健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

2.就業上の措置

労働安全衛生法は労働者の安全と健康の確保を目的としており、その第66条の5は健康診断結果に基づき事業者が必要に応じて就業上の措置を講じることを規定しています。同法では、定期健康診断等の結果に基づいて、会社として産業医の意見を尋ね、その意見に基づいて、会社が「就業上の措置」や「保健指導」を行う「事後措置」と呼ばれる仕組みになっています(図1)。これらの法令にしたがって具体的にどのような措置を講じれば安全面や健康面で相応の配慮をしたことになるのか、については労働者の健康状態と職場や作業の実態の両方を承知している医師の意見を求める必要があります。

会社が、本人が業務を続けながら精密検査や治療を受けられるように配慮するには、まず、主治医と相談して業務や日常生活において注意すべき事項がないか、医学的な視点から意見を求めます。

次に、産業医が選任されている職場では、産業医との面談を実施し、主治医の意見を伝え、改めて業務や日常生活についての意見を求めます。その際は、定期健康診断後に行う事後措置における「就業上の措置」と同様に、現在の仕事をそのまま続けてよいのか、職場や作業が改善できないか、あるいは業務を制限すべきか、について検討します(図2)。ウイルス性肝炎が進行した場合に、その病状に影響する可能性があるために制限すべき業務として、重量物の取り扱い等の身体負荷の高い業務、ハロゲン化炭化水素など肝代謝の化学物質に曝露される業務、食事や飲酒の機会が多い業務、深夜業、交替勤務、長時間労働、国内・海外出張、海外赴任などが想定されますが、逆に、過度の安静は脂肪肝を助長する可能性があり望ましくない場合もありますので、個別に丁寧な判断が必要です。海外赴任の可否については、赴任地域によって生活環境や医療事情が大きく異なるため、主治医・産業医と連携しながら個別に判断します。海外赴任を許可する場合でも、一時帰国時に定期的な受診を条件とし、病状が悪化した際には速やかに帰国させる等の対応を予め決めておくことが望まれます。また、インターフェロン治療を行う場合は、それに伴う副作用により一時的に倦怠感等が認められる場合がありますので、職場の近くに臥床できる休養室を準備し、症状がある時には休養を取らせることが望まれます。適切かつ実施可能な対応をとるには、産業医を交えて職場の上司や人事担当者とも相談します。

産業医が選任されていない職場では、産業保健総合支援センター地域窓口(地域産業保健センター)の医師(登録医)に相談することができます。その際は、職場や作業の具体的な内容に関する情報を提供して、業務の内容を理解してもらった上で相談します。また、主治医に時間を確保してもらい、職場や作業の具体的な内容に関する情報を提供して、相談してみる方法もあります。会社と主治医が情報交換をする際に使用可能な書式は「事業場における治療と職業生活の両立支援に関するガイドライン」(平成28年2月23日付け厚生労働省公表)に例示されています(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000116659.pdf)。

図1 定期健康診断結果に基づく事後措置の流れ
定期健康診断結果に基づく事後措置の流れ
注:就業上の措置は産業医の意見に基づき会社が決定する
図2 定期健康診断結果に基づく事後措置の流れ
定期健康診断結果に基づく事後措置の流れ
注:産業医は労働者の健康状態に応じて作業環境・作業の見直しと就業の制限等について事業者(会社)に意見を述べる
図3 職場における健康情報の流れと医療関係者の立場
職場における健康情報の流れと医療関係者の立場
注:産業医や産業看護職が選任されていなければ産業保健総合支援センター地域窓口(地域産業保健センター)が機能を代替する

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