健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

肝炎ウイルスによる慢性炎症が進むことがありますが、新しい治療薬により通常勤務に従事しながら治療できるようになっています。

1.ウイルス性肝炎の基礎知識

慢性のウイルス性肝炎は、ほとんどがB型肝炎かC型肝炎のいずれかです。その原因であるB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)は、いずれも血液等の体液を介して感染し、長い間、肝細胞に潜む性質を持つウイルスです。感染経路が判明し検査法や予防法が開発されるよりも前に輸血や出生時等に感染した人が多いと推定されています。肝臓は沈黙の臓器とも言われていて、ウイルス性肝炎を患っていても自覚症状が現れない期間が長く続きます。そのため、気が付かないうちに病気が進行し、症状を感じたときには肝硬変や肝がん等に発展している場合もあります(http://www.kanen.ncgm.go.jp/kan-en/knowledge/)。

B型肝炎とは、HBVに感染することによって発症する肝炎のことです。HBVは血液や体液を介して感染します。感染の原因は、輸血や注射針の使い回し、性行為、HBVに感染している母親から生まれる時の新生児への母子感染などです。このうち、免疫が未発達の新生児や乳児はHBVを排除できず慢性化し、それ以降は急性肝炎で治ることが多いものの一部は慢性化します。特に、近年、欧米型のウイルス(ジェノタイプA型)による急性肝炎が増加し、このウイルスは慢性肝炎に移行しやすいことがわかっています。現在、日本のB型肝炎の患者・感染者は110万人〜140万人いると推定されています。

C型肝炎とは、HCVに感染することによって発症する肝炎のことです。感染の原因は、輸血や注射針の使い回しなどです。HCVは1988年に発見され、1992年から検査法が普及しました。HCVが発見される前は、B型肝炎以外の慢性肝炎を非A非B肝炎(nonA, nonB肝炎)と呼んでいました。大人になってからHCVに感染している人の血液に接した際に、HCVはHBVよりも感染しにくいのですが慢性化は生じやすく、肝硬変や肝がんに移行する率も高いことがわかっています。日本のC型肝炎の患者・感染者は190万人〜230万人いると推定されています。そして、肝がん患者の約70%はC型肝炎が原因です。

近年、慢性ウイルス性肝炎の治療法は大きく進歩し、早期の段階で発見して適切な治療を受ければ、治すことも可能な病気になりました。B型肝炎では、自分の免疫系を強めて肝炎ウイルスの増殖を抑えたり排除したりする効果のあるインターフェロンやウイルスの増殖を抑える核酸アナログ製剤を使用する方法が有効です。ペグインターフェロンとは、ポリエチレングリコール(PEG)を組み合わせてインターフェロンの効果を長持ちさせる製剤です。C型肝炎では、直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)と呼ばれる経口投与が可能で副作用もほとんどない抗ウイルス薬が登場し、HCVを完全に除去できる場合が増えています。

新しい治療法は高額になるので、現在、全国の自治体で、インターフェロン治療、インターフェロンフリー治療(DAAsによる治療)、核酸アナログ製剤治療に対する医療費助成が行われています。B型肝炎とC型肝炎の検査も地域ごとに無料で実施されています。いずれも自治体によって制度が異なりますが、居住地の保健所で申請や問い合わせを受け付けています(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/linklist01.html)。

このように、現在は、職場を含めてさまざまな機会に肝炎検査を受けることにより、早期にウイルス性肝炎を発見できれば、業務を続けながら適切な治療を受けることができるようになっています。

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