自動車運転には注意機能(様々な対象へ目を向ける、適切なものを選択する等)や遂行機能(適切な操作手順、運転経路の立案等)など様々な機能が必要です。また、失語症(言葉の理解と発話が難しくなる症状)を生じた方への検査では言語の影響により成績が低くなることがあり、結果の解釈が難しくなっています。
近年、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)で失語症や注意機能・遂行機能が改善したという報告が多数あります。そこで、机上検査の成績が低い失語症の方にtDCS施行後に評価を実施すれば結果が解釈しやすくなり、さらには高次脳機能障害の方では注意機能等が改善し運転適性判定が向上するのではないかと考え、本研究を実施することとしました。
脳卒中発症後の片麻痺の改善には個人差があり、発症年齢、脳卒中の種類、障害の部位や範囲だけでは説明できない部分があります。その要因の1つとして考えられているものに、神経可塑性に関与する脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain derived neurotrophic factor)があり、有酸素運動によって血中濃度が上昇することが報告されていますが詳細は分かっていません。本研究では、亜急性期の脳卒中患者さんについては片麻痺の改善と血中BDNFを含む生化学的因子との関連を検討し、慢性期の脳卒中患者さんについては経頭蓋直流電気刺激(tDCS:Transcranial direct current stimulation)による片麻痺改善の効果と血中BNDFを含む生化学的因子との関連について検討します。またBDNFの分泌に影響しているといわれているBDNF遺伝子多型の有無との関連についても解析し、脳卒中後の片麻痺回復のバイオマーカーとして活用できる可能性について検討します。