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令和3年度産業医科大学入学式が挙行されました

令和3年度 入学式 が4月6日(火)10時から挙行されました。

学長式辞は、以下のとおりです。

令和3年4月6日

令和3年度入学式 祝辞 

 入学おめでとうございます ー考えて理解するー

学長 尾辻󠄀 豊

 産業医科大学医学部ならびに産業保健学部看護学科・産業衛生科学科に入学された新入生の皆さん、本当におめでとうございます。心から歓迎申し上げます。産業医科大学は昭和53(1978)年に建学され、43年の歴史を重ねてきました。現在では、産業医学・産業保健学の分野で日本をリードする大学となっています。大学で過ごす期間は皆さんが学生から社会人へ大きく変貌・成長するためのとても大事な過渡期です。職員全員が皆さんの学生生活が充実したものとなるよう出来得る限りの支援をしていきます。

入学式1 「入学おめでとうございます」と申し上げたばかりですが、入学は単なるスタートです。皆さんの人生における目標は、卒業し、資格を得て、そして何をなすか?です。道のりは長いですが、当面の目標は進級や卒業でしょう。これには膨大な勉強が要求されます。私自身心臓内科医ですので、医学部の勉強や医師国家試験の話に偏ることをお許し下さい。
 看護学・保健学・衛生科学も同じですが、医学の勉強もとても大変です。解剖学・生理学・数々の基礎医学、内科・外科・数々の臨床医学に加えて本学独自の産業医学を合わせると高校3年間の教科書の10倍ぐらいの分量を勉強します。膨大な範囲の勉強は、頭脳が良いだけでは全く不十分で、根気強い勉強の継続が必要です。また、記憶や暗記では上手く行きません。膨大な情報を理論的・系統的に統合することが必要で、「考えて理解する」この事が必須です。私も含め人間はしばしばいろいろな物事を考えずに、理解せずに、表面的に処理しています。例えば皆さんは人間の心臓から出る血管・動脈の壁が心臓に帰る静脈の壁よりも厚いことを知っていると思います。動脈の中の圧は静脈圧より入学式2も高いこともご存じでしょう。「なぜ動脈の壁は厚いのか?」を理解している人は少ないです。しばしば、「高い動脈圧に耐えるように動脈壁は厚い」、すなわち「圧が高いから壁が厚くなる」と思っている人がいます。事実はそうではありません。例えば足の静脈を最も大きな動脈と心臓表面の動脈のバイパス手術に使い、術後には静脈の壁が動脈圧にさらされます。しかし、この静脈は壁が薄くても何年も持ち、高い圧で破れることは皆無です。厚いゴムでできた直径5㎝の風船を10㎝に膨らますと中の圧がとても高くなります。しかし、薄いゴムでできた直径5㎝の風船を10㎝に膨らましても圧はあまり高くなりません。心臓から毎秒70㏄の血液が厚い壁の動脈に送り込まれますが、この時に先ほどの厚いゴム風船と同様に動脈圧は高くなります。しかし、毎秒70㏄の血液が薄い壁の静脈に送り込まれても静脈圧は低いままです。この結果、高い圧の動脈から全身を通って低い圧の静脈へ血液がスムーズに流れます。血液を入れた時にその中の圧を高くするために動脈の壁が厚くなっている、すなわち「中の圧を上げるために壁が厚く設計されている」のです。同じことは静脈にも言えます。「中の圧を上げないために壁が薄く設計されている」のです。皆さんは、「動脈壁が厚い、静脈壁が薄い、という知識」はあったと思いますが、理解していましたでしょうか?このように血管壁の厚みという解剖学的構造が血管内の圧に与える影響という生理学的特性を理論的・系統的に理解すれば、もはや動脈壁と静脈壁の厚みの差を忘れることは生涯ありません。

 理解の重要性は物事への理解に留まりません。自分自身を、そして自分の勉強方法を理解して下さい。私は勉強法には「子供の勉強法」と「大人の勉強法」があると考えます。「子供の勉強」は、「人から与えられた項目を全般に勉強する事」です。受動的とも言える勉強です。おそらく皆さんも私自身もこれまでの勉強の大部分は子供の勉強だったと思います。例えば皆さんは英語の勉強をなぜしたのでしょう?それは文科省が「外国語の勉強は英語を中心とする」という方針をとっているからです。自分で選んだのではなく、与えられた項目の勉強であり、ある意味子供の勉強です。子供の勉強はもちろん良い事ですし、今後も必要です。 入学式3これに対し、大人の勉強は次のようです。1番、まずは、「自分の実力を十分に分析し、自分に何が足りていて、何が不足しているのか?明らかにすること」です。英語であれば、ボキャブラリーは十分か?文法を知っているか?読解力は?書く能力?ヒアリング?話せるか?等々を分析し、自分の実力を知る。そして自分の目標に対して、自分に実力不足があるのか?あるとすれば、それはどの部分なのか?を明らかにします。2番、次に、それを強化するためにはどのような勉強が効果的なのか?検討し、3番、勉強する領域と勉強方法を決めます。4番は、その勉強の実践です。そして、1番に戻り、その勉強に効果があったのか?検証し、次々に勉強法を改善して行きます。すなわち大人の勉強法は、「自分自身の実力と目標を知り、自分にあったオーダーメード勉強法を編み出し、それを選択し、実行し、さらにその結果を検証し、さらにさらに勉強法を工夫するというPDCA, Plan-Do-Check-Actサイクルで勉強する」、一言でいえば「自分は何をどう勉強すれば良いのか?十分考える」ということです。能動的で戦略的勉強法です。これを行うことで皆さんは大きく成長します。入学式4
 大学での勉強は厳しいです。卒業後の資格試験、例えば医師国家試験も今後厳しくなります。2035年前後に医師不足は解消されます。新設医科大学や外国からの国試受験生が確実に増えますが、必要数以上の合格者は想定できません。医師不足の現在、国試合格率は90%前後ですが、今後下降すると思われます。資格試験も厳しいのですが、真面目に勉強するかどうかが合格するかどうかを決定します。進級や卒業も同じです。産業医科大学には真面目に勉強する学生が多く、本学の国試合格率はこの5年で94.5%と全国トップクラスです。開学以来、本学の卒業生は全員国試に合格して来ました。皆さん、ぜひ毎日、真面目に勉強してください。そして、子供の勉強に加えて大人の勉強を取り入れてください。

入学式5 皆さんは社会から必要とされています。産業医学・産業保健の分野は発展を続けています。2019年に施行された働き方改革の中でも産業医の機能が強化されました。働く人々の健康を守り、さらには病気を持ちながらも就労に意欲のある人々を支援する政策です。しかし、産業医や産業保健職は大きく不足しています。常勤の産業医が必要な大規模事業場は2,000カ所を超えますが、常勤産業医は1,200人しかいません。複数の常勤産業医を必要としている事業場も多いです。先程、全国の医師不足が2035年に解消されると言いました。これは、医師が現在8%不足しており、2035年には解消されるという意味です。これに対し、常勤産業医の不足は40%を超えます。皆さんは一般の医師よりもずっと長い間必要とされ続けます。
 産業医科大学は建学43年の若い大学であり、現在急激な発展の最中です。産業医学・基礎・臨床医学研究や教育が高く評価されています。研究論文の引用件数は世界1位です。看護師国試合格率は直近の5年間で99.7%と最高水準です。保健師国試合格率も5年間で97.8%と最高です。産業衛生科学科(環境マネジメント学科)の上場・非上入学式6場大企業や公的機関への輝かしい就職も内外で高く評価されています。本学の産業生態科学研究所は、世界保健機構WHOの指定協力機関です。大学としては全国で11施設しかありません。産業医科大学病院は、癌その他の高度診療で北九州地区を代表しており、2年後には大規模増改築でさらに最先端の診療ができます。患者さんの就労を支援する両立支援診療は全国のモデルとなりました。これらの結果、イギリスタイムズ社のTimes Higher Education, THE世界大学ランキングで2020年に産業医科大学は、日本の全大学の中で5位、日本の私立大学で1位、九州・沖縄地区で1位にランクされました。皆さんの将来はとても明るいです。

 皆さんにはこれから、大いなる試練・冒険・失敗、そして大いなる成功の喜びが待っています。不安があるのは当たり前です。チャレンジあるのみです。どんな時でも、本学の教職員は皆さんを支援することを忘れないでください。皆さんの人生に幸あれ!充実した学生生活を送ってください。これを持ちまして皆様へのお祝いの言葉とさせていただきます。