教室の主な論文紹介


Release of heat shock proteins from human neuroblastoma cells exposed to acrylamide
  J Toxicol Sci, 33(1):117-122, 2008 (Sumizawa, T., Igisu, H.)


Hemolysis caused by titanium dioxide particles
  Inhalat Toxicol, 20(9):891-893, 2008 (Aisaka, Y., Kawaguchi, R., Watanabe, S., Ikeda, M., Igisu, H.)


Apoptosis induced by acrylamide in SH-SY5Y cells
  Arch Toxicol, 81(4):279-282, 2007 (Sumizawa, T., Igisu, H.)


Magnetic resonance for evaluation of toxic encephalopathies: Implications from animal experiments
  Neurotoxicology, 28(2):252-256, 2007 (Igisu, H., Kinoshita Y.)


Involvement of the extracellular signal-regulated protein kinase pathway in phosphorylation of p53 protein and exerting cytotoxicity in human neuroblastoma cells (SH-SY5Y) exposed to acrylamide
  Arch Toxicol 80(3):146-153, 2006 (Okuno, T., Matsuoka, M., Sumizawa, T., Igisu, H.)


Suppression of cadmium-induced JNK/p38 activation and HSP70 family gene expression by LL-Z1640-2 in NIH3T3 cells
Toxicology and Applied Pharmacology 196: 206-214, 2004 (Sugisawa N., Matsuoka, M., Okuno, T., Igisu, H.)
 塩化カドミウム(CdCl2)NIH3T3細胞に曝露すると、時間(1-9hr)と濃度(1-20μM)に応じて、3つのMPAPKs(mitogen-activated protein kinase)すなわち、ERK,JNK,p38のリン酸化がみられた。LL-Z1640-2(10-100 ng/mL)は、これらのリン酸化を阻害したが、各総蛋白量には影響しなかった。試験管内アッセイでも、同様の効果がみられた。ただし、その効果はJNK>p38>ERKであった。他のJNK阻害剤(SP600125,L-JNKI1)は効果を示さなかった。カドミウムにより誘導される他のストレス反応遺伝子のうち、hsp68およびgrp78LL-Z1640-2により発現が抑制された。LL-Z1640-2は有害金属によるJNKp38活性化の解析に有用と思われる。

 


Requirement of MKK4 and MKK7 for CdCl2-or HgCl2-induced activation of c-Jun NH2-terminal kinase in mouse embryonic stem cells
Toxicology Letters , 152: 175-181, 2004 (Matsuoka, M., Igisu, H., Nakagawa K., Katada, T., Nishina, H.)
  JNK (c-JunNH2-terminal kinase)は、重金属など細胞へのストレスにより活性化される。ここでは、JNK上流のMMK4またはMMK7を欠損するマウスES細胞を用いて、カドミウム(CdCl2)、水銀(HgCl2)の影響をみた。いずれの欠損細胞でもJNKのリン酸化および活性化が有意に抑制されたが、完全に消失することはなかった。重金属によるJNKの完全な活性化にはMMK4、MMK7ともに必要である可能性が考えられる。

 


Acrylamide does not cause apparent changes in genetic expression of creatine kinase in rat cerebellum
Journal of UOEH 26: 51-57, 2004 (Wispriyono B., Matsuoka, M., Igisu, H.)
  アクリルアミドはラットやマウスの脳内クレアチンキナーゼ(CK)活性を抑制する。しかし、脳内のCK発現への影響についてはこれまで調べられていない。そこで、CKmRNAとその蛋白レベルを各々RT-PCRとウェスタンブロッティングにより検討した。その結果、明らかな神経症状を示すアクリルアミド中毒ラットモデル(50mgアクリルアミド/kg/日、8日間、腹腔内投与)の小脳において、細胞質CKBサブユニット)およびミトコンドリアCK(ユビキタス型)mRNABサブユニット蛋白レベルのいずれも明らかな変化は認められなかった。

Phospohrylation of p53 protein in A549 human pulmonary epithelial cells exposed to asbestos fibers
Environmental Health Perspectives 111: 509-512, 2003 (Matsuoka, M., Igisu, H., Morimoto, Y.)
p53蛋白は細胞へのストレスにより活性化され、細胞周期停止、DNA修復や、損傷が大きい場合のアポトーシスにかかわっている。ヒト肺上皮II型細胞(A549:野生型p53蛋白を発現)にアスベスト(クリソタイル、クロシドライト)を24時間曝露したところ、用量(1, 5, 10μg/cm2)に応じ、p53蛋白量およびセリン15(Ser15) リン酸化が増加した。クロソタイルはクロシドライトよりも強力であった。クリソタイル(10μg/cm2、18時間)曝露後、Ser15のみが著明にリン酸化され、セリン6, 9, 20, 37, 46, 392の明らかなリン酸化は認められなかった。p38阻害剤(SB203580)MAPK/ERK阻害剤(U0126)ではSer15のリン酸化は抑制されなかったが、wortmanninで、Ser15のリン酸化およびp53蛋白増加が抑制された。また、カタラーゼやN-アセチルシステインはSer15リン酸化を抑制しなかった。これらから、クリソタイルは、DNA損傷シグナル伝達系を介しSer15でのp53蛋白リン酸化を惹起すること、この時活性酸素は重要な役割を演じていないことが考えられた。 

 


Effects of pentachlorophenol and tetrachlorohydroquinone on mitogen-activated protein kinase pathways in Jurkat T cells
Environmental Health Perspectives 110: 139-143, 2002 (Wispriyono, B., Matsuoka, M., Igisu, H.)
 Jurkat T細胞(ヒトT細胞系)をペンタクロロフェノール(PCP)またはその代謝物のテトラクロロヒドロキノン(TCHQ)(20uM)とインキュベートすると、10時間後にはアポトーシス増加がみられ特にTCHQとの反応で著明であった。 一方、1時間のTCHQとの反応で、ERKJNKp38mitogen-activated preotein kinase (MAPK)のリン酸化がみられたが、PCPは明らかなリン酸化を引き起こさなかった。 TCHQによるアポトーシスは、p38阻害剤(SB203580)で著明にまたMAPK/ERK阻害剤(U0126)で軽度抑制され、両阻害剤の同時反応でほとんど完全に抑制された。PCPによるアポトーシスもこれらの阻害剤により抑制された。 しかし、JNKリン酸化阻害剤(LL-Z1640-2)PCPTCHQいずれによるアポトーシスも抑制しなかった。したがって、重要な環境汚染物質であるPCPとその代謝物は、p38ERK系を介してヒトリンパ球系のアポトーシスを惹起する可能性が考えられた。


Acrylamide encephalopahty
Journal of Occupational Health 44: 63-68, 2002 (Igisu, H., Matsuoka, M.)
 アクリルアミドの末梢神経毒性は広く知られている。しかし、脳障害については十分認識されているとは限らない。ここでは、主に我々の成績にもとづき、 アクリルアミドが動物、ヒトいずれにおいても、脳障害も惹起しうることを論じた。 


Effects of heavy metals on mitogen-activated protein kinase pathways
Environmental Health and Preventive Medicine 6: 210-217, 2002 (Matsuoka, M., Igisu, H.)
 Mitogen-activated preotein kinase (MAPK)は細胞外のシグナルを核に伝え、成長、分化、アポトーシスなど細胞の広範な反応に 関与している。ここでは、本研究室の実験結果を中心にカドミウム、無機水銀、トリブチルスズの影響についてまとめた。 


Inhibition of creatine kinase activity in rat brain by methyl bromide gas
Inhalation Toxicology 13: 659-669, 2001 (Hyakudo, T., Hori, H., Tanaka, I., Igisu, H.)
 ラットに臭化メチル曝露(290あるいは495ppm、1日6時間、週3回、4または8週間)し、脳8部位を調べたところ、すべての部位でクレアチンキナーゼ(CK)活性の低下を認めた。 しかし、線条体における軽度の低下を除くとasparatate aminotransferase (ASAT)およびlactate dehydrogenase (LDH)活性の低下は認められなかった。 CK活性低下と臭素イオン濃度の間に明らかな関係はみられなかった。一方、 試験管内で、脳ホモジェネートへの臭化メチルガス曝露を行うと、ASAT, LDH活性は阻害されないが、CK活性は15秒以内に著明に阻害された。 この阻害は、ジチオスレイトールにより抑制されたが、N-アセチルシステインは影響しなかった。以上から、CK分子中の被攻撃部位はアクリルアミドや酸化エチレンの場合とは異なるかもしれないが、 脳CK活性阻害が臭化メチルによる神経障害発症に関連している可能性が考えられた。


Cadmium induces phophorylation of p53 at serine 15 in MCF-7 cells
Biochemical Biophysical Research Communications 282: 1120-1125, 2001 (Matsuoka, M., Igisu, H.)
 MCF-7細胞を塩化カドミウム(10または20uM)に曝露すると、18時間後にp53蛋白の増加が見られた。p53蛋白のセリン中、15のみのリン酸化 がみられ、セリン6,9,20,37,392の明らかなリン酸化は認められなかった。この時、ERK(extracellular signal-regulated protein kinase)c-Jun N-termial kinase (JNK) p38のリン酸化が見られたが、これらmitogen-activated protein kinase (MAPK)の阻害剤ではセリン15のリン酸化は抑制されなかった。しかし、wortmanninあるいは カフェインによりセリン15のリン酸化およびp53蛋白の増加が抑制された。以上から、塩化カドミウムは、MAPKではなくphosphoinositol 3-kinase related kinasesを介してp53のリン酸化を 引き起こすことが考えられた。


Inhibition of HgCl2-induced mitogen-activated protein kinase activation by LL-Z1640-2 in CCRF-CEM cells
European Journal of Pharmacology 409: 155-158, 2000 (Matsuoka, M., Wispriyono, B., Iryo, Y., Igisu, H., Sugiura, T.)
 CCRF-CEM細胞を塩化水銀に曝露すると、ERK(extracellular signal-regulated protein kinase), c-Jun N-termial kinase (JNK)およびp38のリン酸化がおこる。 これに対し、LL-Z1640-2は抑制効果を示したが、JNKに対する効果が最も著明であった。

Involvement of ERK pathway in the induction of apoptosis by cadmium chloride in CCRF-CEM cells
Biochemical Pharmacology 60: 1875-1882, 2000 (Iryo, Y., Matsuoka, M., Wispriyono, B., Sugiura, T., Igisu, H.)
 CCRF-CEM細胞を塩化カドミウム(5-40uM)曝露すると、10uMで最も明らかにアポトーシスがみられた。 アポトーシスに先立って、ERK(extracellular signal-regulated protein kinase), c-Jun N-termial kinase (JNK)およびp38のリン酸化がみられた。 この時、ERKp381uMCdCl2でリン酸化されるのに対し、JNKのリン酸化には20uM以上を要した。また、時間的にもERK, p38のリン酸化はJNKリン酸化に先立ってみられた。 細胞内カルシウムキレータ(BAPTA/AM)前処理によりJNKp38のリン酸化がほとんど完全に抑制されるのに対し、ERKリン酸化は抑制されなかった。 一方、U0126(MAPK/ERK kinase阻害剤)が塩化カドミウムによるERK活性化とアポトーシスを抑制するのに対し、SB203580によりp38キナーゼを阻害してもアポトーシスは抑制されなかった。 以上から、CCRF-CEM細胞において、塩化カドミウム曝露時、3つのMAPKは異なった機構により制御されること、また、アポトーシス誘発にはERK系が重要であることが考えられた。

Brain of rats intoxicated with acrylamide; observation with 4.7 tesla magnetic resonance
Archives of Toxicology 74: 487-489, 2000 (Kinoshita, Y., Matsumura, H., Igisu, H., Yokota, A.)
 ラットにアクリルアミドを50mg/kg/日、8日投与すると後肢の脱力と失調を来す。これらのラットを4.7T MRIで観察したところ、脳室・脳槽の拡大がみられた。 さらに大脳皮質の厚さは対照に比して小であった。これらから、アクリルアミドの上記投与によるラットは、形態学的にもアクリルアミド脳症モデルと考えられる。


Activation of mitogen-activated protein kinases by tributyltin in CCRF-CEM cells: Role of intracellular Ca2+
Toxicology and Applied Pharmacology 168: 200-207, 2000 (Yu, Z., Matsuoka, M., Wispriyono, B., Iryo, Y., Igisu, H.)
 CCRF-CEM(ヒトT細胞系)を塩化トリブチルスズ(TBT)(0.25-2uM)と1時間インキュベートすると、TBT量に応じて、ERKJNKp38mitogen-activated preotein kinase (MAPK)のリン酸化がみられた。 これらの総蛋白量には変化はなかった。このリン酸化は、曝露後15分から4時間までみられたが、細胞生存率には変化がなかった。また、TBTMAPKリン酸化能は他のブチルスズ(dibutyltin, monobutyltin) や有機スズ(trimethyltin, triphenyltin, triethyltin)塩化物に比して高かった。一方、このリン酸化は細胞内Ca2+をキレートすると消失したが、細胞外Ca2+除去では消失しなかった。 このようにTBTは細胞内Ca2+を介して、MAPKをリン酸化することが明らかになった。


Hexachlorophene-induced brain edema in rat observed by proton magnetic resonance
Brain Research 873: 127-130, 2000 (Kinoshita, Y., Matsumura, H., Igisu, H., Yokota, A.)
 ラットにヘキサクロロフェン(HCP)30mg/kg/ 5日間投与し、4.7T磁気共鳴(MR)を用いて観察したところ、T2強調画像で、髄鞘に富む部位が著明に描出された。 観察した全ての部位で、ランダムな水分子の動きを反映すると考えられるapparent diffusion coefficient (ADC)の著明な低下がみられた。 HCP投与中止7日後にはT2強調画像上の著明な変化は消失したが、ADCはほとんどの部位で低下していた。HCPを投与し高磁場MRで観察したラットは、"細胞毒性"脳浮腫の良いモデルになること、 また、本モデルは髄鞘に富む構造の観察に有用と考えられる。


Suppression of pentylenetetrazol-induced seizures and c-fos expression in mouse brain by L-carnitine
Journal of Occupational Health 42: 119-123, 2000 (Iryo, Y., Matsuoka, M., Igisu, H.)
 さまざまな化学物質がけいれんを引き起こしうるが、ペンチレンテトラゾール(PTZ)はその代表的物質である。本実験では、マウスに生理的食塩水あるいはカルニチン(LまたはD型)を腹腔内投与30分後、 PTZを投与し、けいれん発現を20分間観察した。L-カルニチン投与により、けいれんの程度・回数が有意に減少し、 間代性けいれんの潜時も延長した。D-カルニチンは、有意のけいれん抑制効果を示さなかった。 一方、脳内c-fosmRNA発現量をRT-PCRを用いて測定したところ、対照(生理的食塩水+PTZ)に比して、L-カルニチン投与群では有意の抑制がみられた。 以上から、L-カルニチンが、PTZ誘発けいれんとそれに伴う脳内の前初期遺伝子発現に対する明確な抑制効果をもつことが明らかとなった。


Increased cytotoxicity of cadmium in fibroblasts lacking c-fos
Biochemical Pharmacology 59: 1573-1576, 2000 (Matsuoka, M., Wispriyono, B., Igisu, H.)
 カドミウムは繊維芽細胞を含むさまざまな細胞でc-fos遺伝子発現を誘導する。ここでは、c-fos欠損細胞と非欠損細胞でのカドミウム毒性を比較した。 WST-8変換、トリパンブルー排除、LDH漏出いずれを指標としても、c-fos欠損細胞ではカドミウムによる影響が大であった。少なくとも3T3様繊維芽細胞では、c-fosは カドミウム毒性に対して防御的に働いている可能性がある。


Mercury chloride activates c-Jun N-termimal kinase and induces c-jun expression in LLC-PK1 cells
Toxicological Sciences 53: 361-368, 2000 (Matsuoka, M., Wispriyono, B., Iryo, Y., Igisu, H.)
 LLC-PK1 細胞を塩化水銀に暴露すると、リン酸化されたc-Jun N-terminal kinase(JNK)レベルおよびglutathione-S-transferase-c-Junを基質としてみたJNK活性が 水銀量に応じて上昇した。 これらに一致して、c-Junおよびリン酸化されたc-Junの著明な増加もみられた。 これらについて、水銀の効果はカドミウムを上回った。一方、BAPTA(細胞内カルシウムキレータ)処理により、カドミウムの効果が消失するのに対し、水銀については影響しなかった。 さらに極性の高いマレイミド(NHM)、非極性のマレイミド(NEM)共に水銀の効果を抑制しなかった。 これらから、水銀によるJNK活性上昇には、細胞内カルシウムおよびSH基は重要な役割は果たしていないことが考えられた。


N-Acetylcysteine fails to protect rats from acrylamide neurotoxicity
Journal of Occupational Health 41: 181-182, 1999 (Wispriyono, B., Iryo, Y., Yoshida, T., Matsuoka, M., Igisu, H.)
 アクリルアミドはヒトおよび動物で、中枢・末梢神経障害を引き起こすが、その機構、障害防止法は不明である。ただ、アクリルアミドはSH基と反応することが知られている。 我々は先にN-アセチルシステイン(NAC)が腎臓由来細胞において、カドミウム毒性を防止することを見いだした(J Pharmacol. Exp Therap 287:344-351, 1998)。 さらにNACが神経細胞保護作用をもちうることを示唆する報告もある。そこで、ラットにアクリルアミドを投与し、NACの効果を検討した。しかし、landing foot spreadにより 評価した神経障害、脳内グルタチオンレベルいずれにも有意の影響はみられなかった。


Effects of pentachlorophenol, pentylenetetrazol and carnitine on mitochondria
Journal of UOEH 20: 315-322, 1998 (Yu, Z,, Iryo, Y., Matsuoka, M., Igisu, H.)


Activation of c-Jun NH2-terminal kinase (JNK/SAPK) in LLC-PK1 cells by cadmium
Biochemical and Biophysical Research Communications 251: 527-532, 1998 (Matsuoka, M., Igisu, H.)
 LLC-PK1 細胞をカドミウム(Cd)暴露すると、30分後からリン酸化されたc-Jun NH2-terminal kinase(JNK)レベルが増加し、8時間後にもそれがみられた。JNK活性もCd量に応じて上昇した。 さらにc-Junおよびセリン63と73においてリン酸化されたc-Junの著明な増加もみられた。一方、BAPTA(細胞内カルシウムキレータ)で細胞を処理するとJNKリン酸化が消失するのに対し、TPEN(細胞膜透過性重金属キレータ)は 影響しなかった。以上から、Cdが腎上皮由来細胞において持続性のJNK経路活性化をもたらすこと、それには細胞内カルシウムが必要なことが明らかになった。


Protection from cadmium cytotoxicity by N-acetylcysteine in LLC-PK1 cells
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 287: 344-351, 1998 (Wispriyono, B., Matsuoka, M., Igisu, H., Matsuno, K.)
 色素排除およびLDH漏出を指標としてみたLLC-PK1 細胞へのカドミウム(Cd)毒性は1mMN-アセチルシステイン(NAC)によりほぼ完全に抑制された。NACは細胞内グルタチオンを倍増させたが、 ブチオニンスルフォキシミンによってこれを阻害してもNACの細胞保護作用は変わらなかった。NACは、Cdによるc-Fos蛋白増加も抑制したが、アクチノマイシンDによる遺伝情報転写阻害はNAC効果に影響しなかった。 一方、NACCdの細胞への取り込みを著明に低下させた。以上から、NACLLC-PK1 細胞でのCdからの保護の主要な機構として、Cdの細胞内取り込みの抑制が考えられた。


Induction of c-fos gene by mercury chloride in LLC-PK1 cells
Chemico-Biological Interactions 108: 95-106, 1997 (Matsuoka, M., Wispriyono, B., Igisu, H.)
 塩化水銀は代表的な腎毒性物質である。ブタ腎臓由来のLLC-PK1細胞に塩化水銀を曝露すると、30分後からc-fos mRNAが増加し、それにおくれてc-Fos蛋白の増加、さらにアポトーシスを示唆する所見がみられた。 c-fos発現はアクチノマイシンDで完全に抑制されたことから、塩化水銀による遺伝子情報転写促進が考えられた。

Effects of single exposure to toluene vapor on the expression of immediate early genes and GFAP gene in the mouse brain
Archives of Toxicology 71: 722-723,1997. (Matsuoka, M., Matsumura, H., Igisu, H., Hori, H., Tanaka, I.)
 トルエンは広く用いられている有機溶剤である。その神経系に及ぼす影響についてはさまざまな議論がなされている。マウスに500および2000 ppm、8時間トルエンを曝露したが、脳内の早初期遺伝子(c-fos, c-jun)およびGFAP(アストログリアのマーカー)遺伝子発現に変化はみられなかった。


Suppression of pentylenetetrazol-induced seizures by carnitine in mice
Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology 355: 545-549, 1997. (Yu, Z., Iryo, Y., Matsuoka, M., Igisu, H., Ikeda, M.)
 本研究室では、先にカルニチンがアンモニア(特定化学物質第3類)誘発けいれんを抑制しうることを示した(Brain Res 567:328-31, 1991; Biochem Pharmacol 46:159-64, 1993など)が、今回けいれん誘発物質として最も標準的とされるペンチレンテトラゾールで誘発したけいれんに対しても有効であることを見いだした。カルニチンは脂肪酸のミトコンドリア内膜通過に必須の物質であるが、脳での生理作用は不明である(脳内にもカルニチンは存在するが、脳は脂肪酸をエネルギー源とはしない)。カルニチンは内因性の脳保護物質としての機能を持つのかもしれない。


Cooperative inhibition of acetylcholinesterase activities by hexachlorophene in human erythrocytes
Archives of Toxicology 71: 151-156, 1997. (Matsumura, H., Matsuoka, M., Igisu, H., Ikeda, M.)
 ヘキサクロロフェン(HCP)が、ヒト赤血球膜アセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性に対し、今までに知られている物質のうちで最も強力な協同性の高い阻害効果をもつことを明らかにした。 HCPAchE(生物学的モニタリングにおいて重要)の状態を調べるために有用である可能性がある。本所見は、HCPの脱髄作用(中枢・末梢神経でのミエリン破壊)との関連でも興味深い。


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