会社が独自で実施する場合

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会社の健康診断時に追加項目として実施する方法です。
産業医や保健師がいて、検査結果を陽性者の受診勧奨や適正配置等の健康管理に利用したいと考える場合は、この方法が運用しやすいでしょう。

実施の準備

1.事業所内で検査の実施を決定しよう

肝炎ウイルス検査は法律で実施が義務づけられている検査ではありませんので、会社で検査を実施することについて、安全衛生委員会などで労使間の話し合いの機会を持ち、会社全体の合意を得て実施しましょう。その際、検査を受けない自由があることも説明しておきましょう。

2.検査の実施方法を決めよう

検査の対象と時期

検査の実施は、これまで検査を受けたことがない(*)社員に1回だけウイルス検査を実施することで、感染の有無を知ってもらうことができますので、毎年実施する必要はありません。
まず、定期健診時等に、検査を受けたことがない全社員を対象として1回検査を実施し、その後は雇入時の健康診断で、新入社員のみ検査を実施すれば、必ず1度は全社員が受検する機会を得ることができますので、効率的です。

*過去に検査を受けたことがある例

  • 地域の肝炎ウイルス検査を受けた
  • 人間ドッグで肝炎ウイルスの検査を受けた
  • 病院で手術や治療を受けた際に検査した 等

費用の負担

会社が独自で実施する場合、全額会社が負担する、あるいは一部または全額を個人負担とする方法が考えられます。どのような負担の方法とするか、あらかじめ取り決め、社員と検査を実施する健診機関に伝えておく必要があります。
尚、具体的な検査費用は健診機関によって設定料金が違いますので、事前に確認しておきましょう。

3.結果の取り扱い方法を決めよう

肝炎ウイルス検査の結果は機微な情報であり、就業上、安全上の必要性が乏しい場合は、原則、会社が積極的に情報を得るべきではありません。検査の結果は本人へのみ通知し、他の人が結果を知ってしまうことのないよう十分な配慮をしましょう。

ただし、医療機関などで、感染対策のために会社として結果を知っておく必要がある場合、あるいは、社内に医療職がいて、責任を持って情報を管理し、健康管理に役立てる体制が整っている場合は、協議の上、会社として検査結果を取得することも可能です。その場合も本人に対しては、検査の前あるいは後に、結果が社内の限定された担当部署(健康管理部門など)に通知されることや健康管理にのみ活用することについて説明し、同意を得ておく必要があります。

会社が検査結果を取得する場合は、結果の保存方法についても注意が必要です。紙の帳票なら結果を鍵付き金庫に保存する、データベースならパスワードを設定するなどして関係の無い者による情報の漏洩・流失のないよう厳重な管理が求められます。

実施

4.社員に説明し、同意をとろう

検査の実施に当たっては、健康保険組合等が提供するオプション検査であっても、社員がウイルス性肝炎について正しく理解し、検査の重要性を認識できるよう十分な説明を行うことが望ましいでしょう。検査を実施することについては全体に対して周知し、検査の対象者に対してはより詳細な説明が求められます。

検査を実施することについての事業所全体への周知

検査を実施することについては、職場の衛生担当者を通じて周知する、説明会を開催する、社内HPや掲示板を介して周知を図る、社内の健康管理規定に記載し、いつでも閲覧可能な状態にするなどの方法があります。

社員への個別の説明

事前に配布する受診案内に説明文を同封する、電子メールで対象者に情報を配信する、検診会場での掲示や案内を行うなどの方法があります。
説明には、以下のような内容が含まれるようにしましょう。

  • 検査の目的が本人の健康管理のためであること
  • 検査結果の取扱い
  • 検査結果の利用(事業所が結果を取得する場合)
  • 本人の費用負担(個人負担がある場合)
  • 検査の受検は本人に選択の自由があること
  • 検査及び結果についての相談窓口

肝炎ウィルス検査実施の説明文書の例

社員の個別の同意

会社全体の方針として肝炎ウイルス検査を実施することが決まった場合も、社員自身に検査を受けるか否かの意思を確認する必要があります。

同意は文書で得る方法が望ましく、書面上に「同意する」「同意しない」の両欄を設け、選択してもらう他、本人が同意書に署名する方法などがあります。 文書での同意を得ないで実施する場合は、受診者に十分な説明が行われていて、検査を受けたくない場合は拒否する権利があることを十分周知していることが前提になります。

同意書を回収する際には、他の人に同意の有無を類推されないような配慮が望まれます。
以下にいくつかの同意文書の例を紹介します。

会社が独自で実施する場合の同意書例1
会社が独自で実施する場合の同意書例2
会社が独自で実施する場合の同意書例3 結果を健康管理部門が取得する場合の例

実施後

5.事後措置の対応を決めよう

相談窓口の設置

検査結果を事業所が取得する場合もしない場合も、検査や結果について、社員から相談や質問が寄せられることが考えられます。あらかじめ対応する相談窓口を設置し、周知しておくことが望ましいでしょう。相談対応にあたっては、守秘義務を守ること、健康管理の目的以外に情報を用いないことを徹底するようにしましょう。
非医療職が窓口となる場合は、必要に応じ医療職と連携をとるようにしましょう。

<相談窓口の例>

  • 医療職(産業医・産業保健看護職):最も望ましい
  • 衛生管理者
    医療職と連携することが望ましい
  • 人事部門・総務部門
    担当者を特定し、健康管理以外の目的では結果を利用しない等の情報管理を徹底する必要がある

<相談事項として考えられる例>

  • 検査のメリット、デメリット
  • 結果の取扱いに関するもの
  • 検査結果への対応に関するもの
  • 就業上の配慮に関するもの
  • 医療機関・社会制度に関するもの
  • ハラスメントに関わるもの

陽性者本人の自主的な受診促進と、事業所が結果を取得する場合の受診勧奨

肝炎ウイルス検査結果が陽性だった場合、肝機能検査や自覚症状が全く問題なかったとしても、一度は必ず肝臓専門医を受診するべきです。
本人へ検査結果が通知される際に、肝臓専門医への受診の必要性について十分な情報提供を行い、受診につなげましょう。また、陽性だった場合は、自発的に事業所の医療職へ相談するよう促すはたらきかけも、結果を放置させないために重要です。もしも、事業所側の医療職が検査結果を取得している場合は、個別に受診勧奨をしましょう。その際、専門医宛ての紹介状と返信用書類のフォーマットを作成しておくと有用です。