当院における放射線部の部門としての役割は、X線を始めとした電磁放射線の他、多くのエネルギーを利用して画像診断を行い、診療各科に提供すること、また放射線による治療を行うことです。診療各科ならびに地域医療機関における画像診断の期待に、また、患者様のQOLを尊重した放射線治療に応えるべく日々の業務を行っています。


放射線治療

放射線治療とは,放射線を発生させる装置や線源を用い,放射線を人体に照射して治療することをいいます。
放射線による細胞の感受性や回復の違いを利用し,正常な細胞の障害を避けながら病因となる細胞の根絶を目指す治療法です。
放射線治療は,治療中まったく痛みを感じない治療法です。
病気の種類や存在する場所により放射線の種類,装置を選択します。
放射線治療は,決められた回数の治療を終えて,はじめて一定の効果が出るものです
 
 
第1リニアック室
 第1リニアック室

X線を照射する部屋です。エネルギーは4MVのX線を用いて治療が可能です。
またこの装置には,5mm幅の多重絞り(マルチリーフ)という,病変部に絞り込んで放射線照射ができる機能が備わっています。
  
第2リニアック室と、この装置に装備された5mm幅マルチリーフ
第2リニアック室

X線および電子線を照射する部屋です。
エネルギーは6および10MVのX線および6〜18MeVの電子線を用いた治療が可能です。
またこの装置には,5mm幅の多重絞り(マルチリーフ)という,病変部に絞り込んで放射線照射ができる機能が備わっています。
 

新規導入リニアック

新規導入リニアック(南別館)

20197月から南別館の運用が開始され、新規に最新鋭のリニアックが設置されました。
エネルギーは46および10MVX線および415MeVの電子線を用いた治療が可能です。
また、この装置には以下に示すような最新の機能が搭載され、より早く、より安全に放射線治療が可能になっています。

●治療の高速化

1.高線量率(Flattening Filter Free: FFF )モード

線量率が高いと時間当たりの放射線量を多く出力することができます。そのため短時間での放射線治療が可能です。また、照射中の患者の動きによる影響を抑えることができるので、照射位置の精度も向上します。

 2.回転強度変調放射線治療(VMATVolumetric Modulated Arc Therapy)

VMATとは、従来の強度変調放射線治療(IMRT Intensity Modulated Radiation Therapy)の進化形であり、ガントリーを回転しながら、放出するX線の量を加減し治療を行います。利点は、IMRTと同等または、より良好な線量分布を達成しつつ、治療時間の大幅な短縮が可能になります。

●治療の正確性

1.6軸ロボット寝台 

寝台の動きが従来の3軸(上下・左右・前後)に加え、3軸のローリングの動きが可能になり、患者のねじれ等の補正も容易になります。



6軸ロボット寝台が実際に傾斜しているところ

 2.光学的イメージング(体表面)による患者の位置照合および監視

天井から吊り下げた3台のカメラシステムにより、体表面をスキャンし患者の位置照合や呼吸監視機能、動いた場合に照射を停止する安全機構などが備えられています。



光学的イメージングを可能にするカメラ

 3.照射中の体内イメージングによる照射部位の位置監視

照射中に撮影するコーンビームCT画像により、治療部位の動きや、実際の照射位置を照射後に確認することができます。

 
アフターローディング室と密封小線源が装備された遠隔照射装置
アフターローディング室

ガンマ線を放出するイリジウム(Ir-192)という人工放射性同位元素を小さな容器に封入した密封小線源を人体の腔内に挿入し,治療を行う遠隔照射装置があります(腔内照射)。
小さな線源を遠隔操作で移動させながら体腔内に挿入し,照射することにより,病変部に高い線量を照射することが出来ます。
なお,こちらの部屋では組織内照射の施術にも利用されます。 

放射線治療の種類
 
X線照射(外部照射)

体外より皮膚を通してX線を照射し治療する方法で,当院で最も多く行われている放射線治療です。
照射中は装置の位置が一定の固定照射と,装置が病巣を中心に動きながら照射する運動照射および原体照射に分けられます。
また,両者を組み合わせた照射も行われています。
なお,特殊な方法として当院では,定位放射線治療(Stereo tactic Radio Therapy: SRT),定位手術的照射(Stereo tactic radio surgery: SRS)等が行われています。


定位放射線治療(Stereotactic Radio Therapy :SRT)

第2リニアック室では,肺,肝臓などの限局した病巣の治療も可能です。
病変に一致した非常に小さな照射野で,立体的かつ多方向に集中照射を行います。
体の動きを抑制する固定具を駆使し,照射したい病変部に対して3次元的に照射することで,病変部により多くの線量を集中させ,まわりの正常組織に影響を極力与えないようにします。
治療の対象になるのは,小さな腫瘍で数の少ないものです。
当院では,おもに肺にできた腫瘍性病変に適用します。病状により4〜10日で治療が終わるのも特徴のひとつです。


定位手術的照射(Stereotactic Radio Surgery : SRS)

名称からわかるように,前述の定位放射線治療の内容を1日で全ての放射線治療を終わらせるものです。
治療の対象になるのは非常に限られ,当院では頭蓋内の病変に適用されます。
電子線照射(外部照射)

電子線の特長を生かして,皮膚表面から深さ6cm程度までの表在性の病変の治療に用いられます。
それ以上の深さでは、急激に治療効果が減少しますので適応となりません。
治療には,病変部の形状や大きさにあわせた照射筒(コーン)を使用し,放射線のあたる範囲を限定します。
 
電子線照射に利用する照射筒(コーン)
 腔内照射

ガンマ線を放出するイリジウム(Ir-192)という人工放射性同位元素を小さな容器に封入した密封小線源を体腔内に挿入することにより病変部に高い線量を照射することが出来ます。
線源から距離が離れると,急激に線量が減少するため,周囲の正常な組織への影響が抑えられます。
そのため比較的大きな病変の治療には向きません。
使用できる部位が限られ,治療に適応される疾患としては,当院では子宮・食道等の病変が挙げられます。
組織内照射(内部照射)

ガンマ線を放出するヨウ素(I-125)という人工放射性同位元素を非常に小さな容器に封入した密封小線源(シード)を病変部に直接刺入します。
現在当院で行われている治療は,放射線を発生する小線源を永久に病変部に埋め込む治療で,前立腺の病変に適用されます。
短期間の入院を必要としますが,密封小線源を病変部に刺入する施術自体は1日で終了します。
 
 
組織内照射に使用する密封小線源(写真はダミー線源です)
注意点
●治療室内には患者さま以外入室できません

治療室内では患者さまは一人になりますが,TVモニターで観察していますのでご安心下さい。
また,マイクもありますので,何か具合の悪いことがあれば合図や声でお知らせください。
また,治療中に付き添いをつけることはできません。
また,照射後に治療を受けた患者さまから放射線が出るようなことはありません。


●治療時間は入室後一部位5〜6分程度です

治療部位を出しやすい衣服にしていただくと,治療をより速く進めることが出来ます。


●皮膚に記入したしるしは消さないようにしてください

しるしは消えにくくなっていますが,放射線治療を正確に行うために重要ですので,完全に消さないように,入浴などの際にはその部分は流す程度にしておいてください。
また,しるしが薄くなりましたら,こちらで記入いたします。
薄くなってもご自身で記入することがないように注意してください。


●治療による痛みは全くありません


また、放射線照射中に機械が動いたり,ブザーが鳴ったりすることがありますが,危害を与えることはありませんのでご安心下さい。

●治療中は動かないようにして下さい

治療中に動きますと,位置がずれるために,病巣に十分な線量が当たらなかったり,まわりの正常組織に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
痛み等でじっとしていられない方は,あらかじめ放射線治療医などスタッフに声をかけてください。


●決められた回数の治療を一定期間内に受けるようにして下さい


放射線治療は決められた回数の治療を終えて,はじめて一定の効果が出るものです。
途中で止めてしまうと効果が現れないばかりではなく,今後の治療に影響することもあります。
どうしても体調不良などで難しい場合は,必ず連絡・相談するようにお願いします。
 
治療中はTVモニターとマイクで観察して患者さんの様子をうかがいます
 

最終更新日

2019年 12月 2日

文責:放射線部  大石