未熟児網膜症

網膜の血管について

 眼球には、脳から視神経という神経が伸びており、眼球の後方の中央のやや内側につきます。眼球の後ろの壁に視神経が顔を出した部位を視神経乳頭と呼びます。その視神経乳頭から網膜という神経の膜に続いており、眼球の壁に張り付いたようになっています。カメラで言うと、フィルムに当たる部分です。網膜には多くの血管があり、胎生4か月頃に、視神経乳頭から伸び始めます。内側(鼻側)の血管は、38週頃に網膜の端まで伸びきります。外側(耳側)はやや遠いため、39〜40週頃に伸びきります。つまり、満期のお子さんの場合、網膜の血管はほぼ伸び終わった状態で生まれてきます。

未熟児網膜症について

 一方、それより前に生まれてくると、網膜の血管が伸びきっていないわけです。そのままスムースに血管が伸びることもありますが、特に小さい週数で生まれた場合、血管の伸びた先端の部位と血管のない部位の間に、境界線という線状の病変が出現し、さらに悪化すると、増殖組織とよばれる組織が出現します。放っておくと、網膜を引っ張って、網膜が剥がれてしまうこともあります(網膜剥離)。これを未熟児網膜症といいます。そのため、網膜剥離にならないようにレーザー治療を行わなければならないお子さんもいらっしゃいます。なお、境界線が出現したからと言って、必ず網膜剥離になるわけではなく、自然に改善することもあります。また、境界線・増殖組織などの段階を踏まずに、急激に悪化して網膜剥離に至る、劇症型もあります。レーザー治療を行っても網膜剥離に至る場合もあり、その際は硝子体手術が必要な場合もあります。当院は、未熟児網膜症に対する硝子体手術を行う数少ない施設の一つです。

眼底検査の必要性

 小さな週数で生まれたお子さんには、未熟児網膜症が発症していないか、発症した場合、悪くならないか、レーザー治療は必要かどうかなど、必ず眼底検査が必要になります。一般的には35週未満で生まれたお子さんを対象とします。在胎26週未満で生まれた場合は29週頃、在胎26週以上で生まれた場合は生後3週目に最初の眼科診察を行います。ただ、診察時期、診察するお子さんの週数(何週以下か)などはお子さんのお体の状態や、施設によって若干異なっていることをご了承ください。