令和4年度 卒業式が3月3日に挙行されました
令和4年度卒業式 が3月3日(金)10時から挙行されました。
学長式辞は、以下のとおりです。
令和5年3月3日
令和4年度 卒業式 式辞
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「思った通りやれば良い」―
学長 尾辻󠄀 豊

今年、本学を巣立つ皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、この日を待ち望んでおられたご家族の皆様方に、産業医科大学の教職員を代表し心からお慶びを申し上げます。皆さんが、健康に気を付けてさらに成長することを強く願います。
卒業生の皆さんは、これから社会人として歩んで行かれます。学生と社会人の違いについてお話をします。チームの中の一員としての行動が重要であるというお話です。私自身が循環器内科医ですので、話が医学に偏る点をお許しください。解りやすいように試験の点数でお話しします。皆さんはこれまで試験で60点以上をとることを求められてきました。90点とれるととても優秀な学生であり、100点とれることは殆んどありません。この時に皆さんは1人で60点とることを求められました。これに対して社会人は常に100点を求められます。100人の患者さんの診療をして、60人には見事な診療ですが40人には診断ミスや手術失敗となると、医師失格です。100人全員に対して適切な診療が求められます。これを1人で行うのは不可能です。しかし、卒業後は1人で仕事をする訳ではありません。人の力を借りて良いのです。むしろ人の力を借りなければなりません。例えば、心臓病の症状で来られた患者さんが心臓病では説明できない貧血があり、消化管の病気が疑われる、自分ではどうして良いか?解らない。このような時には紹介すれば良いのです。自分で出来る診療は自分で行い、出来ないところは他人の力を借りてきちんと全身の診療をする、これが社会人として求められる仕事です。これは、多職種間のチーム診療にも該当します。私自身、研修医の時、1人で当直をしました。その時、腹痛の少年が来てどうすれば良いか?解りませんでした。そばにいたベテラン看護師に「院長先生はこのような時にどのような処置をされますか?」と聞いて、難を逃れたことがあります。ニコッと笑って、いろいろ教えてくれました。社会人としての仕事は、皆さん個人の能力はもちろんですが、皆さんがチームの中でどのように行動し、チームとして100点満点を達成できるか?が重要となってきます。皆さんは、これまで友達をたくさん作って来られたと思います。学生生活を共にした同級生は勿論のこと、皆さんが今後社会人1年目を共にする同期の人達も生涯の友となります。どうぞ皆さん、お互いに支援し合って、頼り合って100点を出し続けてください。心配は要りません。必ずできます。先輩方も100点を出し続けています。
次に皆さんの現在の価値です。本学卒業生は、医師や看護師・保健師・作業環境測定士・衛生管理者など、国家資格を取得します。いずれも働く人を中心とした、人々の健康・活力を支える仕事です。今後も長く社会に必要であり、皆さんの将来はとても明るいです。学外からも、産業医学・産業保健学・看護学・衛生科学分野へのこれまでの本学卒業生の貢献が評価されています。国際的大学評価タイムズ・ハイヤー・エデュケーション【THE】ランキングで、本学は、日本の全私立大学で1位という評価を4年連続受けました。本学産業生態科学研究所は世界保健機関WHOの指定協力機関に30年以上認定され、とても光栄なことです。皆さんは、このような本学の輝かしい卒業生です。
皆さんが今後も輝き続けるには、勉強・研鑽しかありません。この時に重要なポイントが2つあると思います。1つは、「どの分野やテーマで頑張るか?」を主体的に選ぶことです。これは、社会情勢の把握が必要です。例えば日本では高齢化が進みます。そうしますと、高齢者の病気、足腰の弱るフレール・骨折・脳卒中・認知症等々の重要性が増えて行きます。産業保健の分野では、高齢労働者の健康をどう守るのか?がより重要になります。また、増加する一方の化学物質の管理がとても重要となります。皆さんはこれまで殆どの場合、受け身の勉強をしていると思います。例えば皆さんは全員英語の勉強をしています。This
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penを話せない人はいないでしょう。皆さんは外国語の勉強をすることを選んだでしょうか?外国語の中でスペイン語でも中国語でもドイツ語でもなく英語を選択したでしょうか?皆さんが英語の勉強をしたのは、日本国の教育方針がそうなっているからではないでしょうか?数学・理科・国語・社会も同様です。皆さんは、医学・看護学・環境マネジメント学・産業保健学を主体的に選びました。今後はさらに専門分野の中でサブスペシャルティを自主的に選択することが人生を充実させることにつながります。分野の将来性が解らない時には「好きな事、やりたい事」を選べば良いのです。自分の考えで何かをやればそれで良いと思います。重要点の2つ目ですが、「日本一」を目指してください。これは皆さん全員に可能です。テーマを絞れば良いのです。例えば「日本一の医師になる」、これは実現困難です。しかし、医学の中で、「産業医として、職場で、循環器疾患の、突然死症候群を、健診で、日本一多く見つける」、というような事を達成するのは可能です。JR東海健康管理センターの本学13期生の遠田
和彦
先生が達成され、多くの無症状の労働者を救命されました。素晴らしい産業医活動です。日本一を目指すととてもモチベーションが上がり、仕事が楽しくなります。
皆さんは、まさに巣立とうとするルーキーです。これから失敗も多いでしょう。苦労も多いでしょう。しかし、成功の喜びはとても大きいです。不安があるのは当たり前です。人生、先が見えず、未来は常に未確定です。解らないことは、最終的には、「思った通りやれば良い」のです。決して自分自身を過小評価しないで下さい。自分自身にチャレンジし、ポジティブになって下さい。産業医科大学は、ファミリースピリットに溢れており、卒業生への支援を惜しみません。ラマティサイトで皆さんからの医学的質問を受付け、回答する仕組もあります。卒業生同士も強固な相互支援活動を行っています。皆さんの輝かしい未来を信じて疑いません。どうぞ思う存分大活躍してください。皆さんの大いなる活躍を心から強く願い、記念すべき本日の餞の言葉といたします。