診療分野

核医学部門

形状のみでなく臓器の機能を評価する

核医学検査とは

CT や MRI 、超音波検査が主に臓器の形や大きさなど形態を調べるのに対し、核医学検査とは主に臓器の機能を調べる検査です。放射線を放出する少量の放射性医薬品を投与し、標的臓器の機能を定量的に評価ができます。
薬剤投与後は 20-30分間横になるだけで写真が撮れるため、患者さんにとって苦痛の少ない検査です。

放射性医薬品とは

放射性医薬品は放射線を放出する薬剤です。放出される放射線は 1 回の検査あたり 0.2-8ミリシーベルト( 1 年間に受ける自然放射線が約 2.4 ミリシーベルト)で、人体への影響もほぼ心配ありません。

産業医科大学での核医学検査

当院のPET/CT装置
当院のPET/CT装置

現在 3 台のガンマカメラおよび1台のPET-CTが稼働しています。それぞれの標的臓器にあわせて様々な核種を用いた多彩な検査が存在しますが、特に検査数が多いのは、18FDGを用いたポジトロン断層撮影、骨シンチグラフィ、心筋血流シンチグラフィ、脳血流シンチグラフィなどです。

PETCT検査

FDGを用いたポジトロン断層撮影で、主に悪性腫瘍 (早期胃癌を除き、悪性リンパ腫を含む)の病期診断に用いられ、悪性腫瘍の治療方針決定に重要な検査です。
その他、難治性部分てんかん、高安動脈炎等の大型血管炎の診断、心サルコイドーシスの診断、虚血性心疾患におけるバイパス手術検討のための心筋バイアビリティ診断にも用いられます。

PETCT検査
PETCT検査

SPECT検査

標的臓器に合わせ様々な薬剤を用いた多様な検査があります。

  1. 骨シンチグラフィ

    99mTcを用いて転移性骨腫瘍の検出し、骨の炎症や骨折などの骨疾患を診断します。

  2. 心臓核医学検査

    201Tlを用い、虚血性心疾患の検出、心筋梗塞の描出が可能です。

    心筋シンチグラフィ
    心筋シンチグラフィ
  3. 脳核医学検査

    脳血流SPECTでは脳梗塞、認知症、パーキンソン症候群、てんかん、脳腫瘍、外傷等さまざまな脳病変の血流異常を定量的に評価できます。ダットスキャンはドーパミントランスポーターを可視化でき、ドパミン神経の変性・脱落を伴うパーキンソン病(PD)を含むパーキンソン症候群(PS)の早期診断や、レビー小体型認知症(DLB)の診断に有効です。

    脳血流シンチ
    脳血流シンチ
    ダットスキャン
    ダットスキャン
  4. その他

    ガリウムシンチ、肺換気・血流シンチ、腎シンチ、甲状腺シンチ、副腎シンチ、副甲状腺シンチ、肝シンチ、唾液腺シンチ、骨髄シンチ、脳槽シンチ、メッケル憩室シンチ、出血シンチ、循環血液量測定、精巣シンチ、センチネルリンパ節の検索等の検査を行っています。

治療を担う最新医療の重要分野

産業医科大学におけるアイソトープ治療

アイソトープ治療とは、物質を構成する元素のうち放射線を出す性質のあるもの(ラジオアイソトープ(RI);放射性同位元素)を体内に投与する放射線治療です。
古くから甲状腺疾患に対するヨウ素131内服療法は行われていました。
近年、新たに、悪性リンパ腫に対するイットリウム90(ゼヴァリン®)治療、去勢抵抗性前立腺癌に対する塩化ラジウム223(ゾーフィゴ®)治療が開発され、保険適応となっています。

核医学の将来

近年の科学の進歩により、物質の細胞への取り込みや細胞内での変化の異常の起こり方が明らかになり治療薬をこれらの知識に基づき合成できるようになりました。
核医学を用いるとこうして開発された薬剤が人体内で設計通りの部位に集まるかを安全に画像として検討することができます。核医学は機能画像のみならず、治療薬開発においても推進役となる重要な分野であるといえます。

文責 : 産業医大放射線科学講座 林田佳子

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