健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

職場で肝炎ウイルス検査が受けられる機会を作りましょう。

1.肝炎検査を行う意義と目的

ウイルス性肝炎は、日本人に最も多い慢性感染症の一つです。B型肝炎とC型肝炎を合わせて、わが国には約350万人のキャリア(無症状の人や自分で知らない人を含む感染者)がいると推計されています。ところが、肝炎ウイルスは、かぜやインフルエンザのように症状が現れることが少なく、しかも何年にもわたり感染が持続するのが特徴です。ウイルス性肝炎を放置していると、肝細胞が徐々に破壊されて、劇症肝炎、肝硬変、肝がんを引き起こすことがあります。発症すると長期入院が必要となり、職場では貴重な労働力が失われます。しかし、2013年からC型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス剤(DAAs: direct acting antivirals)と呼ばれる経口治療薬が次々と発売されるなど、近年、ウイルス性肝炎を根本的に治せる可能性が格段に高まっています。重症化する前に発見できれば、本人はもとより職場にも非常に有益です。

肝炎ウイルスの感染ルートは、母親から、配偶者から、輸血や注射針などさまざまですが、知らないうちに感染している人が大勢います。ところが、平成23年度肝炎検査受検状況実態把握事業報告書の国民調査によれば、今までに肝炎ウイルス検査を受けたことがある人の割合は26.2%にとどまっていて、キャリアの過半数が感染を知らずに生活しています。この調査で、検査を受けたことがある6,229人のうち、そのきっかけが「職場や健保組合の健康診断や人間ドック」という人が37.4%を占め、実際に「職場で肝炎ウイルス検査を受けた」という人は17.1%と報告されています。すなわち、職場での広報や検査の実施はとても有効です。

このようなことから、労働基準局は、平成14年、平成16年及び平成23年に、職場での肝炎ウイルス検査の実施を勧奨するよう繰り返し指導を行っています(職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について、平成23年7月28日付け基発0728第1号、https://www.hospital.or.jp/pdf/16_20110728_01.pdf)。自治体ごとに検査費を補助する仕組みも整備されています。

一方、採用選考の際に、応募者の適性や能力を判断する上で肝炎検査が必要と判断されるような作業はほとんど想定されないことから、応募者を対象とした肝炎検査は実施すべきではありません(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0502-1.pdf)。また、職場においては、ほとんどのウイルス性肝炎は日常生活でうつる病気でもありません。

したがって、職場が行うべきことは、働く人々が肝炎検査を受けて自分で判断し行動する機会を与えることです。そして、ウイルス性肝炎は早く治療すれば治る病気であるという知識を広め、少なくとも一度は肝炎検査を受けるように指導することです。

【参考資料】
肝炎ウイルス検査を受けたきっかけ(6,229人、重複回答あり)
肝炎ウイルス検査を受けたきっかけ
【参考資料】
肝炎ウイルス検査を受けた場所(6,229人、重複回答あり)
肝炎ウイルス検査を受けた場所

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このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。