平成30年度卒業式が3月5日に挙行されました

 

 平成30年度 卒業式 が3月5日(火)10時から挙行されました。

 

 学長式辞は、以下のとおりです。

 

  

平成31年3月5日

平成30年度 卒業式 式辞 

学長 東 敏昭

 

 

平成最後の今年、本学を巣立つ皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、この日を待ち望んでおられたご家族の皆様方に、産業医科大学の教職員を代表して心からお慶びを申し上げます。卒業式③.jpg

皆さんには、これから、それぞれ社会で活きる資格を持って、様々な場所、環境、組織に入り、職業人としての研鑽する日々が待っています。入学時、皆さんは全国から産業医科大学で学ぶためにこの地に集まり、本学で学生生活を共にしてきました。同級生同士は勿論のこと、先輩、教職員、地域社会との関係の多くが、人生における新たな出会いであり、体験であったと思います。大学在学中に学んだ専門的知識や技術に加え、経験や人間関係の全てが、これからの人生で価値をもつ財産です。私は、皆さんの学生時代がとても有意な時期であったと信じますが、それにも増して、より充実した幸せな時期を、これからこそ持っていただきたいと思います。大学生活で得た財産を大いに活用して欲しいと考えます。

皆さんが生まれ育った平成の時代は、日本が世界の中で大きく輝いていた時代を過ぎ、人口の高齢化もあいまって長い低迷期を迎えた時代です。湾岸戦争、阪神大震災、地下鉄サリン事件と続き、皆さんが学校に通う時期には、世界ではリーマンショック、シリア内戦の勃発と激化、テロの頻発、日本では東日本大震災、熊本地震、北部九州、関東豪雨などの大きな事件や災害がありました。新興国の台頭の中、国際的には閉鎖性や対立の潮流があります。長年にわたり築き上げきた秩序や価値体系が変わらざるを得ない激動の時期といえます。

皆さんはいわゆる「手に職を持つ」人たちで、景気動向による影響を受けにくい側面があると思いますが、自身の研鑽、努力を怠れば、AI、生命科学などの科学技術の急速な進歩、産業構造や社会制度の変化に対応できなくなる危惧があります。これからの人生では安定の保証はないことを覚悟し、本当の専門家として、環境の変化にも科学技術の進歩にも遅れることなく、専門職、職業人として社会に受け入れられるよう、これまでにも増して研鑚に励んでください。

皆さんが社会を支える立場になる日本は、世界で最も高齢化が進み、少子化問題に直面しています。これに対応する社会制度の未整備や、産業の競争力の低下の中でも、成熟した民主国家である日本が、どのように課題を克服し、活力を高め、多くの国民が安心して幸福感をもって生活できる社会を創っていくか、世界の国々が大きな関心を寄せています。本学卒業生は、医師や看護師、保健師、作業環境測定士、衛生管理者などの国家資格を取得していますが、働き方改革、活力創造が求められる今、最も必要とされ、活躍が期待されている分野です。

卒業式②.jpg医学部卒業生には、研修医の時代は、恥をかいてもよい学びの時期として、どんなことにも積極的に取り組んでほしいと思います。看護学科卒業生には、社会の需要と期待の中、職業人としてキャリアを重ねる上でのメンタル面の強さと、よき相談者を持つことに留意してほしいと思います。環境マネジメント学科卒業生には、働くためのより良い環境を創る担い手として、変化に対応する柔軟さを持ち、研鑽を続けてほしいと思います。皆さんはまだ巣立ったばかりです。常に謙虚で我慢強く、また、今までに培った人間関係や新たな職場で課せられた課題について相談できる相手を持ってください。近い将来に訪れる、大きな変化は新たな課題を生みます。個人としても、職業人としてもこれに対応できる不断の努力が必要になります。難しい課題は一人で抱えこまず、産業医科大学が、この地にあって、常に君たちの傍にいることを忘れないでください。大学もそのための努力を続けていきます。
  本学は改めて言うまでもなく産業医学を専門とする大学です。特に学外では、産業医学、産業保健、環境医学分野への貢献が期待され、また評価されています。大学の中にいると、社会が大学をどのように見ているかという視点を失いがちですが、産業医科大学の卒業生が産業医学・産業保健の場で活躍するのは、外部の目からは極めて自然に映り、素直に評価されやすいためです。一方で、特色や強みを持ち続けるためには、常に社会の変化に対応する進化を模索し、その価値を高める必要があります。医科大学は、構成員の研究や診療面での業績や社会貢献等により評価されますが、卒業生の活躍はそれにも増して大切な視点です。大学の評価が上がれば優秀な学生が集まるという正の循環につながります。卒業生自身が社会で活躍する上でも母校の評価は大切で、評価が高ければ活躍範囲と機会が広がります。皆さんが活躍すればするほど、大学と卒業生両者がその果実を得るという循環関係にあることを心にとめておいてください。
   本学は昨年開学40周年を迎えました。卒業生が社会で活躍し始め、社会的地歩を得た今、日本の産業医学・産業衛生ならびに産業保健制度は、産業医科大学の輩出した人材なくしては語れません。現在、700名を超える卒業生が産業医学・産業保健の実務の分野で活躍しています。また、卒業生からの教授就任数は、医学部卒業生では現在までに、合計63名を数え、比較的後発の医科大学にとって、この数は決して少なくありません。すでに教授も輩出している専攻科に加え、産業保健学部卒業生からも新たな教授の誕生が期待されます。卒業式①.jpg

 最近報道されている、企業における多くの不祥事で、背景にある制度や環境に注目が集まっていますが、根本は人間として独立し、人間のあるべき姿を真摯に考え、凛として行動する人間力が弱くなっていることが問題と考えます。他者に対する思いやりに乏しく、不自然なこと、問題のあることを正す勇気の欠如です。幸い、皆さんは働く人への健康阻害要因を正すという社会から期待される職業につきます。常に「人間愛に徹し、哲学する医師・産業保健専門職たれ」とする建学の精神を、心に持っていてほしいと思います。これは、一人の人間として、常に自らの理性と倫理観を持ち、社会や組織に悪しき流れがあっても、これに流されることなく凛として立つあり方を指しています。
   日本の経営者の多くが共感する経営学者のピーター・ドラッガーは、プロフェッショナルとは、ノンイデオロギー、つまり思想ではない、流動性、すなわち国境なく活躍できる普遍性、自律的「コミュニティー」を持ち相互評価、研鑽、後継者を育成することを条件としています。特定の職務を職業(生業)としていることと同等ではなく、何よりもその使命に真摯に向き合い努力することが重要であることが求められるとしています。紀元前5~4世紀の古代ギリシャの医師ヒポクラテスも、彼が残した、「人生は短い(Vitabrevis)、されど、技術・芸術は永遠である(Arslonga)」という有名な言葉で始まる箴言の中で、これに続く言葉として「好機は逃げやすく( O c c a s i opraeceps)、経験はあまり信用できず(Experientiafallax)、そして、判断するというのは最も難しい(Judicium difficile)」としています。
   卒業式④.jpgいずれも、「人間愛に徹し、哲学する医師・産業保健専門職たれ」とする建学の精神に繋がる言葉です。
   最後に、皆さんの大学生活は、保護者や教職員ばかりでなく、修学資金、大学への補助金という形で、経営者や働く人たち、社会からの支援によって支えられてきました。そこには、働く人の健康を守り、働く人を支援するという形で社会に貢献することへの期待が込められています。常に「人が働く上で必要な健康に関わる支援」について考え、寄与するためにいかに行動するかということを念頭においていただければと思います。皆さんの大学生活は、誰もが経験できるものではない「有難い」ものです。産業医科大学を卒業した職業人あるいは学究として、何を成すべきかを常に思い起こしてください。人との繋がりを大事にすること、小さなことですが、まずは恥ずかしがらずに挨拶をすることも大切です。
   折尾は、産業医学・産業保健の都会、人材育成の拠点と評した人がいます。世界で唯一の産業医学・産業保健を中心にすえた本学への評価は、本学構成員のみならず国内外での卒業生の活躍にかかっています。働く人々のために、一人でも多くの卒業生が、本学の目的である産業医学・産業保健の発展に寄与してくれることを期待して、記念すべき日の餞の言葉といたします。

                                                                                                               

                                                                                                                                                              以上

 

 

 

 

 

 

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