感染症・予防接種・免疫
1)小児感染症
   感染症はウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの様々な微生物によっておこります。一般的な小児感染症から、重症感染症、難治性感染症、基礎疾患のある患者さんに生じた感染症、母子感染、新生児感染症まで幅広く診療しています。
2)予防接種
   毎週月曜午後の予防接種外来(電話での予約制、093-691-7316)では、慢性の病気などのためにかかりつけ医での接種を受けにくい子どもさんや海外渡航前の子どもさんへの予防接種を行っています(渡航前接種は木曜午後も行っています)。実施している予防接種は以下のとおりです。

BCG#、三種混合# (ジフテリア、破傷風、百日咳)、二種混合# (ジフテリア、破傷風)、麻しん#、風しん#、麻しん・風しん混合# (MR)、破傷風トキソイド、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、インフルエンザ、日本脳炎#、おたふくかぜ、水痘、インフルエンザ菌b型(Hib)#、肺炎球菌(小児用)#、子宮頸がん#

なお、#印のワクチンは、福岡県予防接種センターでの接種条件にあてはまる方や、北九州市内の予防接種実施医療機関で公費負担の予防接種が受けられる方につきまして自己負担がありませんので、かかりつけの先生にご相談ください。条件にあてはまらない場合や#印がついていないワクチンの接種は任意接種となり、接種費用がかかります。
3)免疫疾患
   主として、感染症を繰り返したり感染症が重症化したりして免疫の病気が疑われる子どもさんや、(感染症によるものかどうかに関わらず)発熱を繰り返す子どもさんの診療を行っています。
神経
 日本小児神経ホームページによると北九州には7名の小児神経科専門医が勤務しています。これは福岡5市の18名に比べ著しく少ない数字です。特に総合病院で常勤の小児神経専門医が勤務するのは当院を含め2院だけです。こういう状況の中、昨年度当院は北九州内外の先生方から昨年253名の患者さんをご紹介いただきました(てんかん102名、発達障害児51名、頭痛27名、末梢神経・筋疾患14名、神経免疫疾患2 名、その他26)。紹介患者さんは一昨年から大幅に増える傾向にあり、早期の小児神経科医の養成が不可欠な状況です。最近は発達障害児への関心が高く、当院神経精神科や北九州就学支援組織との合同カンファレンスを行っています。発達二次検診は北九州、行京、遠賀中間地区で行っており、早期からの発達障害児のケアを実践可能にしました。外来では毎月約200名の患児をフォローアップしており、神経患者新患外来も水、金に増やしています。入院患者(てんかん患者の評価および薬物・外科治療、重度障害児の健康評価、急性神経疾患の治療) は常に5〜7名の入院があります。他の総合病院からの紹介もあり、治療成績は高い評価を受けています。神経内科との脳波研究会、神経放射線カンファ等小児科内だけにとどまらず、他科との交流も盛んに行っています。
内分泌・糖尿病・肥満
1)内分泌疾患
   下垂体疾患(汎下垂体機能低下症、成長ホルモン分泌不全症、尿崩症など)、甲状腺疾患(クレチン症、バセドウ病など)、性腺系疾患、副腎疾患、骨、Ca代謝異常症、性分化異常症などの小児内分泌疾患の全分野で、北九州地区では唯一複数の専門医が在籍する施設として最新の専門診療を提供しています。また、新生児マススクリーニング対象疾患の治療管理を行っています。ターナー症候群、プラダーウイリー症候群などの遺伝性疾患の診療や軟骨無形成症に対する成長ホルモン治療も行っています。最近では、重症心身障害児の骨密度低下や微量元素不足の問題、また、腫瘍などによる下垂体機能低下症の対応、新生児の内分泌障害などにもとり組んでいます。
2)代謝性疾患
   肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症などの代謝性疾患の診療を行っています。特に肥満児童に対する生活習慣指導、メタボリックシンドローム対策、高脂血症治療などは全国の小児科医だけでなく生活習慣病の各専門分野で知られています。また、学校検尿での尿糖陽性者に対する治療管理を行っています。
血液・腫瘍
 血液疾患全般および悪性固形腫瘍を主な対象疾患としており、とくに出血性疾患、血栓性素因、造血器腫瘍の診療に精力的に取り組んでいます。その他、川崎病と小児膠原病の診療も当グループが担当しています。毎週木曜日の午後に血液・腫瘍外来を設けていますが、各曜日とも午前中の外来にはグループ内の1人以上が出務しており、新患の患者さんの受け入れは常時可能です。
1)悪性腫瘍
   白血病、悪性リンパ腫、神経芽細胞腫などの診断および治療を行っています。小児病棟には無菌室を2床設置し、血縁者間の同種骨髄移植、同種末梢血幹細胞移植、臍帯血移植が可能です。白血病に関しては、国内最大規模の研究グループである小児白血病研究会(JACLS)と日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)に参加し、高い治癒率と安全性の向上を目指した診療を日々実践しています。
2)出血性疾患・血栓性素因
   とくに血友病に代表される出血性疾患のトータルケアに重点を置いています。具体的には、1984年に院内に北部九州血友病センターを開設し、月1回開催される血友病総合外来を基盤として、多科連携による診療を行っています。現在、当センターには、成人を含め300名以上の先天性出血性疾患の患者さんが登録されており、豊富な診療経験があります。
新生児
 2011年7月から北九州市に2つしかない総合周産期母子医療センターとして、地域の周産期医療に貢献しています。NICUは15床あり、2013年9月よりGCU 6床も整備されました。NICUの隣に分娩室、また同じ階の近隣区画に手術室があり、入院患児の院内搬送をスムーズに行うことができるようになっています。NICUと廊下を挟んでMFICU(母体・胎児集中治療室)があり、カンファレンスルームを産科と共有することにより、患者様や空床の情報を共有し、活発な意見交換を行いながら、機能的な周産期センターの運営を行っています。

 NICUでは早産児の全身管理や新生児の呼吸管理はもとより、低体温療法、NO吸入療法、血液浄化療法など高度な治療を幅広く行うことが可能であり、院外出生児に対しても近隣の医療機関からの要請に応じてNICU医師の往診や、医師付添いの新生児搬送を行っております。GCUでは、NICUでの急性期治療が終了した児に対して円滑に退院後の生活に移行できるようにファミリーセンタードケアを積極的に取り入れた育児支援を多職種で積極的に行っています。さらに在宅医療が必要となる児に対しては支援コーディネーターや保健師、行政とともに退院前カンファレンスを行うことで、地域との緊密な連携を図っています。

 当院は日本周産期新生児学会周産期専門医の研修基幹病院となっており、新生児専門医の育成も積極的に行っています。また北九州都市圏における周産期センター(小倉医療センター、北九州市立医療センター、JCHO九州病院、福岡新水巻病院、産業医科大学病院)を中心とした北九州新生児懇話会の事務局として、年に2回研究会を開催し当地区の周産期医療のレベルアップに取り組んでいます。さらにNCPR(新生児蘇生法)の普及にも力を入れており、定期的に院内外の周産期医療関係者を対象としたNCPRの講習会を開催しています。
肝・消化器グループ
 肝臓領域ではB型肝炎(母子・父子感染予防、慢性肝炎の診療)、C型肝炎(母子感染の相談、慢性肝炎の診療)、その他のウイルス性肝疾患、代謝性肝疾患(ウイルソン病、シトリン欠損症)、先天性肝胆道系疾患等の診療を行っています。
 消化管領域では慢性反復性の下痢・便秘・腹痛、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)等の診療を行っています。
腎臓・泌尿器疾患
 ネフローゼ症候群、IgA腎症などの慢性糸球体疾患や慢性腎不全、先天性尿路奇形、夜尿症などの診療を行っています。
循環器
 先天性心疾患(胎児含め)の診断、不整脈の診断・内科的治療、学校心臓検診の3次精査などを行っています。
文責:小児科 更新日:2018 / 07 / 11




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