患者の皆様へ

上部消化管(食道・胃)グループ

産業医科大学 消化器・内分泌外科
上部消化管グループ

腹腔鏡下手術の急速な普及とともに様々な技術的問題が起こったため、日本内視鏡外科学会が2005年に技術向上と安全性を高める目的で日本内視鏡外科学会技術認定医制度を制定しました。当科では日本内視鏡外科学会技術認定医による安全な内視鏡外科手術を提供しており、さまざまな病気に対して内視鏡外科手術を行っています。現在、上部消化管グループは私のほか、村山、又吉に加え、佐藤、田村が担当しています。食道切除・胃切除ともに手術方法は確立しており、さらにカラダに優しい手術のために減孔式腹腔鏡下手術(Reduced port surgery)を一部で導入しています(図)。

食道

2015年の実績では、食道亜全摘術13例、食道全摘+喉頭全摘が1例、噴門形成1例でした。第1外科、耳鼻科、形成外科の3科合同で手術をすることもある大きな手術ですが、大学病院であるメリットを活かし、安全に手術を行っています。食道切除は全例腹臥位での完全胸腔鏡下手術を行っています。従来の開胸手術に比べ、胸腔鏡下手術ではキズが小さいため術後の回復が早く、痛みも少なくなっています。また、ステージII/III症例では、術前に抗癌剤治療を行っています。手術だけではなく抗がん剤、放射線療法などを組み合わせた治療で少しでも助かる患者様が増えるよう努力しています。

腹腔鏡下幽門側胃切除術・胃全摘術は十分なリンパ節郭清も含め、非常に安定した手術手技となり、縫合不全などの合併症もほとんど経験していません。2015年の実績では、腹腔鏡下幽門側胃切除23例、開腹幽門側胃切除術4例、腹腔鏡下胃全摘術21例、開腹胃全摘術7例で胃がんに対する根治的胃切除術55例中44例(80%)が腹腔鏡下手術でした。一部の早期胃がんで取り入れているキズの小さな減孔式腹腔鏡下幽門側胃切除術(Reduced port surgery)も安全に行えており、よりカラダに優しい手術を目指しています(図)。キズは小さいですが、当科で開発した便利な手術器械などを組み合わせることで開腹手術や従来の腹腔鏡下手術と同じようにがんや胃を取ることができます。

また、GISTなどの胃粘膜下腫瘍に対しては、できるだけ正常な胃を切らなくてすむよう第3内科と協力して先進的な腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を行っています。

当科ではできるだけカラダに優しい手術、治療を行っていますが、病気、進行度などによりすべてのみなさまがご希望の手術を受けて頂けるわけではありません。詳しくは外来でおたずね下さい。

胃がんの抗がん剤治療では、オキサリプラチンが胃がんに対し、適応拡大となり、血管新生阻害薬である、サイラムザも国内で使用可能となりました。これら薬剤を手術と組み合わせる事で総合的な治療にも力を入れています。

上部消化管グループでは、さまざまな専門の医師が一緒に働いている大学病院という特徴を活かしつつ、腹腔鏡下手術、TANKOを含めたReduced port surgery、LECSなど最新かつ低侵襲手術を目指すとともに、抗がん剤治療や拡大手術など積極的な治療も行うことで一人でも多くの患者様が助かるよう努力してまいります。

文責 柴尾 和徳(2016年1月14日)



文責:第1外科学教室 更新日:2016年05月18日