健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

4.要配慮個人情報の取り扱い

平成27年、個人情報保護法が改正され、不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要する個人情報については新たに「要配慮個人情報」と定義されました。同法の関係法令等によれば、病歴、身体障害、健康診断結果、診療録等(表)は要配慮個人情報に該当するとみなされ、その取得や第三者提供においては「あらかじめ本人の同意を得ること」が原則とされ、一般の個人情報では認められている第三者提供の特例(オプトアウト)が禁止されました。オプトアウトとは、あらかじめどのデータをどのような方法で第三者提供しようとしているかを「本人に通知」又は「本人が容易に知りえる状態」としておき、本人の求めに応じて第三者提供を停止することです。

「HBs抗原検査」や「HCV抗体検査」は定期健康診断の検査項目ではありません。したがって、個人情報保護法の要配慮個人情報に関する規定にしたがって取り扱う必要があります。そして、おそらく多くの職場ではこれまでもそうであったように、定期健康診断で採取した血液を使用して肝炎ウイルスの検査を行ったり、その結果を会社が取得したり他の事業者に報告したりしようとする場合には、あらかじめ個人ごとによく理解させた上で同意を得ておく必要があります。たとえ、個人情報保護法上は第三者への提供には該当しない「委託」や「共同利用」の手続きによる場合であっても、本人がよく理解していないままに肝炎ウイルス検査の検査結果が取り扱われることは避けるべきです。また、同意の取得方法としては、労働組合との協議や衛生委員会での審議などで労働者全体に対して包括的に通知しておく方法では不十分です。定期健康診断等の問診票で「肝炎検査を希望する」かどうかを尋ねて、希望しない人には検査を実施しない仕組みとし、検査結果は会社に通知される通常の健康診断結果票には記載せず、本人専用の結果通知票だけに記載する仕組みにしておくことが勧められます。もし、会社が、どうしても検査結果等を取得する場合は、そのことをあらかじめ本人に伝えて同意を得ておく必要があります。ところで、平成27年から労働者50人以上の事業場に実施が義務づけられたストレスチェックにおいては、より厳格に個人の意思に配慮した同意取得の方法、すなわち、ストレスチェックを実施した後、労働者が検査結果の通知を受けた後にはじめて、その検査結果を会社に提供することに同意を取得する方法によるべきこととされています。肝炎ウイルス検査の結果を会社に提供する場合も、このストレスチェック制度における同意取得の方法と同様の方法を用いることが望ましいと考えられます。また、当然ながら、検査結果については、厳格に管理して他部署への漏洩を防ぎ、非医療職が勝手に解釈したり、雇用上の差別をしたりしないように留意しましょう。

労働衛生行政の通達(「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成27年11月30日付け基発1130第2号、http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/PDF_7.pdf)は、職場で健康情報を利用する際には「医学的判断や知識が必要とされるため、産業医・保健師等が情報を加工・判断を要することがある」としています。したがって、産業医や産業保健職が関与している職場では、積極的にこれらの医療職を利用して、本人と面談させて保健指導を受けさせるとともに、健康情報の保存方法についても相談しましょう。

表 個人情報保護法に関するガイドライン(平成28年11月30日公表)による要配慮個人情報
病歴
病気に罹患した経歴を意味するもので、特定の病歴を示した部分(例:特定の個人ががんに罹患している、統合失調症を患っている等)が該当する。
健康診断等の結果
疾病の予防や早期発見を目的として行われた健康診査、健康診断、特定健康診査、健康測定、ストレスチェック、遺伝子検査、人間ドック等、受診者本人の健康状態が判明する検査の結果が該当する。健康診断等を受診したという事実は該当しない。身長、体重、血圧、脈拍、体温等の個人の健康に関する情報を、健康診断、診療等の事業や業務とは関係ない方法により知り得た場合は該当しない。
健康診断等の結果に基づく指導、診療、調剤
特に健康の保持に努める必要がある者に対し、医師又は保健師が行う保健指導や医師による面接指導等の内容が該当する。服薬歴、お薬手帳に記載された情報、病院を受診したという事実、保健指導を受けたという事実も該当する。

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