脳神経外科で診察する主な疾患は以下のようなものがあります。 脳の中には多くのタイプの腫瘍が発生します。良性から悪性の腫瘍までさまざまです。産業医科大学脳神経外科では、各種脳腫瘍に対して外科治療から、放射線療法や化学療法などの後療法まで症例に応じた治療を行っています。外科治療に関しましては、最新式のナビゲーションシステムを用い脳の深部にできた脳腫瘍の場所や広がりを正確に同定して手術する方法や、言語中枢や運動中枢に発生した腫瘍に対しては、全身麻酔から手術途中に覚醒してもらい、覚醒下に脳を電気刺激しながら中枢部位を同定し、この部位を避けて腫瘍の摘出を行う手術など、さまざまな脳腫瘍に対して安全に手術を行える体制を整えています。
[脳下垂体腫瘍] 脳底部にはトルコ鞍と呼ばれる小さな骨のポケットがあり、ここに脳下垂体という小さな組織があります。この脳下垂体には良性の腫瘍(下垂体腺腫)が稀ならず見られます。脳下垂体は体中のホルモンのコントロールセンターで、さまざまなホルモンを分泌します。このホルモンを分泌している細胞から腫瘍ができると、血液中のホルモン値が高くなり、体中にさまざまな合併症を起こします。単なる一つの「脳腫瘍」というだけでなく、高血圧、糖尿病、肥満、心臓病、脳卒中といった重大な合併症を引き起こし、時には生命が危険な状態になることがあります。成長ホルモン産生腫瘍(先端巨大症、巨人症)や副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍(クッシング病)ではこうした合併症が高率に見られます。またプロラクチン産生腫瘍では、不妊、無月経といった症状が見られます。こうした脳下垂体腫瘍に対しては、「経蝶形骨洞下垂体腫瘍摘出術」といって、鼻から腫瘍の摘出術を行います。この方法だと、脳を全く触らないで手術することが可能です。ただ、この手術は脳神経外科のなかでも極めて特殊な方法で、手術で腫瘍を摘出し、手術のみでホルモンの正常化を図るようにするためにはその手術手技に高度な専門性が要求されます。また、脳下垂体腫瘍の中には、ホルモンを産生しないタイプの腫瘍があり、この場合は視力の低下や視野の障害といった症状で発症します。手術の方法は全く同じ方法で手術します。 もし、「脳下垂体腫瘍がある」と診断されたら、脳下垂体腫瘍を多く取り扱っている、専門医のいる病院を受診されることをお勧めします。入院期間は一般的にいって1 - 2週間です。「脳下垂体腫瘍があり手術が必要」と診断され、手術や術後の経過に不安を感じられたら、産業医科大学脳神経外科を受診してみて下さい。
[脳下垂体近傍腫瘍] 脳下垂体の近くには、脳下垂体腫瘍だけではなく、頭蓋咽頭腫や髄膜腫といった、他の脳腫瘍がよくできます。脳下垂体腫瘍と同様にホルモンの症状や、目の症状で発症します。この部位の腫瘍も手術が難しい場合が多く、多くの症例を手術している病院での治療をお勧めします。特に、「頭蓋底手術」といって、頭蓋骨の底を削ってできるだけ脳に障害が加わらないようにする手術方法があります。この手術方法を海外の専門家に師事して研修を積み、産業医科大学脳神経外科では、こうした特殊な手術手技を用いて手術しています。もし、このような病気で手術が必要であると診断され、不安を感じられることがありましたら産業医科大学脳神経外科を受診してみて下さい。
[小児の脳腫瘍] 15才くらいまでの子供さんに脳腫瘍が発生することが稀ならずあります。子供の脳腫瘍にも良性のものから悪性のものまで、さまざまなタイプの脳腫瘍が発生します。子供の脳腫瘍は大人と違って、ただその腫瘍を外科的に治療する、というだけでなく、その後の成長、治療期間の教育などさまざまな点に配慮をして治療に取り組む必要があります。脳腫瘍を専門にしている脳神経外科医だけではとても十分な治療ができません。特に、悪性脳腫瘍の場合は、手術後の化学療法や放射線療法が必要不可欠となってきます。こうした術後の治療を専門とする小児科医と共同で治療に取り組まなければなりません。産業医科大学脳神経外科では、小児専門病棟で化学療法を専門とする小児科医と共同でこれまで多くの子供の脳腫瘍の治療に取り組んできました。治療中の教育を考え、院内学級も整備されています。もし、子供さんに脳腫瘍があり手術が必要であると診断されましたら、ご両親の不安は計り知れないものがあると思います。その時は、産業医科大学脳神経外科、あるいは産業医科大学小児科の化学療法を専門にしている小児科医を受診してみてください。子供さん、ご両親の不安を払拭できるようにできるだけ分かりやすく治療の方法、術後の経過、術後の治療、治療中の教育などについてご説明させていただきます。
脳血管障害とは脳動脈瘤、くも膜下出血、脳出血、閉塞性脳血管障害(脳梗塞)、脳血管奇形、もやもや病などのことです。 最近、人間ドックだけでなく、MRI を使った「脳ドック」がさかんに行われるようになりました。その結果、いわゆる「未破裂脳動脈瘤」が見つかるようになりました。これを手術するかどうかは大問題です。破れると「くも膜下出血」という致死的な病気になりますが、破れる確率はそれほど高くないことが最近の調査で分かってきました。また、「破れる前に手術をしましょう」と言われ手術を受けられた方で、何も症状がなく元気にしておられた方が手術によって重大な合併症を負われてしまった、という例もあります。そうした意味で、脳ドックで偶然見つかった「未破裂動脈瘤」を手術するべきかどうかは大きな問題です。産業医科大学脳神経外科では外来で時間をかけて、手術した場合の利点、合併症、手術をしなかった場合に起こりうることを説明させていただいております。もし、決断に迷われて今後の治療方針に不安をいだかれることがありましたら、産業医科大学脳神経外科を受診してみて下さい。産業医科大学脳神経外科での治療方針、治療成績をお示しして、できるだけ分かりやすく説明させていただきます。
対象となる病気は頚椎から腰椎にいたるまでとり扱っております。頚椎では、頚椎変性疾患として、変形性頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、それに脊髄にできる腫瘍(脊髄腫瘍)です。変形性頚椎症は、頚椎の骨と骨との間にある椎間板(軟骨)がすり減って、頚椎の骨にとげのような骨の「出っ張り」ができ、脊髄を圧迫して症状を出す病気です。椎間板ヘルニアは骨と骨との間にある軟骨である椎間板が後ろにとびだして脊髄を圧迫します。後縦靭帯骨化症は脊髄の前にある後縦靭帯という靭帯が骨のように硬くなり脊髄を圧迫します。症状はどの病気もほぼ同じで、初めは手足の先のしびれで発症し、そのうちだんだん手の動きが悪くなる、歩きにくくなるなどの障害がでます。手術には病気の種類、病気のひどさ、病気の広がりによっていろいろな方法があります。 脊髄の手術は、一般に「怖い手術」と思われがちですが、脳神経外科では顕微鏡を用いて、大きく拡大し明るい視野で細かい手術を行っています。顕微鏡を用いた手術を行うようになってから脊椎・脊髄の手術も安全に行われるようになり、その術後成績も格段に良くなっています。特に最近は、インスツルメンターション手術といって、チタンとう金属でできた脊椎を固定する器具がいろいろ開発されました。これを使うことによって、術後安静にしなければいけない時間、退院までの期間が格段に短くなりました。一般的に頚椎の手術をしても、翌日から歩くことは可能ですし、2 - 3週間で退院できます。ただ、脊椎・脊髄の外科治療は、やはり高度な専門性を必要とします。一つ間違えて脊髄を傷つけるようなことがあれば、一生手足の動きの障害、ひどければ寝たきりの状態になってしまします。産業医科大学脳神経外科では、最近このインスツルメンターション手術を多く利用して、できるだけ患者さんの入院期間を短くするようにしています。これまで、手術で障害を負われた患者さんは幸いにして一人もありません。もし、手足のしびれ、動きが悪い、歩き方が悪くなったなどの症状を自覚されることがありましたら、産業医科大学脳神経外科を受診してみて下さい。 腰椎には、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎管狭窄症、腰椎すべり症などの病気があります。顕微鏡下で手術をすれば、術後1週間余で退院することができます。腰の痛み、足のしびれ、長く歩くことができない、などの症状は腰椎の病気の典型的な症状です。できるだけ早くMRI を撮って、病状、治療法について分かりやすく説明させていただきます。
新生児から学童期に至るまで、小児の中枢神経系の特殊性に応じた治療を行っております。小児科医との緊密なチーム医療で予後の向上に努めています。 [小児の水頭症] 脳は頭蓋内で脳脊髄液という液体に浮かんだ状態にあります。この液体は大脳の中心にある脳室という場所で産生され頭蓋内を循環した後、脳の表面で吸収されます。この循環がうまくゆかず、脳脊髄液が過剰になった状態を水頭症といいます。水頭症の原因は様々ですが、特に新生児期から乳児期にかけてよく起こります。低出生体重児は脳出血を起こしやすいことが知られていますが、これにより水頭症になることがあります。私どもの施設では専門の小児科医が特別の集中治療室(NICU)で新生児の全身管理、脳出血等の管理をしていますが、内科的な治療でも水頭症が進行する場合には頭蓋が異常に拡大したり、様々な神経症状をきたしたりして危険な状態となります。この場合には脳神経外科医がまずは脳室にチューブを挿入し髄液を体外に排出する措置をとります。患児が成長し一定の体重になったときチューブを体内に埋め込む手術(シャント)を行います。出生前に水頭症が発見された場合には産科医とも連携をとりながら出生時期や治療方針を決定しています。退院後も成長・発達を十分に考慮し、小児科医と脳神経外科医が長期間にわたり患児の経過をみています。シャントが故障することもあり、入れ替えを必要とすることもありますから出生時からの記録がある病院に通院することも大切です。 水頭症が髄液の通り道の閉塞により起こってくる場合、神経内視鏡を使用して別の通り道(バイパス)を作るという治療をすることもあります。この治療はチューブを体内に埋め込む必要がなく、髄液の流れすぎも起こらないため、現在は重要な治療法のひとつとなっています。
[頭蓋骨早期癒合症] 赤ちゃんの頭蓋骨は生まれてからしばらくはいくつかの部分に分かれていますが、成長するにつれてそれらが癒合してゆきます。出生時から頭蓋骨が癒合していると正常に脳・頭蓋骨が発達できず、頭蓋骨の変形や頭蓋内圧が上昇したりします。また、頭蓋だけでなく、顔面の骨の癒合を合併することもあります。この病気を頭蓋骨早期癒合症といい、ほとんどは出生時に診断が可能です。現時点では手術によってしか治療することができません。治療を成功させるために大事なことは早期に発見して、適切な時期に適切な手術を行うことです。手術方法や手術時期は頭蓋骨の癒合の仕方によって異なり、美容と脳の発達ということに注目して決定されます。治療法のひとつとして「顔面骨又は頭蓋骨の観血的骨移動術」という治療法があり、高度先進医療に指定されています。この手術は必要な場所に頭蓋骨に切り込みをいれ、その隙間に金属の骨延長器を装着するというもので、手術後2週間程度かけてゆっくりと頭蓋を延長させてゆきます。延長が終了したあと、骨がある程度癒合するまでの数ヶ月間延長器はそのままにしておきますが、最終的には手術で抜去します。複雑な頭蓋骨早期癒合症では複数回の手術を要することもあります。当科では美容面からは形成外科医、脳の発達面からは脳神経外科医が検討し、共同でこの手術を行っています。手術後も頭蓋顔面の成長が完了するまでは、定期的に経過をみてゆきます。
交通外傷・転落事故などにより、頭の中に出血を生じた場合、急激に意識障害が進行することがあり、一刻も早い加療が必要です。現在当院では、24時間体制にて救急車を受け入れており、緊急手術の必要な患者さんに対しては、救急部・集中治療部・麻酔科と連携することにより、迅速な診断・加療を行うように心がけています。また、手術後も状態により必要と判断した場合には、集中治療部において、バルビツレート療法・低体温療法を治療に取り入れています。
薬物抵抗性の難治性てんかんに対する外科的治療を行っています。関連各科、特に神経内科での評価を経て、厳密な適応のもとに手術を施行しています。 てんかんに対する外科治療で最も重要なことは、脳のどこにてんかんを起こす病変があるのかを正確に把握することです。そのためには、てんかんの種類、てんかんを起こしている時の脳波の正確な解析が非常に重要です。産業医科大学神経内科はてんかんの治療では日本のトップクラスにあります。ここで正確な診断を行ってもらい、外科的治療を行わないと治らないかどうかの判定を厳密に行ってもらいます。また、産業医科大学病院放射線科には全国に先駆けて3テスラMRI という非常に高画質で脳の病気が診断できる装置が導入されています。この装置を用いて、専門の神経放射線科医が脳病変の正確な診断を行います。術前に神経内科医、神経放射線科医と緊密な連携をとって病変部位を決定し手術に望んでいます。手術においては、正確に病変部位を切除できるように最新式のナビゲーションシステムを用いて顕微鏡下に安全に手術を行うようにしています。
顔面けいれん、三叉神経痛などに対しての外科治療を行っています。片側の顔面がまぶたを中心としてぴくつく状態を「顔面けいれん」、片側の顔面や歯が、顔を洗ったり食事をしたりひげを剃ったりしたときに瞬間的に痛みが走る状態を「三叉神経痛」といいます。原因はいずれも同じで、顔面神経、三叉神経が脳から出た根元で交差する血管によって圧迫されることによって起こります。症状が軽い時は、薬で治ることもありますが、ひどくなって「顔がぴくついて外に出られない、人前に出られない」「食事ができない、顔を洗えない、ひげを剃れない」という状態になると、手術が最善の治療法になります。手術は耳の後ろに小さな骨の孔をあけ、ここから顕微鏡下に顔面神経、あるいは三叉神経が見えるようにして、その根元にあたっている血管を横にずらして神経にあたらないようにします。
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| 文責:脳神経外科 更新日:2006年12月28日 |