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産業医科大学分子標的治療内科学講座は、膠原病リウマチ性疾患のよりよい治療の確立を目指しています

TEL.093-603-1611

〒8078555 北九州市八幡西区医生ケ丘1−1

コンセプト
設立趣意書

「産業医科大学医学部・分子標的治療内科学」講座設立にかかわる趣意書

講座の名称
(和文) 分子標的治療内科学
(英文) Department of Molecular Targeted Therapies (DMTT)


申請者
産業医科大学医学部第一内科学講座・教授 田中良哉

講座開設の目的
 膠原病リウマチ性疾患は多臓器障害を生ずる全身性自己免疫疾患で、その多くは厚生労働省の指定難病である。好発年齢は20-50歳代の働き盛りであり、しばしば労働生産性が著しく低下され、産業医学分野でも重要な疾患群である。これまで治療は副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬など、非特異的な副作用の多い薬剤が中心であったが、21世紀初頭より関節リウマチに対して生物学的製剤やJAK阻害薬などの分子標的治療が導入され、治療に革命的な変化がもたらされた。
しかし、分子標的治療には下記のような多くの課題が残存する。
1)関節リウマチに対しては多くの分子標的治療薬が承認されたが、疾患特有の不均一性(heterogeneity)を克服し、安全性、経済性、労働生産性を考慮した薬剤の使い分け、プレシジョン・メディシンの実践が急務である。
2)多くの膠原病リウマチ性疾患の治療については開発途上にあり、病態メカニズムに応じた的確な分子標的治療薬を選択し、国内外で開発を先導する必要がある(トランスレーショナルメディシン)。
3)プレシジョン・メディシン、トランスレーショナルメディシンの実践のためには、臨床情報、免疫情報、細胞情報、遺伝子情報の邂逅による科学的根拠の構築が必須である。
4)分子標的治療によりリウマチ疾患でも寛解導入が可能となったが、疾患治癒は困難とされる。治癒を妨げるドライバーを免疫系、間葉系、細胞内代謝、遺伝子レベルから明らかにし、治癒に向けた標的治療戦略を構築する必要がある。
本講座では、膠原病リウマチ性疾患の治療における分子標的治療、及び、その開発や評価に関する上記の研究課題に取り組むことを主目的とする。また、高度先進医療の開発や普及と共に、労働生産性向上や安全性を重視した適正使用のための指針作成、教育活動、社会への還元・啓発活動などを実践する。「分子標的治療内科学」を標榜し、目的を特化して取り組む講座は国内外にも稀有であり、高い国際的評価を基盤として、重要な使命を背負って活動することが期待される。
本講座では、第1内科学講座に加えて、学内外や海外の講座・医療機関との連携、医師主導研究、臨床研究法準拠研究、厚生労働研究、学振研究、AMED研究施設としての研究活動、日本臨床免疫学会(理事長)、日本リウマチ学会(理事)、アジアパシフィックリウマチ学会(学術委員長、本学はCenter of Excellenceに指定)、国内外の企業・製薬企業・研究所等との共同研究、指定研究、学際的協力など、現在進行中の研究課題を維持発展させる。


当講座の必要性と意義
 2000年に本学教授に就任当初、抗リウマチ薬の国内での承認は欧米に比し5?10年あるいはそれ以上の遅れをとっていた。これまで第1内科学講座教授として、国際的コミュニティへの参入、国際臨床試験の国内への導入に努め、ドラッグラグの解消に貢献したと評価されている。本講座では、斯様な背景を礎に上述の研究協力を賦活化することにより、上記の研究課題の攻略を可能とし、その結果、産業医学やリウマチ学の進歩、多大なる社会貢献に資するものと期待される。
上記課題1-3)については、膠原病・リウマチ性疾患は、全身性自己免疫疾患であり、臨床的、免疫学的、分子生物学的に高い不均一性(heterogeneity)が存在するため、免疫難病とされてきた。臨床情報、免疫情報、細胞情報、遺伝子情報の邂逅により不均一性を超えて最適な分子標的治療薬の使い分け、即ちプレシジョン・メディシンが可能となれば、効率的な治療展開、労働生産性向上、医療経済改善に資すると共に、多くの免疫難病の治療ストラテジーへの応用の基盤になると期待される。
課題4)では、分子標的治療の進歩に伴い、膠原病・リウマチ性疾患では寛解導入が治療目標となってきた。しかし、寛解は治療のマイルストーンであるが、炎症の効果的な制御に過ぎず、真の疾病治癒とは異なる。そこで寛解から治癒への移行を妨げる免疫病態学的プロセス(ドライバー)に、@適応免疫系の活性化、A間葉系のプライミング、B非免疫系のリモート要因が関与すると仮定して、ドライバー候補の細胞・遺伝子・パスウェイなどを同定する。これらのドライバーを重点的に標的とする治療戦略が開発されれば、膠原病・リウマチ性疾患の治癒の実現に資するはずである。
以上の研究の遂行のために、本講座では、通常の寄附講座の枠組みを超えて、共同研究講座、社会連携講座、教育支援講座としての役割を担うことを目指す。



(文責:田中良哉 更新日2023/3/31)

講座情報店舗情報

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分子標的治療内科学講座

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