胆道癌、膵癌、急性膵炎、慢性膵炎、その他総胆管結石等の良性疾患を含めて幅広く最新の知見を取り入れた診断・治療・管理を行っています。特に超音波内視鏡(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)ならびにこれらを応用し、正確な診断と適切な治療が行えるよう努めています。
・胆道疾患
胆石による胆嚢炎や胆管炎に対するERCPによる内視鏡的ドレナージや結石除去術、また胆道系悪性腫瘍に伴う閉塞性黄疸に対する内視鏡的ドレナージ、その後の化学療法も行っており、近隣の医療機関より多くの症例をご紹介いただいております。総胆管結石の治療では通常の方法では排石できない巨大結石や多発積み上げ結石などに対して電気水圧衝撃波結石破砕術(EHL; electrohydraulic lithotripsy)を用いることで完全排石を行えるようになりました。閉塞性黄疸に対するドレナージについてはplastic stentならびにself-expandable metallic stentを用いて症例毎に適切なドレナージ方法を選択します。術後再建腸管例においても積極的な検査と治療を行っています。切除不能肝門部領域癌では肝体積の50%以上をドレナージした方が予後良好であるとする報告もあり、multi-stentingを駆使したドレナージを行っています。また長期予後に貢献できるようre-interventionも積極的に行っており、患者さんのQOLの改善に最善を尽くしています。切除不能胆道癌における化学療法ではGC(ゲムシタビン+シスプラチン)療法とGS(ゲムシタビン+S-1)療法を基本とした治療を行い、全身状態が良好な患者さんに対してはGCS(ゲムシタビン+シスプラチン+S-1)療法が行える体制も整えています。また2021年3月より、選択的FGFR阻害剤のペミガチニブが、化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子異常陽性の切除不能な胆道癌の治療薬として承認されました。肝外胆管癌においてFGFR2融合遺伝子異常が存在する確率は非常に低いとされていますが、遺伝子異常陽性であればペミガチニブによる治療が可能です。さらにMSI-high陽性の患者さんでは免疫チェックポイント阻害剤のペンブロリズマブが、NTRK融合遺伝子変異陽性であればTRK阻害剤のエヌトレクチニブやラロトレクチニブが使用できます。
・膵疾患
悪性新生物による死因のうち膵癌は全体で4位であり年々増え続けています。また非常に予後不良な癌として知られています。診断においてはEUSやERCPを用いた正確な診断を心がけています。切除不能膵癌に対する化学療法として2001年にゲムシタビンが本邦で承認され、2006年にはS-1が承認されました。長らくこれらの薬剤の単独療法もしくは併用するGS(ゲムシタビン+S-1)療法が行われてきましたが、2013年に4種類の抗癌剤を組み合わせた治療法のFOLFIRINOX療法が、2014年にパクリタキセルに人血清アルブミンを結合させたナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルと塩酸ゲムシタビンを併用するGnP療法(ゲムシタビン+nab-PTX)療法が承認され、治療成績が向上しています。さらに2020年に切除不能膵癌に対する2次以降の治療としてイリノテカン塩酸塩水和物リポソーム製剤+フルオロウラシル・レボホリナート療法が、またオラパリブがBRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵癌における白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法として承認され、治療の選択肢が大きく広がっています。また膵癌においてもMSI-high陽性の患者さんでは免疫チェックポイント阻害剤のペンブロリズマブが、NTRK融合遺伝子変異陽性であればTRK阻害剤のエヌトレクチニブやラロトレクチニブが使用できます。
急性膵炎は良性疾患にもかかわらず、重症化すると致命率が9%に達する疾患であり、循環不全を初めとする多臓器不全を合併することから、集中治療部、腎センターと連携しながら、蛋白分解酵素阻害薬、持続的血液濾過透析(CHDF)、選択的消化管除菌などの治療法を組み合わせて治療を行います。急性膵炎合併症である被包化壊死や膵仮性嚢胞に対して超音波内視鏡下瘻孔形成術によるドレナージ治療も行い良好な成績を収めています。
胆道癌や膵癌といった悪性疾患に対しては、外科、放射線科と密に連携し、最も適切な治療が提案できる体制を整えています。また、当院はがん診療連携拠点病院であり、最新の知見による抗癌剤治療はもちろんのこと遺伝子診断に基づいた治療方法の提案も可能です。 |