健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

4.業務負荷の軽減

業務による負荷の軽減(業務負荷軽減)の方法は、多角的に検討します。一般に、通院や治療を続けながら現在の業務をすることが難しくなった場合は、就業適性を確保するために、職場や作業の改善といった労働衛生対策が優先されるべきで、次に、治療や生活習慣改善といった保健行動に期待し、そして、そのいずれも実現不可能な場合に人事的な措置を行うことが望ましいとされています(表)。

そこで、まず、職場環境や作業方法を改善して負荷を軽減できないか、について検討します。作業台の調節や立作業の削減といった職場や作業を改善できれば、本人だけでなく誰にとっても快適と言えるユニバーサルデザインによる職場を構築できる契機となります。ここで、「重量物は持たないようにする」といった労働者の判断や行動に依存した対策は、会社の指揮命令下では現実にはなかなか実践しにくいことがあります。したがって、なるべく職場環境の改善を作業方法の改善よりも優先することが勧められます。

やむを得ず就業を一部制限したり業務や配属先を変更したりすることは、なるべく本人の希望に沿ったものになるように配慮します。本人が希望しない就業制限や配置転換は、就業意欲を損ないかねません。本人が希望しないのに休業させることはなるべく回避すべきです。

逆に、業務によって増悪しそうな健康状態であっても本人が就業を希望する場合もあります。その際は、家族のほか本人以外に病状を理解している関係者が就業に同意していることが必要です。その上で、会社は、産業医に相談して、限定的に就業を許可することが考えられます。また、そのような判断をした際は、会社として安全配慮義務を尽くしたことを示す記録を残しておくことが重要です。

万一、会社として休業を命じたり職場復帰を許可しなかったりする場合には、会社として本人に与える業務がまったく存在しないのか、について慎重に検討する必要があります。特に、解雇という判断は厳しく制限されており、労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています。傷病による労働能力の欠如や低下を理由とする解雇では、会社として配置転換や職種変更等による雇用維持の可能性を十分に検討した上でも職務遂行が不可能な程度にまで就業能力が低下していること示す必要があります。法廷での係争に発展した結果、会社側が損害賠償を命じられた判決がいくつもありますので、注意が必要です。労働条件やいじめ・嫌がらせなど労働問題に関するあらゆる分野についての相談は、都道府県労働局にある「総合労働相談コーナー」でも相談ができます(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html)。

表 就業適性を確保するための対策の優先順位就業適性を確保するための対策の優先順位

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