健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

3.医療機関における診療

ウイルス性肝炎とはウイルスに起因する肝臓での炎症の総称です。肝臓に特異的に感染するウイルスにはA型からE型肝炎ウイルスが存在します。肝臓以外にも障害を及ぼすようなウイルスも存在しますが、職場で問題となるようなウイルスは慢性の肝障害をきたし気づかないうちに肝硬変や肝がんに進行してしまうB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)による肝炎と考えられます。ともに自覚症状が少ないことが問題で感染に気づいていない人が多くいます。ともに日本には100万人以上のウイルス保有者(キャリア)がいると推測されています。

HBVは通常は成人で感染した場合は一過性の感染で肝炎はおさまることが多いです。キャリアの多くは母親から出生時に感染したか幼少時に感染した方です。日本では1986年からHBV母子感染予防事業が行われ、母子感染は少なくなっています。検査はまずHBs抗原という血液検査を受けることです。キャリアの多くはしばらく慢性肝炎の状態が続き、その後は肝炎が落ち着くことが多いのですが、肝炎が持続して肝硬変や肝癌に進行する方が10-20%おられます。現在はインターフェロンとともに核酸アナログ製剤というウイルス増殖を抑える非常に良い飲み薬があります。年齢や肝炎の程度で薬の使い分けをします。肝炎の状況によっては経過観察のみの場合もあります。インターフェロンの場合は6ヶ月から1年間、週に1回通院していただきます。核酸アナログ製剤は長期にわたり使用しますが、肝炎が安定すれば通院は1-3ヶ月に1回となります。両方の治療とも現在は公的な医療補助があります。妊娠に関しては両方の治療とも注意が必要です。インターフェロンの場合は初期に発熱や倦怠感があると思いますが、慣れてくると思います。両方の治療とも通常の生活に問題はありません。B型肝炎で注意すべきことは肝炎がひどくなくても肝がんができることがあることです。そのため、肝臓専門医(https://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list)にかかり適切な検査を受けることが重要です。もうひとつ注意すべきことは成人の感染でも肝臓の細胞の中にはウイルスの遺伝子が必ず残りますので、なんらかの病気の治療で免疫を抑える薬や抗がん剤を使うと肝炎が起こることがあることです。そのような場合は肝臓専門医(https://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list)への相談が必要です。

HCVは血液を介して感染します。ただし輸血等を受けていない人でも知らないうちに感染している人がいます。そのため、まずは血液検査でHCV抗体を調べることが重要です。HCVは成人で感染しても約7割の方が慢性肝炎になり、肝硬変から肝癌に進行することがあります。ただしこのウイルスはHBVと異なり適切な治療によりウイルスを身体から排除することが可能です。かつてはインターフェロンを使用する治療しかありませんでしたが、現在はウイルスの増殖を直接抑える飲み薬で90%以上の確率でウイルス排除ができるようになりました。数種の薬がありますが、他の病気の合併やウイルスの特殊な性質により薬の使い分けをします。この選択には肝臓専門医(https://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list)の判断が必要です。治療期間は3-6ヶ月です。その間は副作用がないかを観察しながら1-2週ごとに来院していただきます。妊娠中は使用できません。またこれらの薬の使用中は健康食品やサプリメントの中止が望ましいです。通常の生活には問題ありません。非常に高額な薬ですが現在は公的な医療費補助を受けることができます。ただし、注意すべきことはウイルス排除であって肝炎の治癒ではないことです。そのためウイルス排除に成功したあとも必ず専門医(https://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list)のもとで経過観察を受けることが重要です。

一生に一度HBs抗原とHCV抗体の検査を受けることをお勧めします。

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