令和3年度 事業報告

Ⅰ 令和3年度事業運営の基本方針

 令和3年度は、新型コロナウイルス感染症に対して全学を挙げて取り組み、第3次中期目標・中期計画(平成28年度~令和3年度)の最終年度として、医科大学としての教育・研究・診療の基盤を強化し、産業医学及び産業保健の中核を担う豊かな人間性に富む人材を養成するとともに、産業医学の振興及び産業保健の推進の更なる発展に努め、医療の提供においては、地域に密着し、かつ先進的な機能の充実を図ることを基本方針とし、特に以下の事項について重点的に取り組んだ。

  1. 教育 産業医学・産業保健の中核を担う人材や次世代の研究リーダーの養成、産業医学・産業保健分野を目指す学生の確保、国家試験の高い合格率の維持
  2. 研究 社会の求める課題の解決に寄与する産業医学・産業保健の研究
  3. 産業医及び産業保健専門職の養成「人材育成プラン」に基づく積極的な養成、本学卒業生の70名以上の産業医従事、産業保健専門職の養成、産業医学に関する様々な研修会の充実及び首都圏専門的産業医養成支援事業の実施、過労死等の防止に係る研修事業の実施等
  4. 病院運営 大学病院については、高度急性期医療の推進、若松病院については、地域に信頼される医療の提供
  5. 社会貢献及び情報発信 本学の知見や研究成果を社会還元し、情報発信を推進
  6. 業務運営 長期ビジョンに基づく第4次中期目標・中期計画の策定、機能的な組織、財政基盤の安定化・収益性の確保、医師の働き方改革への対応、施設整備、大学病院耐震工事の完了、急性期診療棟建設工事の着手、医学教育分野別評価の受審準備
  7. コンプライアンスの徹底 コンプライアンス意識の定着、法令及び学内規則等を遵守する取組

Ⅱ 令和3年度事業報告の具体的内容

 1 教育

 令和2年度に引き続き、医学部、産業保健学部及び大学院の教育については、新型コロナウイルス感染症防止対策に係る国及び福岡県の要請に基づき、本学における対策を適宜適切に行ったうえで対面及びオンラインを併用し、講義を行った。

 また、実習については、分散実習及びローテーション実習等、学習機会の確保に努めた。

(1) 学部教育

① 医学部

 ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーに基づき、高い倫理観及びコミュニケーション能力を備えた人間性豊かな医師を養成するとともに、6年間を通じ系統的な産業医学教育を実施し、優れた産業医の養成を図った。

            •  教育内容について検証し、授業アンケートの学生意見を反映した理解しやすく、質問しやすい講義の進め方、分かりやすい講義資料の作成などの改善を継続的に行い、医学教育の質的向上を図った。
            • 総合教育セミナー、研究室配属等の少人数対話型教育を通じて、課題探求・問題解決能力、コミュニケーション能力の涵養を図るとともに、実効性のある医学教育の円滑な実施と効果的な教育目標の達成を図った。

            • 医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂)及び医学教育分野別評価基準に対応した医学教育カリキュラムを確立するため、平成31年度入学者から適用となった新カリキュラムと旧カリキュラム(4年次~6年次適用)の円滑な実施を図った。

② 産業保健学部

 ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーに基づき、高度な知識・技術と幅広い教養を身に付けた看護師、産業保健師及び労働安全衛生専門職を養成する教育を行った。

            • 教育内容について検証し、授業アンケートの学生意見を反映した理解しやすく、質問しやすい講義の進め方、分かりやすい講義資料の作成などの改善を継続的に行い、産業保健教育の質的向上を図った。
            • 看護学科及び産業衛生科学科において、令和2年4月入学者から導入された新カリキュラムによる教育を円滑に実施するとともに、産業保健人材育成のための実習の強化を図った。
            • 令和4年度から「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」の一部が改正されることを受け、文部科学省にカリキュラム対比の申請を行い承認された。

(2) 大学院教育

 ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーに基づき、高度な研究能力と豊かな学識を有した人材を養成する教育を行うとともに、産業医学の発展に貢献した。

            • 学術研究の進歩や高度化に対応するため、大学院の教育・研究のあり方について必要な検討を加え、その充実を図るとともに、適切な研究指導により大学院生の計画的な研究を促し、大学院教育の質的向上を図った。 

【学位授与状況】〔括弧内は令和2年度実績〕

令和3年度 長期履修者を除く修業年限内学位取得率 73.3%        

博士(医学)長期履修者を除く修業年限内学位取得率 73.7%

 課程修了による者 19名〔25名〕

 論文提出による者 14名〔16名〕

博士(産業衛生学)長期履修者を除く修業年限内学位取得率 0.0% 3名〔6名〕

修士(産業衛生学)長期履修者を除く修業年限内学位取得率 100.0% 7名〔9名〕

修士(看護学)   長期履修者を除く修業年限内学位取得率 50.0%  3名〔4名〕


 (3) 学生の受入れ

① 学部

 本学の設置目的及びアドミッション・ポリシーを十分に理解し、明確な使命感及び目的意識 を持つ、将来、産業医及び産業保健専門職として活躍できる優秀な学生を全国から更に多くの確保に努めた。

            • 高校及び予備校訪問、入試説明会への参加等の手法を見直し、在学生・卒業生による出身校への訪問をはじめ、ホームページの改善、YouTubeの活用等、積極的に広報活動を行い、全国からより多くの志願者を募った。
            • 文部科学省の大学入試選抜改革(高大接続改革)も踏まえ、本学の入試制度の見直しを検討し、医学部の令和6年度入試から、「学校推薦型選抜」の1校当たりの推薦人数の変更及び既卒者の出願要件の変更をはじめとして、選抜方法に新たに「総合型選抜」を加え、「一般選抜」を複数の方式に分けて実施することとした。
            • 学校推薦型選抜及び一般選抜について新型コロナウイルス感染症防止対策を十分に講じ、適切な実施を図った。
            • 医学部の募集人員について、学校推薦型選抜は20名以内から25名以内に、一般選抜は約85名から約80名に変更した。
            • 産業保健学部の両学科に入試対策プロジェクトを設置し、Twitterの配信、新設した特待入学者制度をはじめとする本学の強みを活かした広報活動を行った。 

【入試結果】〔括弧内は令和2年度実績〕

医学部 志願倍率 12.8倍(募集人員105名のうち学校推薦型選抜25名以内)

学校推薦型選抜 志願者数   82名〔  69名〕から27名選抜

一般選抜    志願者数 1,265名〔1,248名〕から78名選抜


産業保健学部看護学科 志願倍率 4.42倍(募集人員70名のうち推薦入試35名以内)

学校推薦型選抜 志願者数   69名〔  63名〕から35名選抜

一般選抜    志願者数  241名〔 177名〕から35名選抜


同 産業衛生科学科 志願倍率 2.8倍(募集人員20名のうち推薦入試5名以内)

学校推薦型選抜 志願者数   8名〔  6名〕から5名選抜

一般選抜    志願者数    48名〔  33名〕から15名選抜


② 大学院

 本学の設置目的及び各専攻のアドミッション・ポリシーを十分に理解し、自らが主体的かつ積極的に課題に取り組み、解決する能力を有する学生の確保を図った。

 入学者選抜は、新型コロナウイルス感染症防止対策を行ったうえで実施した。

【大学院入学者選抜結果(入学者数)】

大学院医学研究科 入学定員充足率75.0%〔括弧内は令和2年度実績〕

   医学専攻(博士課程)

33名〔20名〕(うち社会人22名、留学生4名)

産業衛生学専攻(博士前期課程)

4名〔8名〕(うち社会人2名)

産業衛生学専攻(博士後期課程)

5名〔6名〕(うち社会人5名)

看護学専攻(修士課程)

3名〔2名〕(うち社会人2名)

(4) 国家試験

① 医学部

 医師国家試験の合格率は、教育効果を示す重要な指標の一つであることから、医師国家試験等の情報分析を行い、授業、定期試験等に反映させた。また、模擬試験結果の検証を行い、成績下位者に徹底した学習指導を実施したが目標の95%に達せず、更に努力を要する結果となった。

【第116回医師国家試験結果】〔括弧内は前回実績〕

令和3年度数値目標 合格率 95%以上

 令和3年度     合格率 94.2%

新卒者  120名中 113名合格

合格率   94.2% (全国平均 95.0%) 

〔第115回  96.6% (全国平均 91.4%)〕

既卒者  3名中 3名合格

合格率  100.0%  (全国平均 54.0%)

〔第115回 該当者なし〕

合 計  123名中 116名合格

合格率   94.3% (全国平均 91.7%)  全国81校中29位

〔第115回  96.6% (全国平均 91.4%)  全国80校中9位〕


② 産業保健学部

 看護師及び保健師国家試験の情報を把握し共有化するとともに、教育方法及び模擬試験結果を検証し、徹底した学習指導の実施に努め、全員合格を目指し、以下のとおりの結果となった。

【第108回保健師国家試験結果】〔括弧内は前回実績〕

令和3年度数値目標 全員合格

看護学科卒業生71名のうち保健師教育課程選択者18名が受験し18名全員合格

合格率  100.0% (全国平均 93.0%)    

〔第107回 100.0% (全国平均 97.4%)〕


【第111回看護師国家試験結果】〔括弧内は前回実績〕

令和3年度数値目標 全員合格

看護学科卒業生71名のうち70名合格

合格率  98.6% (全国平均 96.5%)

〔第110回 100.0% (全国平均 95.4%)〕

(5) 教育の質の向上

 教育研究に係る内部質保証の方針に基づき、教育研究質保証推進委員会において、各学部等の教育研究活動の改善及び向上を着実に推進した。

 令和2年度に設置したIR推進センターについては、教育研究質保証推進委員会と連携し、大学教育・研究に関する目標・事業計画の進捗状況の評価に必要なデータ及び分析結果の提供を行い、全学的な教育研究活動における適切なPDCA推進を支援した。

 令和元年度に導入した学修成果を可視化するためのツール「学修評価システム(eポートフォリオ)」による学修成果の把握及び評価を行った。

 医学・看護学・産業衛生学教育を取り巻く新たな課題への理解を深めるとともに、教育内容及び方法の組織的改善と教員の教育能力の向上を図るための、ファカルティ・ディベロップメント(FD)を実施した。

(6) 学生への支援

① 学生指導については、学生部長のもと学内関係者一体となって、学生生活全般に関する相談及び指導等の充実を図った。

              • 教員と学生との関わりを深め、指導教員制度の充実を図り、産業医、産業保健専門職への就業の動機付けを行うための情報を提供した。 
              • 令和2年度に創設した本学独自の修学援助奨学金制度及び新型コロナウイルス感染症等による緊急な理由により学業の継続が困難となった学生のための緊急学業支援貸付金制度により、更なる学生支援の充実を図った。

② 令和4年度から、本学が指定する教育ローンを契約した医学部学生に対して、在学中に係る学納金ローンの利息相当額を本学が奨学金として給付することで、在学中の自己負担無く修学可能なキャリア形成サポート奨学金給付制度を創設した。


③ 学業成績表彰(賞状授与)を新たに創設し、成績下位学生教育や国家試験対策等を充実させることとした。(特待生制度の廃止)

(7) その他教育全般

新型コロナウイルス感染症防止対策に万全を期し、学生向けの感染症防止対策を強化した。 

 2 研究

 英国の高等教育専門誌「THE世界大学ランキング2022年版」において、引き続き本学の研究力が高く評価され、被引用論文(研究影響力)で国内第1位〔2021年1位〕となり、全国で第7位〔同5位〕、3年連続私立大学で第1位〔同1位〕、九州の大学で第1位〔同1位〕にランクされた。

(1) 産業医学・産業保健の研究

職業性疾病の予防と労働適応能力の向上に資する研究課題を探究した。

          • 産業医学に関する諸課題(労働者の能力向上、産業保健体制・経営改善、様々な有害要因の解析と改善、新規化学物質の有害性評価等)に取り組んだ。
          • 「高年齢労働者産業保健研究センター」を新たに設置し、高年齢労働者の増加に伴う労働災害の予防を図り、職業適性を推進する横断的な研究を進めるための整備を行った。

          • 「災害産業保健センター」を新たに設置し、災害産業保健に関する研究、教育コンテンツやマニュアル等の作成、全国各地の卒業生産業医等とのネットワークを構築し、研修及び災害対応の実施に向けた整備を行った。

(2) 研究の質の向上

① 研究の活性化

 本学が戦略的に取組むべき研究課題を明確にし、重点分野に資源を注入することにより、他大学・研究機関に先駆け、研究成果の向上を図った。

② 産学官連携の推進

 産業界、行政機関等との連携・協力を推進し、共同研究・受託研究等を積極的に推進した。

③ 国際交流の実施

 世界規模での新型コロナウイルス感染症拡大により、国際交流センター等が計画していた多くの国際交流活動が中止又は延期を余儀なくされたが、従来からオンラインで行ってきた国際遠隔講義は引き続き実施するとともに、積極的に活動及び支援を行った。

            • 国際労働機関(ILO)からの委託を受け、「アジア諸国の労働衛生資格枠組みに関する研究」を産業生態科学研究所の社会環境部門4研究室が共同で実施した。
            • 産業生態科学研究所が世界保健機関指定協力機関(WHOCC)として、モンゴル国立医科大学主催のオンラインワークショップに参加し、職業性呼吸器疾患の診断に関する講義を提供した。 

④ 産業保健データの活用

 産業保健データサイエンスセンターにおいて、企業、健康保険組合等が保有する産業保健のデータ収集を行い、情報を統計学的に分析し、データ提供企業等に対して、分析結果をフィードバックした。

(3) 教育研究環境整備

教育研究支援施設各センター間の緊密な連携を図るとともに、施設の基盤整備及び適切な管理運営により、一層の教育研究支援を行った。

 3 産業医及び産業保健専門職の養成等

 国における産業医・産業保健機能強化の動きを受け、「産業医科大学における今後の産業保健分野の人材育成プラン(以下「人材育成プラン」という。)」に基づき、優秀な産業医・産業保健人材の育成を図るため、次の取組を行った。

(1) 産業医の養成

          • 医学部については、産業医への就職支援を充実させ、70名以上を産業医に従事させる目標達成の実現を図るとともに、社会全体の産業医に対する期待と需要が高まる中、「人材育成プラン」に基づき、更に多くの産業医の輩出を図り、各講座等と進路指導担当部署等が連携を密にし、求人の確保、情報の提供並びに産業医への就職促進に取り組んだ結果、令和3年度は新たに93名が常勤の産業医として従事した。

令和3年度数値目標 70名以上/年

          • 医学教育プログラムの改革に合わせ、産業医学教育において1年次から6年次まで基礎専門・実習の的確な配置と十分な時間の確保を図った。特に産業医学現場実習を充実させるとともに、産業医実務に活かせる臨床能力の向上を図った。
          • 学部生及び卒業生に対して、産業医学・産業保健関係業務に関する情報提供等を行い、産業医学・産業保健関係業務への就労支援を行った。
          • 産業医業務に必要な修練を充実させた産業医学卒後修練課程について、専門産業医コースⅠに関しては社会医学系専門医研修プログラムを引き続き実施した。専門産業医コースⅡに関しては診療領域における基本18領域の専門研修プログラムを組込んだ後期課程修練を引き続き実施し、各コースの円滑な運営を行うことにより、それぞれの専門医資格要件を有する優れた産業医を養成した。
          • 産業医資格の取得に係る産業医学基本講座、産業医学総合実習及び産業医学基礎研修会集中講座を新型コロナウイルス感染症防止対策を行ったうえで実施し、他学卒業生の産業医の養成に貢献した。なお、産業医学基本講座については、他大学卒業生に対する広報活動を推進し、受講生の積極的な受入れを図った。
          • 産業医学修練医等に対して、産業医実務に関する知識及び技術を実地に研修させる産業医学実務講座を、新型コロナウイルス感染症防止対策のため、令和2年度に引き続き一部の実習を除きWeb開催とし、104名が受講した。

【受講状況】〔括弧内は令和2年度実績〕

他学卒業医師の産業医学基本講座修了者 54名

産業医学基本講座 北九州開催分 受講者 49名(修了者 43名 うち他学卒修了者16名)

  〔受講者 51名(修了者51名うち他学卒修了者12名)〕

産業医学基本講座 東京開催分   受講者 43名(修了者 40名 うち他学卒修了者38名)

〔 中止 〕


他学卒業医師の産業医養成数 961名

産業医学基礎研修会 北九州開催分 受講者   686名(修了者   687名)

   〔受講者   289名(修了者   285名)〕

産業医学基礎研修会 東京開催分  受講者   275名(単位取得者   274名)

 〔受講者   234名(単位取得者   231名)〕


          • 臨床研修を全国で行っている修練医が円滑に卒後修練課程(後期課程)に移行することを支援するために、所属講座等と進路指導担当部署等との情報共有を行うとともに、キャリア支援及び進路指導の強化に資する仕組みとして、メンター制度を導入した。
          • 医学部卒業生が医師としての多様なライフプランを実現することを目的としたキャリア形成プログラムを創設し、令和4年度入学生から適用を開始することとした。また、学内周知を図るとともに、6年次生にプログラムへの参加を促し14人(令和4年3月31日現在)の参加を確保した。

(2) 産業保健専門職の養成

 産業保健学部については、産業保健専門職への進路支援を充実させ、関連職場への就職を促進した結果、就職を希望する者85名のうち81名95.3%)が関連職場に就職した。


          • 企業の産業看護職へのニーズの高まりに併せ、産業看護関連科目に関する講義及び実習の充実を図った。
          • 企業に勤務する先輩産業看護職との交流会等を充実させ、産業看護職志向を高める機会の増加に努めた。

          • リスクアセスメントの実施等、化学物質管理の強化に対応できる教育を充実させるとともに、生管理者教育の強化を図った。

(3) 産業医及び産業保健専門職の能力向上

        • 産業医等のキャリアに応じた研修の一環として、産業保健コアカリキュラム及び産業看護実務研修を実施した。
        • 本学で蓄えられた教育・研究成果を活用し、全国各地で産業保健専門職への専門的研修(産業医学実践研修)を、新型コロナウイルス感染症防止対策のため回数及び定員を減少し、9プログラム延べ13回実施し、655名が受講した。
        • ストレス関連疾患予防センターにおいて、過重労働対策を推進するための研究及び研修教材の開発を行うとともに、関連分野の科学及び社会政策について幅広い知識を有する特命講師が全国の主要都市において産業保健専門職を対象として実施する研修事業の更なる充実を図った。
        • 産業医及び産業保健専門職への情報提供を行い、卒業生の産業保健活動の支援を目的として、医学部卒業生に加え産業保健学部卒業生にも、臨床的な悩み相談などを行う「病産連携窓口」を活用できるようにし、産業医・産業保健機能の強化を図った。

(4) 首都圏専門的産業医養成支援事業(東京プロジェクト)

 首都圏において、質の保証された産業医学に関する教育・研修事業及び産業保健関連分野のネットワークを構築・展開し、わが国における産業医学分野の人材の更な8る育成と情報の収集・発信を図るための事業については、新型コロナウイルス感染症拡大により、前年度に引き続き、一部事業の計画を変更して実施した。

①事業Ⅰ(教育・研修事業)

 首都圏において、他学卒業の医師で専門的な産業医を目指す者を対象とする産業医学基本講座(東京開催)については、新型コロナウイルス感染症防止対策のため、受講者間の密を避ける等十分な感染症防止対策を行い、43名が受講し、40名が修了した。

②事業Ⅱ(就職促進事業)

 継続的な産業医の供給という社会的な要請に応えるため、大学関連会社と連携し、事業Ⅰ修  了者のうち産業医への就職を希望する者への産業医活動に関する相談対応等の支援策として、就職促進事業の紹介及び就職希望者とのマッチングを行い、2名に対し就職先企業を斡旋した。

 また、事業Ⅰ修了者に対する専門的産業医実地研修について、研修協力機関と協定を結ぶとともに、1名の研修員を受け入れ、当該機関において1年間の試行実施を行った。併せて、専門的産業医実地研修委員会を定期的に開催し、研修状況の確認、研修内容の検討を行うとともに、研修生の指導を行いながら、令和4年度からの本実施に向け、問題点の抽出、解決を図った。



③事業Ⅲ(情報発信・啓発事業)

 産業医学・産業保健に関する情報収集、発信拠点として実施している首都圏プレミアムセミナーは、新型コロナウイルス感染症防止対策のため、前年度に引き続き、同期型セミナー(Zoom方式)7コース、非同期型セミナー(YouTube等オンデマンド配信)4コースを開催し、236名が受講した。

 また、受講者相互の人的ネットワークを構築するための首都圏事業プレミアム会員制度については、Twitterの発信や毎月のメールマガジンの発行を行うなど、会員の増員を図るための幅広い広報活動を行った。


 4  病院運営 

 大学病院と若松病院は、それぞれの機能を生かした運営により、地域完結型医療における高度急性期医療機関としての診療体制・機能、医療の質の充実・向上を図り、国が進める地域包括ケアシステム、高齢化が進む地域への適切な医療提供等について、具体的な目標を持った運営を行った。

 また、新型コロナウイルス感染症防止対策については、引き続き国・地方自治体との連携及び協力を行うとともに、必要な環境整備を行い、強固な感染症防止対策を実施し、患者はもとより職員の感染症防止対策を徹底した。

      • 患者の安全を確保するため、常に業務改善を行うとともに、医療安全に関する情報の発信及び教育・研修を通じて、職員の安全管理に対する意識向上を図るなど、医療事故、院内感染防止等の医療安全対策及び情報管理対策の充実・強化に努めた。
      • 大学・若松両病院長のトップマネジメントによる効率的な病院経営を目指し、業務の効率化、病床稼働率向上のために集患を図るとともに、ベンチマーク(他病院との比較による)等も活用し、薬品・診療材料費等の経費節減を図った。

        また、各診療科及び部門においても具体的な目標を設定し、経営を意識した診療を促すとともに、目標の達成状況を適宜確認の上、問題点を解決し、経営改善に努めた。

      • 診療体制・機能の維持及び充実を図るため、医療設備・機器の整備を継続的かつ計画的に行うとともに、医療スタッフの負担軽減を図った。
      • 医師の働き方改革について、医師の超過勤務時間削減に向けた計画を策定し、特定行為看護師の養成等により、更なる他職種へのタスクシフティングの推進のための方策を講じた。

(1) 大学病院

① 高度急性期医療の推進

            • 高度急性期医療への更なる特化を図り、特定機能病院及び地域の中核病院として先進医療及び地域医療を推進した。
              【令和3年度診療実績】 〔括弧内は令和2年度実績〕

◎令和3年度数値目標 病床稼働率 90 %以上(10B・1E除く)

 平均在院日数12.0日以下、外来患者数1,237.4人以上/日 

平均在院日数(精神科病棟を除く。) 11.6日  〔11.7日〕

1日平均入院患者数         558.0人  〔478.1人〕

1日平均外来患者数         1,236.3人 〔1,117.6人〕

新入院患者数            15,901人 〔13,476人〕

病床稼働率(1E・10B除く)     87.8%   〔70.5%〕

手術件数              6,899件  〔5,591件〕

紹介率               86.2%   〔87.4%〕

逆紹介率              65.9%   〔83.0%〕


            • 適切な医療サービスが提供されるべき疾病として厚生労働省が定める5疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患)に対応した医療提供体制を構築するため、救急医療への対応体制の検討、増加する老人性疾患への急性期対応と地域医療機関との機能分担等を進め、高度急性期医療及び地域医療の中核病院としての診療体制・機能の充実を図るとともに、特にがん治療の推進に努めた。
              また、新設した脳卒中血管内科では、脳血管疾患の急性期診療の活性化に取り組んだ。
            • がんの集学的治療を推進するため、地域がん診療連携拠点病院として、がんセンター及び緩和ケアセンターを中心に、地域におけるがん診療の中核として、診療機能の充実を図るとともに、教育・研修体制の拡充に努めた。

              また、がんゲノム医療連携病院、小児がん連携病院として院内及び中核拠点病院との連携を強化した。

            • 大学病院のあり方検討プロジェクト会議において、急性期診療棟開設を見据えた病床の再編、大学病院本館等の跡地利用等について、検討を行った。
            • 臨床検査・輸血部及び病理部におけるISO15189の取得に向けて、公益財団法人日本適合性認定協会の審査を受検した。
            • 近隣の病院との機能分化を明確にし、患者急変時の対応、後方ベッドの有効活用等、地域の医療機関との連携強化による地域完結型医療体制の拡充、機能強化及び紹介患者数の増加を図るため、コア・ネットワーク病院を含む近隣医療機関等との緊密な連絡、支援等を行うなど、相互支援体制の構築及び連携強化に努めた。
            • 診療圏外からの紹介患者の増加を図るため、紹介数が少ない遠方の医療機関に対して先進的医療の紹介を行った。
            • 治療と仕事の両立支援については、両立支援の相談や要望に応えるとともに、支援患者等への継続的なサポートに対応すべく、企業等の産業医や産業保健スタッフとの連携体制の構築を行い、両立支援の相談件数の増加に努めた。
            • 医療機器については、引き続き計画的に更新した。併せて、新型コロナウイルス感染症防止対策用の医療機器については、新型コロナウイルス感染症関連補助金を活用し整備を行った。
            • 耐震工事及び当該工事に伴う病棟、関係各部門等の一時的移設・改修を円滑に行い、工事が完了した。
            • 令和4年の病院総合医療情報システムの更新を行い、厚生労働省規定の「ガイドライン」に準拠した二要素認証等を導入した。
            • 看護師教育の質の向上及び高度な看護サービスの提供を行うため、認定看護師の養成を図った。
            • 令和4年度診療報酬改定に対応するための情報収集を行った。
            • 病院機能評価中間報告及び次期受審に向けて、審査結果報告で課題として指摘された事項について順次対応を行った。
            • 医師の負担軽減に繋げるため、特定行為看護師(術中麻酔管理領域)を1名養成した。更に、次年度以降の養成(術中麻酔管理領域2名・外科術後病棟管理領域1名)を図るための準備を行った。
            • 医師事務作業補助者を12名増員し、医師事務作業補助体制加算15対1を取得した。
            • 準夜帯に勤務する看護補助者を各病棟に配置し、令和4年1月から夜間看護体制加算の算定を開始し、看護師の負担軽減を図った。
                ◆令和4年度数値目標 急性期看護補助加算 夜間100:1を満たす数を維持

            • 紙媒体などの記録を電子データ化するためのスキャンセンターの設置準備を行った。

② 安全かつ質の高い医療の提供等

            • 安全かつ質の高い医療の提供のため、職員への医療安全教育の更なる充実を図った。
            • 令和3年度から、インフォームド・コンセントの際に患者に対する説明についての満足度調査を行い、患者の意思決定支援の評価指標とした。
            • 医薬品の保管、流通、投与等に関する安全管理を厳格に行った。
            • インシデント・アクシデントレポートによる報告及び医療安全監査委員会による監査結果報告により明らかになった問題事項について、医療安全管理委員会において検証を行い、改善策を職員に提案し、医療安全対策の強化に努めた。
            • クライアント管理ソフトにより診療系端末への媒体等の接続を管理し、情報セキュリティの向上を図った。
            • 地域住民及び医療機関への情報提供のために、臨床指標の公開、診療実績・機能等の広報活動を進めた。
            • 高難度新規医療技術及び未承認新規医薬品等を用いた医療については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、病院倫理委員会での審議を経て適正に提供した。

③ 学生教育、初期臨床研修の実施等

            • 教育病院として新型コロナウイルス感染症防止対策を適切に行いつつ、学生の臨床実習を効果的に行うよう努めた。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に対応するため、一部実習の方法等の制限を行った。
            • 臨床研修医の確保に取り組むとともに、基幹型臨床研修病院として、地域医療機関と協力し、優秀な臨床研修医の育成を図った。

 【令和3年度マッチング率】 〔括弧内は令和2年度実績〕

医師     100%  11名 〔100%11名〕

歯科医師   100%  2名  〔100%2名〕

            • 産業医学修練医及び他大学からの専修医を積極的に受け入れた。
            • 新専門医制度4年目にあたり、着実に円滑な研修の実施及び定員に対するシーリングへの対応等を行った。

④ 経営基盤の確立

            • 病院長・病院担当常務理事などの病院経営管理者と各診療科との面談による具体的な成果目標立案と実行及び検証を行った。併せて令和3年度から新たに看護師長との面談も加え、病院経営向上への方策模索を行い、更に理事長、病院長、看護部長による病院内各部門の巡視と聴き取りによる病院経営上の課題や問題点抽出を図った。
            • 福岡県地域医療構想、診療報酬改定及び医療制度改正に的確に対応するため、算定要件・体制の整備、関係部署への周知等を行った。
            • 病院長が北九州市医師会の理事となり、市医師会とのより密接な情報共有や協力関係を構築し、地域医療の推進や新規紹介増などによる経営改善につなげた。
            • 大学病院と若松病院において、相互の機能等についての協力、補完を行い、運営・経営の改善に努め、両病院間での紹介、転院の円滑化を行った。
            • 臨床研究推進センターの体制整備により、治験受託件数の安定した獲得及び臨床研究全般の推進を図った。

【令和3年度実績】 〔括弧内は令和2年度実績〕

治験受託件数     26件〔14件〕


⑤ 患者サービスの向上

            • 令和2年度に導入した厚生労働省が推奨するオンライン資格確認の機能充実を図った。
            • 令和4年1月に導入した電子案内表示システム(一部準備中)により患者のプライバシーに配慮した番号での呼び出しに変更した。

(2) 若松病院

 ① 急性期医療及び在宅療養支援の推進

            • 若松区唯一の総合的な病院として、医師会及び近隣の医療機関等と緊密に連携し、患者紹介・逆紹介の促進を図った。
            • 所轄の消防署と情報交換を行い、救急車を積極的に受入れるなど、地域と密着した断らない医療を目指し、地域の中核的病院として、急性期医療を推進した。
            • 病棟医長と病棟看護師長との連携を強化し、入院時期や退院時期並びに一般病床と地域包括ケア病床間の転棟・転室等、早期調整を行うことで効率的な病床運用を図った。
            • 在宅療養支援を推進するため、訪問看護事業については対象患者の拡大を図り、設定した予算目標を達成した。(実績:48,723千円 予算:44,400千円)
            • 老朽化した医療機器の計画的な更新を引き続き実施するとともに、基幹設備の更新に係る財源確保について検討を行い、急性期病院としての機能強化を図った。

【令和3年度診療実績】〔括弧内は令和2年度実績〕

◎令和3年度数値目標 病床稼働率 90.0 %以上(3W除く)

 平均在院日数 16.0日以下、1日平均外来患者数335人/日

平均在院日数             12.8 日      〔12.6日〕

1日平均入院患者数         108.8 人    〔100.9人〕

1日平均外来患者数         324.6 人     〔303.3人〕

新入院患者数            2,893 人    〔2,700人〕

病床稼働率              72.5 %※   〔67.3%〕

※コロナ受入に伴う空床を考慮せず150床運用とした場合

手術件数                   1,489 件   〔1,401件〕

紹介率                    48.7 %    〔49.9%〕

逆紹介率                   29.4 %    〔34.9%〕


② 安全かつ質の高い医療の提供等

            • 急性期病床と地域包括ケア病床において、安全で質の高い医療を提供し、患者サービスの向上を図った。
            • 新型コロナウイルス感染症などの感染症防止対策の更なる充実を図り、行政との連携を強化し、地域医療への貢献を果たした。

③ 学生教育の実施

教育病院として、学生の臨床実習を効果的かつ円滑に実施した。

④ 経営基盤の確立

            • 若松病院の確固たる経営基盤を確立するため、法人・大学病院と連携し、新たに「若松病院の運営・経営改善プロジェクト」を発足させ、収益向上のための諸施策等について検討を行った。
            • 福岡県地域医療構想及び診療報酬改定等を踏まえ、地域からの要請に応えることのできる病床機能のあり方について検討を進めた。
            • 地域のニーズに合った診療科への常勤医の配置等、診療体制を検討し、外来及び入院診療の円滑な運営を図った結果、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けながら、外来患者の増加並びに病床稼働率が向上し、前年度及び前々年度に比べて増収となった。
            • 若松病院の認知度を向上させるため、若松病院長が若松区内の医療機関を訪問するとともに、若松区内の医療機関及び自治会に定期的に病院案内等を送付するなどの広報活動を行い、若松病院の認知度の向上に努めた。

              また、患者サービスの向上及び外来患者の確保対策の一環として、若松病院周辺を回るシャトルバスの運行を開始した。

            • 経費削減のため、ベンチマークを用いた価格交渉による診療材料費の節約や、業務委託費の見直し等を行った。
            • 若松区医師会との意見交換会を2月、3月にそれぞれ開催し、地域医療機関からの要望や意見を取り入れた病院運営向上のための諸施策についての検討を開始した。 

 5 社会貢献  

      • 新型コロナウイルス感染症に関連した北九州市、福岡県医師会等の依頼に協力するとともに、地域医療への貢献を行った。
        また、北九州市で開催された世界体操等における支援のほか、産官学連携事業として、ブライダル事業者、飲食店、イベント開催事業者等に各種の感染防止マニュアルの監修をはじめとする感染症防止対策を実施した。
        併せて、若年層のワクチン接種を促進させるため、学生のワクチン接種者のインタビューをYouTubeで配信し、北九州市の広報に協力した。

【令和3年度 新型コロナウイルス感染症防止対策にかかる社会貢献実績】

(令和2年度からの累計)

北九州市PCR検査センター派遣         50 名 (累計361名)

北九州市コロナワクチン集団接種       456 名 

北九州市エッセンシャルワーカーワクチン接種   11 名

北九州市中小企業者対象職域接種         86 名

北九州市大学連携職域接種          153 名

介護施設等への支援               7名 (累計126名)

宿泊療養施設への出務            376 名 (累計499名)

他の市町村へのワクチン接種           8名


      • 東日本大震災・福島原発事故に関連した作業を行う労働者の健康支援活動を引き続き実施した。  

【令和3年度 福島原発事故に関連した作業を行う労働者の健康支援活動実績】

令和3年度 23名  延1,250名(R4.3.31現在)


      • 自然災害などの大規模災害の現場において、初期対応者となる警察、消防署、自衛隊、医療従事者などを対象に、基本的な医学知識、対応策を教育する大規模災害対応講習会を対面とオンラインで実施した。

【令和3年度 大規模災害対応講習会実績】〔括弧内は令和2年度実績〕

令和3年度 開催回数 1回 55名(対面参加23名、オンライン参加32名)〔21名:オンライン〕


      • 医学をテーマにした市民公開講座については、新型コロナウイルス感染症に対する市民の安全確保を考慮して中止となった。若松病院においては、地元自治体と連携し、地域住民に対する情報発信を推進する計画を立案したが公開講座の開催には至らなかった。
      • 本学におけるSDGsの取組を整理し、すでに取り組んでいるSDGsの12の目標について、ホームページで紹介した。
      • 平成17年度以来、介護事業の運営を進めてきたが、度重なる介護保険制度の改正、ニーズの変化、施設の老朽化等を総合的に考慮した結果、将来に亘る事業の継続は困難であると判断し、令和3年12月末をもって廃止した。

 6 業務運営

(1) 新型コロナウイルス感染症対応

 新型コロナウイルス感染症に適切に対応するため、国、福岡県及び北九州市からの要請を受けて本学の取組や周知を迅速に行うとともに、医療従事者へのワクチン接種及び学生、職員を対象に職域接種をそれぞれ3回実施した。

(2) 長期ビジョンの取組の開始

 新たに策定した「産業医大未来構想 2040」について周知を行い、20年後の本学の到達点を定め、取組を開始した。

(3) 第3次中期目標・中期計画の現況評価と第4次中期目標・中期計画の策定

 第3次中期目標・中期計画(平成28年度~令和3年度)については、5年目終了時の点検・評価を行い、外部評価委員会による外部評価を受け、本学の現状と課題を認識し、長期ビジョンを踏まえた第4次中期目標・中期計画(令和4年度~令和9年度)を策定した。

(4)  北九州市との包括連携協力協定の遂行

 北九州市との包括連携協力協定に基づき、北九州市と緊密に連携することにより、双方の資源を有効に活用した協働による活動を推進した。

(5) 組織・人事及び財務・経営管理

        • 本学の国際的な地位をより一層向上させるため、「国際交流センター」を「国際センター」に改組する準備を行った。
        • 令和4年度から医学部に新たに設置する「感染症科学」講座の設置準備を行った。
        • 大学病院及び若松病院の医療安全に係る取り組みを内外に示すとともに、更なる医療の質向上を目指すため、「医療安全管理部」の名称を「医療の質・安全管理部」に変更した。
        • 大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、当該活動に関係する教職員の能力及び資質を向上させるためのスタッフ・ディベロップメント(SD)を実施した。
        • 情報管理センターにおいて、教育研究支援、情報発信に必要なICT基盤の充実を図った。
        • 四半期ごとの財務状況及び毎月の両病院診療実績の把握と分析による経営管理を行い、現状を認識するとともに、原因把握や具体的な改善を行った。

          また、急性期診療棟の建設計画・運営を勘案した資金計画の策定と予算管理を継続して行うとともに、第4次中期目標・中期計画期間中の大学運営全般に係る財政見込みを作成した。

        • 非業務執行理事及び監事と責任限定契約を締結した。
        • 理事会の決議に基づき、役員賠償責任保険の加入を更新した。

(6)  自己収入及び外部資金の確保

        • 新型コロナウイルス感染症防止対策に係る寄付の受入れを継続し、環境整備及び感染症防止対策等を着実に実施した。
        • 新たに急性期診療棟建設に係る寄付事業を創設し、令和3年8月から寄付金の募集を開始した。

【令和3年度 急性期診療棟寄付金実績】

2億 3,515万 7,070円


        • クラウドファンディング事業の成果物として、「手術までの過ごし方、術前から始める準備」について、ガイドブックと動画を作成し、北九州市政だよりを含め広く学外に紹介した。
        • 開学40周年記念事業を着実に実施した。
        • 大学運営基金及びその他の運用資金について、学外の専門家(資金運用諮問委員)の意見を参考に運用方針を定め、これに沿って安全性を重視しながら最大限の利回りを確保する運用を行い、自己資金の確保を図った。
        • 科学研究費助成事業等各種研究資金の募集情報の周知、応募のための支援及び適正な執行の確保等に努めた。

【令和3年度科学研究費採択実績】

令和3年度     科学研究費助成事業の新規採択件数 48件

(新規採択率 24.5% 新規申請率 43.4%)

科学研究費助成事業(研究分担者含む)

240件 242,239(千円)〔200件 216,539千円〕


令和3年度     科学研究費助成事業以外の新規採択件数15件

(新規採択率53.6%)

厚生労働科学研究費補助金(研究分担者含む)

33件 114,937(千円)〔40件 153,222千円〕

労災疾病臨床研究事業費補助金(研究分担者含む)

16件 135,874(千円)〔18件 111,082千円〕

その他競争的資金 4件6,300(千円)〔5件 16,645千円〕


        • 産学連携活動の推進による外部研究資金の一層の獲得を図り、産業医学に関する研究活動の振興並びに知的財産の更なる創生及び戦略的・効果的活用に努めた。

(7) 魅力ある職場づくり

        • 大学全体において提案の気風を根付かせるため、提案制度を継続して実施し、業務(時間)の省力化、効率化、収益増、経費削減、本学の活性化を促進し、大学運営等の改善に取り組んだ。

【令和3年度 提案件数実績】〔括弧内は令和2年度実績〕

令和3年度 提案件数 47件 〔43件〕

        • 業務の効率化及び平準化を進めるとともに、時間外労働が多い部署について、管理者に対し、改善を促した。また、労働安全衛生マネジメントシステムに基づく、産業医等による面談やきめ細やかな個別面談を実施した。
        • 働き方改革関連法の施行に対応し、令和2年度から施行された雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に係る制度を引き続き円滑に運用した。
        • 令和3年4月施行の高年齢者雇用安定法に対応し、70歳までの継続雇用の制度を整備した。
        • 医師の働き方改革を進めるため、長時間労働を削減するための医師労働時間短縮計画を策定するとともに、更なるタスクシフティングを推進するための検討を行った。
        • 男女共同参画推進センターにおいて、福岡県医師会と共催で学生交流会及女性医師交流会を開催したほか、男女共同参画の推進に係る諸施策の着実な実現に取り組んだ。
        • 本学へのアクセス向上のため、大学構内へのバスの乗入れについて前年度に引き続き働きかけを行い、令和3年度末に1日当たり103便の乗入れとなった。

(8)  情報発信の推進

        • 本学の教育・研究・診療の状況や成果に関し、引き続き積極的に情報公開・発信を行い、本学の社会的責任を果たすとともに、認知度の向上を図った。
        • 令和2年度に開設したYouTube「産業医大オフィシャルチャンネル」及びリニューアルした本学のホームページを活用し、卒業生及び臨床医にまた、新型コロナウイルス感染症対策のため卒業式について、YouTubeのLive配信を行った。

【令和3年度 ホームページ閲覧件数、YouTube閲覧実績】〔括弧内は令和2年度実績〕

ホームページ閲覧件数  6,582,889件 〔1,568,270件〕

YouTube閲覧      47,433件 〔  32,202件〕 

 

(9)   評価の充実及び活用

        • 令和2年度に受審した公益財団法人大学基準協会による大学認証評価結果を受けて、その結果を公表するとともに、同協会からの指摘事項に対して改善及び検討を行った。
        • 令和4年度の一般社団法人日本医学教育評価機構(JACME)による医学教育分野別評価の受審に向けて、医学教育改革推進センターを中心に自己点検評価報告書の作成を行い、必要な対策を進めた。

(10)   施設整備

        • 大学病院本館の耐震化について、計画どおり令和3年度に工事を完了した。
        • 急性期診療棟の建設工事に着手した。
        • 老朽化した基幹設備について、更新計画に基づき、非常用発電所の更新工事及び省エネルギー機器の導入を進めるなど、効率的な設備の整備を実施した。

(11)  コンプライアンスの徹底

 職員のコンプライアンス意識の定着を図り、法令及び学内規則等を遵守するとともに、高い倫理観と良識をもって行動し、コンプライアンスを遵守するための取組を行った。

        • 学内規則、ガイドライン等の遵守及び情報セキュリティ対策(講習会の実施・運用マニュアル等の充実、不正アクセス対策の強化等)により、引き続き個人情報の適正な取扱い及び情報の盗難、漏えい等の防止に努めた。
        • 科学的根拠に基づく安全かつ質の高い医療を提供し、適切なインフォームドコンセントを実施した。
        • 研究活動及び研究費使用に係る不正防止について、コンプライアンス教育による教職員の意識向上を図るなど、組織的な取組を推進した。

          また、研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインの改正に伴い、不正使用防止について全教職員に向けた啓発活動を行うなど対策を強化した。その結果、研究活動及び研究費使用について不正と認められた事案はなかった。