健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

2.職場における健康教育

まず、働く人々に対して、肝炎検査を受けるように勧めます。早期発見することで働きながら治療できるようになっていることなど、肝炎検査を受ける意義をよく理解してもらうことが大切です。また、定期健康診断では肝炎検査は実施しておらず、たとえ肝機能(GOT(AST), GPT(ALT))が正常であっても肝炎にかかっている可能性があることも理解してもらう必要があります。

万一、陽性となった場合には、必ず、精密検査によって本当に慢性のウイルス性肝炎にかかっているのかどうかを確認し、もし、かかっているのであれば専門の医療機関で治療を受けるように勧めます。もし、かかっていた場合は、治療が終了するまではアルコールの摂取を控えること、職場の仲間からは飲酒を勧めないことが大切です。そして、検査結果や病状等は本人のプライバシーであることを配慮するように促します。健康情報を取り扱う上では、もし、自分が相手の立場であったらどのように取り扱ってほしいのかという気持ちで接することが大切であることを教えます。

また、慢性のウイルス性肝炎にかかっていても、ほぼ血液を介した感染しかありませんので、医療行為を行うような職場以外では感染するリスクはほとんどなく、食器、衣類、工具を共用しても構わないことも理解させ、偏見や差別が生じないようにします。

医療行為を行う職場では、血液、針、刃物類を取り扱う際には、「すべての患者の血液、体液(汗を除く)、分泌物、排泄物、粘膜、損傷した皮膚には感染の可能性がある」とみなして感染を防ぐ手袋等の保護具を着用する等の配慮(スタンダードプリコーション)を尽くして作業に当たることを確認します。職場における肝炎ウイルスへの感染リスク低減対策については、英国安全衛生庁(HSE)の「職場における血液媒介性感染を防止するための危険病原体防護に関する諮問委員会」による詳細な報告書「HIVおよび肝炎」(英文:http://www.hse.gov.uk/biosafety/diseases/bbv.pdf)が公表されています。わが国とは法令や制度が異なりますが、その和訳(pdfファイル「170208_HSE_HIV and Hepatitis和訳」)を作成しましたので、参考にしてください。

さらに、職場の管理監督者にも肝炎検査が陽性であった者に対する対応のあり方について教育することが望まれます。まず、本人に受診行動を促し、労働時間や業務内容について可能な範囲で配慮することを勧めます。万一、業務負荷を軽減する必要があるときは、主治医や産業医の意見を求め、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン等)に曝される業務、飲酒機会の多い業務、深夜業、交替勤務、長時間労働、国内・海外出張、海外赴任などについて配慮が必要かどうかを確認し、必要な対策を講じることを勧めます。

(C)2017 IIES UOEH

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。