健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

2.肝炎検査の推進と費用助成制度

会社には病気休暇の取得や職場復帰を目的とする主治医の診断書が提出されることがあります。そのような診断書を提出する人の中には、肝硬変や肝がんを積極的に治療しながら仕事も両立させようとがんばっている人もいます。

病気休暇を取得するための診断書であれば、実際には病名や病状は必要ではなく、主治医が医療機関や自宅での療養が必要と判断したことが証明されていれば十分と考えられます。したがって、診断書の内容を解釈する必要はなく、むしろ誤解や偏見を生じないように勝手な解釈を控えるべきです。休業期間についてより詳しい情報が必要であれば、直接、本人に尋ねるか、本人の同意を得た上で主治医に改めて確認することが望ましいでしょう。

一方、職場復帰を申請する診断書であれば、業務についてよく知っている産業医等の医師に、職場復帰の可否やその際に必要な就業上の措置について判断を依頼します。通常は、文書による判断だけではなく、直接、産業医等が本人との面談を行ったり、必要に応じて、主治医にも改めて問い合わせたりすることで、より適切な判断が行えるようにします。相談する医師がいない事業場では、産業保健総合支援センター地域窓口(地域産業保健センター)の医師に尋ねることができます。

労働衛生行政の通達(「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成27年11月30日付け基発1130第2号)、http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/PDF_7.pdf)は、職場で健康情報を利用する際には「医学的判断や知識が必要とされるため、産業医・保健師等が情報を加工・判断を要することがある」としています。ここで、「加工」という言葉の意味は、職場で勤務日や作業内容を調整するために必要な人事情報に変換するという意味です。その際、病名や症状を説明する健康情報をそのまま使用する必要性は乏しく、いつからどのような業務に就くことができるかといった具体的な人事情報に置き換え、健康情報は必要最小限にとどめることが大切です。そして、どうしても健康情報を直接利用したいという場面では、本人の同意が得られた範囲内で取り扱います。本人の同意が得られない場合の直接利用は、本人の生命や健康を守るために重要かつ緊急と判断できる場合に限定すべきでしょう。そのような判断は、本人の病状について知っている家族や医療職が担うべきでしょう(図)。

このように、健康情報の解釈はなるべく産業医等の医療職に任せるようにしましょう。非医療職だけで解釈することは誤解や偏見につながりやすく、プライバシー保護に関するリスクとなる場合があるので慎む必要があります。また、衛生管理者等の非医療職による取り扱い方について事業場でルール化したり、社内で規程を設けたりしておくようにしましょう。その際、もし自分が当事者であったとしたら、「自分の健康情報はどのように利用されることを期待するか」という視点で検討すると適切に判断することができます。

図 職場における個人の健康情報を取り扱う上での判断
職場における個人の健康情報を取り扱う上での判断

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