健康経営のためのウイルス肝炎対策

このサイトは、厚生労働科学研究費補助金肝炎等克服政策研究事業「職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究」 (H26-肝政-一般-002)の成果として開設しました。

10.肝炎治療と就業の両立支援

ウイルス性肝炎は、糖尿病や高血圧といった慢性疾患と同様に、早期に発見し、適切な治療を行えば通常業務を遂行できる疾病です。症状のない段階でも、通院による治療や経過観察を継続することが基本です。しかし、早期の段階であるほど本人の自覚が乏しかったり周囲の気遣いが少なかったりして、業務の都合や多忙さに追われ、つい通院を中断してしまい、時に、急激な病気や症状の悪化を招く事例がしばしばみられます。

したがって、会社は、本人から通院のために労働時間や業務内容について配慮を希望する申し出があれば、なるべく通院時間が確保されるように配慮します。海外出張、長期出張、不規則な勤務等は、通院の妨げとなる可能性が高いので、治療中あるいは治療予定の人に対しては回避するなど柔軟な対応が望まれます。

インターフェロン治療を行う場合は、週に1回、1年間の通院が必要になったり、入院して治療したりすることもあります。また、発熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲不振等の自覚症状や脱毛、うつなどの深刻な副作用が認められることもあり、就業に影響することがあります。これらの症状や副作用の程度や出現する時期は個人差が大きいので、職場では本人の体調を確認し、申し出があれば業務負荷を軽減するなど柔軟な対応が望まれます。休憩時間には横になれるスペースが確保できればさらによいでしょう。本人の承諾が得られれば、あらかじめ、職場の上司が治療のスケジュールを共有しておくことで、急な体調悪化にも適切な対応が可能になります。

一般に、慢性肝炎の段階では過度な安静は不要とされています。むしろ、適度な運動によって体力の維持、肝臓に有害な脂肪の沈着を防ぐ効果が見込まれます。したがって、本人の病状が安定していれば、就業制限はほとんど必要ありません。

一方、肝硬変や肝がんに進行している場合は、病状に応じて安静が必要なことがあります。肝硬変が進行すると、倦怠感や食欲低下等から体力が低下することがあります。さらに病状が進行すると、記憶力の低下や瞬時の判断が遅れるなど肝不全や肝性昏睡の症状が現れることがあります。このような症状を認めた場合には、車の運転や危険作業は禁止するといった措置が必要なことがあります。また、肝がんが進行すると、入院を伴う治療が必要となります。肝がんは、1回の治療が終了しても何度か繰り返して治療が必要になることがありますが、病状が安定すれば、再び就業することが可能になります。このような事例では、個別に主治医や産業医による意見を尋ね、就業上の措置が十分かどうかを確認する必要があります。

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