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令和3年度卒業式が3月4日に挙行されました

 令和3年度卒業式 が3月4日(金)10時から挙行されました。

 学長式辞は、以下のとおりです。

令和4年月4日

令和3年度 卒業式 式辞学長式辞.JPG
―学生と社会人の違い、いつまでも必要とされる人材になるために―

 学長  尾辻 豊

今年、本学を巣立つ皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、この日を待ち望んでおられたご家族の皆様方に、産業医科大学の教職員を代表し心からお慶びを申し上げます。皆さんが、健康に気を付けてさらに成長することを強く願っています。

卒業式.JPG 卒業生の皆さんは、これから社会人として歩んで行かれます。学生と社会人の違いについてお話をします。チームの中の一員としての行動が重要であるというお話です。私自身が循環器内科医ですので、話が医学に偏る点をお許しください。解りやすいように試験の点数でお話しします。皆さんはこれまで試験で60点以上をとることを求められてきました。90点とれるととても優秀な学生であり、 100点とれることは殆んどありません。この時に皆さんは一人で60点とることを求められました。これに対して社会人は100点を求められます。100人の患者さんの診療をして、60人には見事な診療ですが40人には診断ミスや手術失敗となると、医師失格です。100人全員に対して医学的に適切な診療が求められます。これは一人で行うのはほぼ不可能です。しかし、卒業後は一人で仕事をする訳ではありません。人の力を借りて良いのです。むしろ人の力を借りなければなりません。例えば、心臓病の症状で来られた患者さんが心臓病では説明できない貧血があり、消化管の病気が疑われる、自分ではどうして良いか?解らない。このような時には消化管に詳しい人の助けを借りることが出来ます。紹介すれば良いのです。心臓病は自分できちんとした診療を行い、自分で出来ないところは他人の力を借りてきちんと診療するよう手配する、これが社会人として求められる仕事です。これは、多職種間のチーム診療にも該当します。私自身、研修医の時、アルバイトに行き一人で当直をしました。その時、腹痛の少年が来てどうすれば良いか?解りませんでした。そばにいたベテラン看護師に「院長先生はこのような時にどのような処置をされますか?」と聞いて、難を逃れたことがあります。ニコッと笑って、いろいろ教えてくれました。そうしますと社会人としての仕事は、皆さん個人の能力はもちろんですが、皆さんがチームの中でどのように行動し、チームとして100点満点を達成できるか?すなわち人間関係の活用が重要となってきます。皆さんは、これまで勉学も一生懸命されていますが、同時に友達もたくさん作ってこられたと思います。学生生活を共にした同級生は勿論のこと、様々な出会いがあったと思います。修得した専門知識や技術に加え、これまでの経験や人間関係の全てが皆さんの貴重な財産です。今後も友達を大切にしてください。皆さんが今後社会人1年目を共にする同期の人達も生涯の友となります。どうぞ皆さん、お互いに支援し合って、頼り合って100点を出し続けてください。心配は要りません。必ずできます。先輩方も100点を出し続けています。

卒業式.JPG 次に皆さんの現在の価値です。本学卒業生は、医師や看護師・保健師・作業環境測定士・衛生管理者など、国家資格を取得します。いずれも働く人を中心として、人々の健康・活力を支える仕事です。今後も長く社会に必要であり、皆さんの将来はとても明るいです。本学は改めて言うまでもなく産業医学を専門とする大学です。特に学外からも、産業医学・産業保健学・看護学・衛生科学分野への貢献が期待され、また評価されています。イギリスにある最も権威ある国際的大学評価タイムズ・ハイヤー・エデュケーション【THE】ランキングで、本学は、日本の全ての大学でベスト10以内、全私立大学で1位、九州沖縄地区の大学で1位という評価を3年連続受けました。産業医学研究が臨床研究と並び極めて高く評価されました。さらに産業医科大学は世界保健機構WHOの指定協力機関に認定されています。日本の大学に13施設しかありません。産業生態科学研究所の産業医学研究がオンリーワンであるとWHOから高く評価された結果です。皆さんは、このような本学の輝かしい卒業生です。社会からとても期待されています。

卒業式.JPG 皆さんは現在とても輝いており、まさに朝日です。学問は日進月歩、社会は常に変化を続けますので、今後も研鑽を続けて社会から必要とされる人材であり続けてください。このために次のことが重要となります。1番は、人間性です。医療職・産業保健職では、患者さん・ご家族や労働者へのいたわりが最重要です。チームとして仕事をしますので、チームメンバーへの配慮が最優先です。2番は、科学的なコミュニケーション能力です。これは、患者さん・ご家族やチームメンバーへの表現力です。相手にとって解りやすい言葉で科学的に自分の考えを伝え、その方向に仕事を持っていくことが重要です。手術1つとっても、それがいくら最良の治療であり、技能を持っていても、患者さんが同意しないことには実行できません。3番は、医学・看護学・産業保健学の不完全性を理解し、建設的批判を含め深く考えることです。学問や常識を盲目的に信じてはいけません。エビデンスに基づくガイドラインに応じた診療が現在主流です。しかし、エビデンスは1つの病気の患者さんを単一のグループとして扱います。心筋梗塞予防のためにコレステロールが高い患者さんにスタチンと呼ばれる薬を処方しますが、スタチンにより良くなる患者さんが一定数いて、変わらない患者さんも多数いて、悪くなる患者さんも少数いて、全体のグループとしては良くなるというのがエビデンスです。さらに必要治療数という考えがあります。これは、何人にその治療・予防をすれば1人の患者さんの運命を改善できるか?という数値です。スタチンは、心筋梗塞発症を35%予防する特効薬とされていますが、必要治療数は40前後です。これは40人のコレステロールの高い患者さんにスタチンを使う時に、その中には将来心筋梗塞を起こす運命を持つ人が元々3人しかおらず、その中の1人を心筋梗塞発症から予防できる、しかし他の39人にはコレステロールが下がるだけで健康を増進させることはない、という内容を意味します。これがエビデンスの中身です。スタチンはごく少数の人には大きな利益をもたらし、大多数の人には利益を及ぼさない、この両方が真実です。現在の常識にも建設的な批判をし、自分が行っていることにすら疑問を持ち、何が正しいかを追求することが重要です。4番は、社会に貢献することです。社会の役に立たないと意味がありません。自分の仕事が患者さん・労働者・チームメンバーや社会に役に立っているか?要求されることは変化し続けますので、常に注意を払う必要があります。5番は生涯勉強を続けていくことです。仕事を大事に考えると生涯勉強は結果として付いてきます。仕事が周りの役に立つようにと考えていると勉強せざるを得ません。皆さんは、自然と勉強を続け、未来・将来へ継続的に自己改革していくようになると思います。最後の6番は、自分を愛するということです。自分の良いところ、自分が行ったことの良いところを、ほんの小さなことでも意識してください。例えば患者さんの質問に笑顔で応じた等で良いのです。自分の良いところを意識する、自分にポジティブになることは皆さんの健康につながります。

卒業式.JPG 皆さんは、まさに巣立とうとするルーキーです。本日の卒業が皆さんの目標ではありません。国家資格も目標ではなく、単なる手段です。卒業や資格取得はスタートであり、目標はまだまだ先にあります。卒業し、資格を得て、何をなすか?が皆さんの目標です。多くの場合は、社会や周囲の役に立つことが目標になると思います。皆さんは、失敗も多いでしょう。苦労も多いでしょう。しかし、成功の喜びはとても大きいです。患者さんが無事に退院されたときなどは「この仕事をして良かった」と強く思うことでしょう。常に謙虚で我慢強く、また、今までに培った人間関係を大事にし、さらに新たな職場での課題について相談できる相手を持ってください。皆さんの周囲の人への支援も積極的に行ってください。そして自分自身にチャレンジし、ポジティブになってください。難しい課題は一人で抱えこまず、産業医科大学が、この地にあって、常に君たちの傍にいることを忘れないでください。産業医科大学は、ファミリースピリットに溢れており、卒業生への支援を惜しみません。卒業生同志も強固な相互支援活動を行っています。卒業生の皆さんの輝かしい未来を信じて疑いません。諸君の大いなる活躍を心から強く願い、記念すべき本日の餞の言葉といたします。

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