により輸血副作用があった患者様など。
  • * ただし、血管が細い方、貧血が強い方、その他の疾患の方は自己血採血が出来ない場合があります。
 
 2.自己血輸血の利点
  1. 自分の血液なので感染症の心配がない。 
  2. 自分の血液なのでアレルギーなど免疫反応の心配がない。 
 
 3.自己血輸血の危険性
 採血に伴う危険
  1. 採血中や採血後に気分が悪くなったり吐き気や冷や汗が出ることがあります。
    このような症状は100回の採血に1 〜 2 回程度発生しますが、しばらく安静にしていることでほとんどの方が回復します.

     しかし,稀に血圧低下や徐脈が生じ薬剤の投与が必要になる場合もあります。極まれに,心停止をきたす場合もあります.
    特に、小児や低体重の方では可能性が高くなります。
    また、70歳以上の高齢者の方では狭心症発作などの可能性も高くなりますので、主治医とよく相談して下さい。

  2. 貧血の改善のための鉄剤の内服で吐き気等の副作用が発生する可能性があります。
    また、貧血の改善薬としてエリスロポエチンという造血ホルモン剤を使用することがありますが、高血圧症の方や心筋梗塞や脳梗塞の経験のある方では副作用発生の可能性が高くなります。

  3. 採血針が太いので採血時の血管損傷・神経損傷・強い痛みの可能性があります。特に血管が細い方は苦痛が大きい可能性があります
 血液の保存に伴う危険
  1. 自己血は最長42 日間保存するので、保存中に細菌が繁殖する可能性が、使用期限が21日間以内の同種血液(他の人の血液)より高くなります。
  2. 血液の保存剤等による副作用は同種血輸血と同様に発生します。
 
 4.その他:次のことをご了解下さい。
  1. 当院では自己血採血前に血液型・血算・生化学・感染症検査を実施いたします。
     
  2. 感染症検査はB型肝炎ウイルス(HBs抗原)・C型肝炎ウイルス(HCV抗体) )・ ヒトTリンパ球白血病ウイルス(HTLV−T抗体)・エイズウイルス(HIV抗体)・梅毒の5項目です。
     
  3. 感染症は陽性でも採血することに問題はありません。
     
  4. 安全な輸血のため、上記の全ての検査が終了するまで自己血採血は実施いたしません。
     
  5. 採血した血液は輸血部の責任で万全の注意をし保管しますが、稀に、保存中の事故や分離作業中の血液バッグの破損により、輸血に使用出来なくなる可能性があります。
     
  6. このような場合、手術を延期して採血をやりなおすか、手術が延期できない場合は同種血液を使用して手術を実施することになります。
     
  7. 保存期間が長い場合や手術日が延期された場合は、手術前に戻し輸血をする可能性があります。

  8. 手術での出血量が少なく、採血した自己血の一部又は全部を輸血する必要がなかった場合、使用しなかった自己血は、廃棄いたします。
     
  9. 手術中に予め採血した自己血で足りなくなった場合には同種血液を使用します。 
  
 5.採血時の注意
  1. 患者様の貧血が進行したり、体調不良などのため、来院いただいても自己血採血できない場合があります。
    次のような場合は採血が出来ない可能性が高いので、ご心配な症状がある場合は来院前に各診療科にご確認下さい。

      発熱・下痢症状がある場合,3日以内の歯科治療(歯石除去を含む)
      体調のすぐれない場合,妊娠の可能性がある場合

  2. 採血当日は食事をし、十分に水分を取ってからおいで下さい。

  3. 採血当日は入浴や激しい運動などは避けて下さい。

  4. 採血中や採血後に気分が悪くなった場合は医師か看護師に直ぐに知らせて下さい
    帰宅後に気分が悪くなった場合も、症状がひどい場合には各診療科にご連絡下さい。
    また、次の採血時にも医師か看護師にお知らせ下さい。
 
 6.自己血採血の中止を希望される場合
途中で自己血採血を中止されたい場合は、いつでも中止できますので申し出て下さい。



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更新日:2004.3.14 文責:輸血部