腎臓病の基礎知識

慢性腎炎とは

蛋白尿や血尿が続く場合、慢性腎炎が疑われます。腎炎の初期は尿検査以上以外の症状に乏しく、かなり進行し尿毒症症状が出るまで放置される方も中にはいらっしゃいます。しかし、こうなると腎機能の回復は難しくなります。つまり、腎炎では症状が出る前に適切な診断と治療を行うことが重要です。そのためには腎臓の組織を少量採取して検査する「腎生検」という方法が欠かせません。

血液透析とは

血液透析(HD)は、ポンプで血液を体の外に出し、「ダイアライザー」と呼ばれる透析器に血液を流すことで、身体にたまった余分な水分や毒素を除去する治療法です。きれいになった血液は再び体内に戻します。
治療は1回に4〜5時間、週に3回、病院で行います。透析中はベッドに横になるか座った状態で過ごします。透析に必要な血流を得るために「シャント」手術を行います。手首あるいは肘付近で動脈と静脈をつなぐことにより、動脈の血液を静脈に流します。こうすることで、簡単に必要十分な量の血液を得ることができるようになります。
慢性腎不全の治療として現在一番普及している治療法です。自宅や職場に近く通いやすい透析病院で行ないます。

腹膜透析とは

腹膜透析(CAPD)は、お腹の中に腹膜透析液を点滴のように注入し、お腹の膜(腹膜)を介して身体にたまった余分な水や毒素を除去する治療法です。
透析液を体内に数時間貯留した後、新しい透析液と交換することを1日3-4回行ないます。夜間に自動的に液の交換をする「APD」という方法もあります。腹膜透析を行うにあたり、透析液を出し入れするためのプラスチックの管(カテーテル)をお腹に埋め込む手術を行います。
腹膜透析は血液透析と比べ、透析による血圧の変化が少なく、体調が安定します。特に、心臓に問題の有る方には負担が少ない治療法です。通院が月1-2回と少なく、ご自分の生活リズムに合わせた治療が可能なため、仕事や学業を行ないやすい方法です。通院の困難な高齢者にも適しています。

多発性嚢胞腎とは

多発性嚢胞腎とは、両側の腎臓に多数ののう胞が発生する遺伝性の腎臓病です。腎臓以外にも肝のう胞や脳動脈瘤など、様々な臓器に障害が生じることが知られています。子供の頃は症状がありませんが、20〜30歳代以降になると腎のう胞が少しずつ大きくなってきます。そうなると腎機能も次第に低下するため、進行すれば人工透析を受けなければならなくなります。60歳頃までに約50%の方が腎不全になるといわれています。
この病気の頻度は約4,000人に1人と言われており、日本には約31,000人いると推測されています。両親のいずれかがこの病気の場合、2分の1の確率で子供に遺伝します。
これまでこの病気に対して有効な薬はあまりなかったのですが、V2受容体拮抗薬のトルバプタン(商品名:サムスカ)という薬が登場し、腎のう胞が大きくなるのや腎機能が低下するのを抑制する効果が期待されています。2015年1月より多発性嚢胞腎は医療費助成対象疾病(指定難病)になり、医療費の補助を受けることができるようになりました。この治療を受けるためには必ず難病指定医に診断してもらう必要があります。産業医科大学病院腎臓内科は難病指定医療機関です。指定医療機関で受けた医療だけが、医療費助成の対象となりますので御注意下さい。

[文責:第2内科学講座 穴井 玲央 更新日:2021年3月19日]