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■ 輸血用血液製剤の供給・管理 |
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- 善意の献血により得られた輸血用血液は日本赤十字血液センターから必要量を購入し、各種の輸血用血液を各々の適正な温度と方法で保管管理し、必要最少限の量を無駄なく適切に患者様へ供給しています。
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- ●輸血用血液製剤と特徴
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主な血液製剤の種類 |
貯法 |
有効期限 |
使用目的 |
放射線照射の必要性※ |
赤血球製剤 |
照射赤血球液LR |
4〜6℃ |
採血後21日 |
組織への酸素運搬能の改善 |
○ |
照射洗浄赤血球LR |
製造後24時間 |
上記の他に,血漿成分による副作用防止 |
解凍赤血球LR |
まれな血液型の輸血 |
血漿製剤 |
新鮮凍結血漿-LR |
-20℃以下 |
採血後1年間 |
血液凝固因子の補充 |
− |
血小板製剤 |
照射濃厚血小板 |
20〜24℃
要・振とう |
採血後72時間 |
止血・出血傾向の改善 |
○ |
照射濃厚血小板HLA |
上記の他に,HLA抗体を有するため通常の濃厚血小板で効果がない場合 |
※血液製剤に放射線照射(15Gy)を行い,白血球(リンパ球)の活性をあらかじめ低下させることで,GVHD(移植片対宿主病)を予防することができます.(当院ではすべて照射製剤を使用しています)
- ●血液製剤在庫量(本数)
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輸血用血液製剤 |
A型 |
O型 |
B型 |
AB型 |
照射赤血球液LR 2 |
7 |
7 |
4 |
3 |
新鮮凍結血漿LR 240 |
7 |
7 |
4 |
4 |
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●待機的手術における輸血用血液の準備:T&S(Type and Screen)
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- 出血量が少なく,術中輸血の可能性があまりないことが予測される待機的手術例では,患者様のABO血液型,Rh(D)血液型,赤血球に対する抗体(不規則抗体)の有無を輸血前検査で確認し,Rh(D)陽性で不規則抗体を持っていない場合には事前に輸血用血液製剤は準備していません.
- 術中に緊急に輸血用血液が必要になった場合には,即座に適合する血液を準備し供給しています.
- この様な輸血用血液の準備方法をT&Sと呼び,限られた資源である血液製剤を有効利用するために多くの施設で実践されています.
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●不規則抗体が陽性の患者様,まれな血液型の患者様への輸血用血液の準備
輸血前検査において,患者様が不規則抗体を持っていたり,まれな血液型であることが判明した場合は,日本赤十字血液センターと連携して,その患者様にとって輸血しても安全な血液(適合血)を選択し供給しています.
- またこれらの患者様には、検査後に「血液型・不規則抗体情報カード」を発行しています.
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- ●最緊急時のO型赤血球製剤の供給
通常の輸血では,ABO・Rh血液型が同型の輸血用血液が準備されますが,当院では
- 1)患者様が特殊な血液型の時や出血性ショック等で血液型を確定する時間的余裕がない場合
- 2)大量輸血等により同型の血液製剤がすぐに供給できなくなった場合
- などの状況下での最緊急輸血に対しては,ABO不一致輸血による溶血性副作用が起こらないO型赤血球液の輸血で対応しています.
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■ 血漿蛋白分画製剤の管理 |
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- 輸血療法科ではヒトの血液を原料とする血漿蛋白分画製剤について薬剤部と共同で管理を行っています.
- 血漿分画製剤の申し込みと供給は薬剤部が窓口となり,適正使用の確認と啓蒙活動は輸血療法科が行っています.
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- 輸血療法科が共同管理している血漿蛋白分画製剤
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■ 自己血の管理・供給 |
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- 輸血療法科の自己血採血室にて採取された患者様の自己血は専用の血液保冷庫に保管し,手術の日までお預かりしています
- 当輸血療法科では認定輸血検査技師が主治医の指示により,採取された自己血を細胞成分と血漿成分に分離保存したり,組織接着剤として使われるフィブリン糊の作成を行っています.
- また,自己血は日赤血と異なり,感染症の有無にかかわらず貯血できるので,自己血の取り違えなどが起こらないように,専用バーコードと輸血管理システムにて管理しています.
輸血療法科で取り扱っている貯血式自己血
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自己血の種類 |
保存温度 |
内容 |
自己血全血 |
4〜6℃ |
自己血採取後の全血をそのまま保存しています. |
自己血赤血球MAP |
4〜6℃ |
主に赤血球成分を分離しMAP保存液を加え保存しています. |
自己血凍結血漿 |
-20℃以下 |
血漿成分を保存しています. |
自己血フィブリン糊 |
-20℃以下 |
手術日の数日前に血漿成分から作成し保存しています. |
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■ 病棟用血液保冷庫・フリーザーの管理 |
- 当院では手術室および各病棟に輸血療法科管理の輸血用血液専用保冷庫とフリーザーを配置し,適合性検査終了後の血液製剤を輸血が始まるまでの間一時保管しています.
- 保冷庫とフリーザーの温度管理は自動温度記録計により行い,輸血療法科職員が確認をしております.
- また,未使用の血液製剤は輸血予定日の翌々日には輸血療法科に回収し,血液製剤に異常のないことを確認後,他の患者様に転用することで限りある資源である輸血用血液の有効活用を行っています.
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■ 輸血同意書の管理 |
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- 輸血用血液製剤やヒト由来血漿分画製剤を輸血する場合は,患者様に対しわかりやすい言葉で説明し同意を得ることが法的に義務づけられいます.また,輸血料の算定においては,患者様に対し輸血の必要性,危険性について文書による説明を行った場合に算定することとなっております.
輸血療法科では輸血された患者様から同意書が取得されているか,患者様に説明・同意された輸血同意書の内容と実際に輸血された製剤に隔たりがないかを照合し,不備が見つかった場合は同意書の提出,改善を主治医に対してお願いしております.
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■ 輸血歴情報の管理 |
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- 血液製剤の輸血や血漿分画製剤の輸注が行われた患者様の記録(輸血日,Lot.No.,輸血時の住所等)は法律により医療機関で少なくとも輸血後20年間保存する事が義務づけられています.
- この制度は万が一,輸血による感染の可能性が考えられた場合,輸血された患者様を特定し適切に対処するためにおこなうものです. 輸血療法科では個々の患者様の輸血に関する情報を記録保管し,必要に応じ患者様および関係機関に即座に情報提供できるよう努めております.
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■ 輸血副作用情報の管理 |
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- 輸血は他者の血液あるいは血液成分を輸注するいわゆる細胞移植であるため,副作用や合併症を完全に防止することは不可能です.
- 輸血療法科では患者様ごとに輸血後の副作用情報を収集し,血液センターと協力して原因の調査を行っております.またこれらの情報から次回の輸血時に,必要があれば特殊な血液製剤を準備したり,輸血前にあらかじめ薬剤の投与を願いするなど輸血副作用の防止,軽減に役立てています.
平成15年の薬事法改正により,医薬品による副作用・感染症発生時に,直接厚生労働大臣に副作用・感染症報告を行うことが義務化されました.(薬事法第77条の4の2)
当院では血液製剤の副作用・感染症報告の窓口は輸血療法科が担当しています.
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■ 赤十字血液センターとの連携(遡及調査協力) |
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- 赤十字血液センターではウィルス遺伝子レベルの感染症検査を実施し,輸血用血液製剤の安全性の確保に努めておりますが,もし過去に献血経験があり,以前は感染症陰性であった献血者が今回陽性(陽転化)となった場合,過去に供給した血液製剤がどの医療機関の患者様に輸血され,その後患者様に輸血後感染症が発生していないか遡及調査を行う場合があります.
- 当院では輸血療法科が遡及調査の窓口となり,輸血歴情報から該当する患者様を特定し,主治医をとおして患者様へ輸血後感染症の危険性をお知らせするとともに,ご来院いただき輸血後感染症検査へのご協力をお願いをしております.
また,その結果は赤十字血液センターへ報告し最終的には厚生労働省へ報告されます.
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