職業性腫瘍学 研究内容

 

 

 1.  環境変異原物質の分析
 2.  酸素ラジカルによる発がん機構
 3.  DNA損傷の分析による化学物質のリスク評価

 

 産業医学分野では、化学物質による健康影響がテーマの一つとなっている。厚生労働省は、職業がんの予防を目的として、労働安全衛生法の中に、世界に先駆けて、変異原性試験(Amesテスト)を採り入れた。その後、医薬品、農薬、化粧品あるいはそれらの材料となる新規化学物質の申請登録に際しても、安全性を評価するための毒性試験法ガイドラインが制定され、そのなかで変異原性試験データの提出が義務付けられるようになった。しかし最近では、ベンゼンやアスベストに代表されるAmes 試験陰性の発がん性産業化学物質も多く知られるようになり、その対策が注目される。Ames 試験陰性の発がん物質の多くは、生体内での活性酸素生成を介して酸化的にDNAを損傷することがわかってきた。さらに、環境化学物質による外因性活性酸素に加えて、ライフスタイル等により生じる内因性活性酸素が、がんや生活習慣病に密接に関わるとされる。8-OH-dGは、多くの発がん物質等により発生する活性酸素・フリーラジカルが、核酸塩基と反応して生じる。産業医学分野で、化学物質による健康影響を評価する際、有効な生物学的マーカー(バイオマーカー)の存在が欠かせない中、8-OH-dGは、酸化ストレス評価のもっとも優れたバイオマーカーの一つと考えられる。実際に8-OH-dGは、疫学研究の指標として用いられる事が多い。当研究室では、産業化学物質の発がんリスク評価、健康維持のためのライフスタイルの開発などを目的に、尿中8-OH-dGの分析を行っている。近年、工業利用が急速に拡大しているナノマテリアルは、その毒性発現機構の1つに酸化的損傷が挙げられている。ナノマテリアルの健康影響の1つの指標として、組織DNAや尿中の8-OH-dG値が評価項目として用いられている。


 

 最近、DNAのメチル化異常が、癌をはじめとする多くのヒト疾患の原因に関わっていることが知られるようになった。しかし、その発現機構については不明な部分が多く、解明が急がれている。当研究室では、DNAのメチル化が、化学物質によって起きることを見いだした。疾病に関わるメチル化異常の第一段階の機構として注目される。さらに研究が進めば、これまで発症原因が明らかでなかった職業性疾患の予防につながる可能性が期待される。

 

 


  キーワード

1

 酸素ラジカル

2  

 8ーヒドロキシグアニン

3

 発がん

4

 DNAメチル化

5

 エピジェネティクス

                                                                                          【文責:職業性腫瘍学、更新日:2013年9月5日】


 

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