令和元年度 事業報告
Ⅰ 令和元年度事業運営の基本方針
本学においては、第3次中期目標・中期計画(平成28年度~令和3年度)に基づき、医科大学としての教育・研究・診療の 基盤を強化し、産業医学及び産業保健の中核を担う豊かな人間性に富む人材を養成するとともに、産業医学の振興及び 産業保健の推進の更なる発展に努め、医療の提供においては、地域に密着し、かつ先進的な機能の充実を図った。 このため、特に以下の事項について重点的に取り組んだ。 1 教育 産業医学・産業保健の中核を担う人材や次世代の研究リーダーの養成、産業医学・産業保健分野を目指す学生 の確保、国家試験の高い合格率の維持 2 研究 社会の求める課題の解決に寄与する産業医学・産業保健の研究 3 産業医及び産業保健従事者の養成 「人材育成プラン」に基づく積極的な養成、本学卒業生の70名以上の産業医従 事、産業保健従事者の養成、産業医学に関する様々な研修会の充実及び首都圏専門的産業医養成支援事業の実施、 過労死等の防止に係る研修事業の実施等 4 病院運営 大学病院については、高度急性期医療の推進、若松病院については、地域に信頼される医療の提供 5 社会貢献及び情報発信 本学の知見や研究成果を社会還元し、情報発信を推進 6 業務運営 機能的な組織、財政基盤の安定化・収益性の確保、開学40周年記念事業の開始、働き方改革への対応、 自己点検・評価報告書の作成、大学病院耐震工事の契約準備、急性期診療棟の実施設計及び建設のための造成工事 に着手、新型コロナウイルス感染対策への対応 7 コンプライアンスの徹底 コンプライアンス意識の定着、法令及び学内規則等を遵守する取組 |
Ⅱ 令和元年度事業の具体的内容
1 教育
(1) 学部教育
① 医学部
高い倫理観及びコミュニケーション能力を備えた人間性豊かな医師を養成するとともに、6年間を通じ系統的な産業
医学教育を実施し、優れた産業医の養成を図った。
・ 医学教育の質的向上を図るため、卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針を見直した。
・ 総合教育セミナー、基礎研究室配属等の少人数対話型教育を通じて、課題探求・問題解決能力、コミュニケーション
能力の涵養を図るとともに、実効性のある医学教育の円滑な実施に努めた。
・ 医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂)及び医学教育分野別評価基準に対応した医学教育カリキュラ
ムの確立を図るため、旧カリキュラムと、令和元年度入学者から適用された新カリキュラムの円滑な実施に努めた。
② 産業保健学部
高度な知識・技術と幅広い教養を身に付けた看護師、産業保健師及び労働安全衛生専門職を養成する教育を行っ
た。
・ 産業保健教育の質的向上を図るため、卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針を見直した。
・ 看護学科及び環境マネジメント学科の両学科において、社会の要請に応える専門職を養成するため、平成28年度か
ら導入しているカリキュラムの円滑な実施に努めるとともに、産業保健人材の育成のための実習を強化した。
・ 令和2年度入学者からの新カリキュラム導入に向けて必要な手続きを行い、円滑な実施と効果的な教育目標の達成
に努めた。
・ 環境マネジメント学科については、学科名称の変更手続きを進め、令和2年度から、「産業衛生科学科」となった。
併せてカリキュラム改正及び入試制度を見直し、労働安全衛生専門職者育成のための強化を図った。看護学科につい
ては、看護学教育モデル・コア・カリキュラムに対応したカリキュラムの確立を図った。
・ 病院、企業等との連携により専門職としての実践能力の向上を図った。
(2) 大学院教育
高度な研究能力と豊かな学識を有した人材を養成する教育を行うとともに、産業医学の発展に貢献した。
・ 大学院教育の質的向上を図るため、各専攻における学位授与方針、教育課程の編成・実施方針を見直した。
・ 学位授与状況については、以下のとおりとなった。
【学位授与状況】 〔括弧内は平成30年度実績〕
博士(医学) 課程修了による者 22名 〔17名〕
論文提出による者 15名 〔12名〕
博士(産業衛生学) 7名 〔 2名〕
修士(産業衛生学) 7名 〔12名〕
修士(看護学) 4名 〔 0名〕
(3) 学生の受け入れ
① 学部
全国医学部長病院長会議の「大学医学部入学試験制度に関する規範」及び日本私立医科大学協会の「日本私立医
科大学協会加盟29大学の申し合わせ事項」を遵守し、本学の設置目的及び入学者受入方針を十分に理解し、明確な使
命感及び目的意識を持つ、将来、産業医や産業保健従事者として活躍しうる優秀な学生を全国から更に多く確保するよ
う努めた。
・ 推薦入試及び一般入試の適切な実施を図った。
・ 高校及び予備校訪問、入試説明会への参加、多様な媒体の活用等様々な活動を行い、全国からより多くの志願者を
募った。
・ 特に、受験生に向けては、環境マネジメント学科の学科名称変更及び大学入学共通テストへの移行(高大接続改革)
に係る入試広報に努めた。
入試結果は、以下のとおりとなった。
【入試結果】 〔括弧内は平成30年度実績〕
医学部(募集人員105名のうち推薦入試20名以内)
推薦入試 志願者数 92名〔 87名〕から 20名選抜
一般入試 志願者数 1,616名〔 1,868名〕から 85名選抜
産業保健学部看護学科(募集人員70名のうち推薦入試35名以内)
推薦入試 志願者数 79名 〔 62名〕から 35名選抜
一般入試 志願者数 185名 〔 215名〕から 36名選抜
同 産業衛生科学科(募集人員20名のうち推薦入試5名以内)
推薦入試 志願者数 6名 〔 7名〕から 5名選抜
一般入試 志願者数 31名 〔 61名〕から 15名選抜
② 大学院
大学院の目的及び各専攻における入学者受入方針を十分に理解し、働く人々の健康を確保し増進していくための研
究者・実践者を目指す意欲ある学生の確保に努めた。
入試結果は、以下のとおりとなった。
【大学院入試結果】 〔括弧内は平成30年度実績〕
医学専攻(博士課程) 24名〔23名〕(うち社会人15名、留学生2名)
産業衛生学専攻(博士前期課程) 8名〔 9名〕(うち社会人8名)
産業衛生学専攻(博士後期課程) 5名〔 1名〕(うち社会人3名)
看護学専攻(修士課程) 3名〔 4名〕(うち社会人1名)
(4) 国家試験
① 医学部
医師国家試験の合格率は、教育効果を示す重要な指標の一つであることから、他大学の情報を収集するとともに、模
擬試験結果を検証し成績下位者へ徹底した学習指導等を実施した結果、合格率100%を達成し、全国1位となった。
第114回医師国家試験の結果は、以下のとおりとなった。
【医師国家試験結果】 〔括弧内は前回実績〕
令和元年度 新卒者 90名全員合格
合格率 100% (全国平均 94.9%)
〔第113回 89.6% (全国平均 92.4%)〕
既卒者 13名全員合格
合格率 100% (全国平均 69.2%)
〔第113回 66.7% (全国平均 56.8%)〕
合計 103名全員合格
合格率 100% (全国平均 92.1%) 全国80校中 1位
〔第113回 88.4% (全国平均 89.0%) 全国80校中57位〕
② 産業保健学部
看護師及び保健師国家試験の情報を把握し共有化するとともに、教育方法及び模擬試験結果を検証し、徹底した学習
指導の実施に努め、全員合格を目指し、その実現を図った結果、第106回保健師国家試験は合格率100%となり、第109
回看護師国家試験の結果は、以下のとおりとなった。
【保健師国家試験結果】 〔括弧内は前回実績〕
看護学科卒業生67名のうち保健師教育課程選択者14名が受験し全員合格
合格率 100%(全国平均 96.3%)
〔第105回 94.4% (全国平均 88.1%)〕
【看護師国家試験結果】 〔括弧内は前回実績〕
看護学科卒業生67名のうち66名合格
合格率 98.5%(全国平均 94.7%)
〔第108回 100% (全国平均 94.7%)〕
(5) 教育の質の向上
医学・看護学・労働安全衛生学教育を取り巻く新たな課題への理解を深めるとともに、教員の教育能力の向上を図る
ために、ファカルティ・ディベロップメント(FD)を実施した。
・ 令和元年度に策定した教育研究に係る内部質保証の方針に基づき、教育研究質保証推進委員会において、各学部
等の教育研究活動の改善及び向上を着実に推進した。
・ 大学教育・研究に関する目標・事業計画の進捗状況の評価に必要なデータ及び分析結果の提供を行い、全学的な
教育研究活動における適切なPDCA推進を支援するための組織「IR推進センター」の設置に向けて規程等を整備し
た。
・ 学修成果を可視化するためのツール「学修評価システム(eポートフォリオ)」を導入した。
(6) 学生への支援
学生指導については、学生部長のもと学内関係者一体となって、学生生活全般に関する相談及び指導等の充実に努
めた。
・ 教員と学生との関わりを深め、指導教員制度の充実を図り、産業医、産業保健従事者への就業の動機付けを図るた
めの情報を提供した。
・ 学生支援の充実を図るため、令和2年4月から施行する本学独自の修学援助奨学金制度及び緊急支援貸付金制度
の整備を行った。
(7) その他教育全般
新型コロナウイルス感染対策に関連し、学生向けの感染対策を強化し、令和2年度から遠隔講義を行うための整備を
行った。
2 研究
英国の高等教育専門誌「THE世界大学ランキング2020年版」において、本学の研究力が評価され、本学は日本国内で
第7位、私立大学で第1位にランクされた。
(1) 産業医学・産業保健の研究
職業性疾病の予防と労働適応能力の向上に資する研究課題を探索・研究した。
・ 産業医学に関する諸課題(労働者の能力向上、産業保健体制・経営改善、様々な有害要因の解析と改善、新規化
学物質の有害性評価等)に取り組んだ。
(2) 研究の質の向上
① 研究の活性化
本学が戦略的に取り組むべき研究課題を明確にし、重点分野に資源を注入することにより、他大学・研究機関に先駆
けて研究成果を上げるよう努めた。
② 産学官連携の推進
産業界、行政機関等との連携・協力を推進し、共同研究・受託研究等を積極的に推進した。
③ 国際交流の実施
国際交流センターにおいて、アジア及び欧米諸国の学術研究機関、国際協力機構(JICA)、
世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)などの国際機関との産業医学研究者交流・受入事業、交換医学教育、
国際産業保健特別演習をはじめとする交流協定等に基づく活動、遠隔講義の開催等の国際学術研究交流活動を専門的かつ
積極的に支援した。
・ 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)」に
採択され、国立インドネシア大学から学生等11名を受け入れ、交流事業を実施した。
・ 独立行政法人国際協力機構(JICA)の委託を受け、イラクから産業保健関係者12名を受け入れ、「生物及び室内環
境の重金属の分析の実地研修」を実施した。
④ 産業保健データの活用
産業保健データサイエンスセンターにおいて、企業、健康保険組合等が持つ産業保健のデータ収集を行い、情報を
統計学的に分析し、データ提供企業等に対して、分析結果をフィードバックした。
(3) 教育研究環境整備
教育研究支援施設各センター間の緊密な連携を図るとともに、施設の基盤整備及び適切な管理運営により、一層の
教育研究支援に努めた。
3 産業医及び産業保健従事者の養成等
国における産業医・産業保健機能強化の動きを受け、本学において新たに策定した「産業医科大学における今後の産業
保健分野の人材育成プラン(以下「人材育成プラン」という。)」に基づき、優秀な産業医・産業保健人材の育成について更な
る教育機能の充実を図るため、次の取組を行った。
(1) 産業医の養成
・ 医学部については、産業医への就職支援を充実させ、70名以上を産業医に従事させる目標達成の実現を図るととも
に、社会全体の産業医に対する期待と需要が高まる中、「人材育成プラン」に基づき、更に多くの産業医の輩出に努め、
各講座等と進路指導担当部署等が連携を密にし、求人の確保、情報の提供並びに産業医への就職促進に取り組んだ
結果、令和元年度は93名が産業医に従事した。
・ 医学教育プログラムの改革に合わせ、産業医学教育において1年次から6年次まで基礎専門・実習の的確な配置と
十分な時間的な確保を図った。特に産業医学現場実習の充実とともに、産業医実務に活かせる臨床能力の向上を図った。
・ 大学病院に設置された就学・就労支援センター及び両立支援科において、職場復帰までの取組や両立支援に係る
診療について、臨床実習や卒後修練課程(後期課程)により体験させることを検討し、同課程(後期課程)において両立
支援科を希望する修練医の受入れを行った。
・ 学部生及び卒業生に対して、産業医学・産業保健関係業務に関する情報提供等を行い、産業医学・産業保健関係業
務への就労支援を図った。
・ 産業医業務に必要な修練を充実させた産業医学卒後修練課程について、専門産業医コースⅠに関しては、平成29年
度から開始された社会医学系専門医研修プログラムを引き続き実施した。
また、専門産業医コースⅡに関しては、基本18領域の専門研修プログラムを後期課程修練内容に組み込み、各コース
の円滑な運営を実施することにより、それぞれの専門医資格要件を有する優れた産業医の養成に努めた。
・ 産業医資格の取得に係る産業医学基本講座及び産業医学基礎研修会集中講座を実施した。産業医学基本講座に
ついては、他大学卒業生に対する広報活動を推進し、受講生の積極的な受入れを図った結果、29名(北九州開催分
17名、東京開催分12名)が受講し、28名の修了認定を行った。
・ 産業医学修練医等に対して、産業医実務に関する知識及び技術を実地に研修させる産業医学実務講座を実施し、
112名が受講し、65名の修了認定を行った。
【受講状況】 〔括弧内は平成30年度実績〕
産業医学基本講座 北九州開催分 受講者 45名 (修了者 42名)
〔 受講者 35名 (修了者 33名)〕
産業医学基本講座 東京開催分 受講者 14名 (修了者 12名)
〔 受講者 15名 (修了者 12名)〕
産業医学基礎研修会 北九州開催分 受講者 970名 (修了者 963名)
〔 受講者 1,024名 (修了者 1,021名)〕
産業医学基礎研修会 東京開催分 受講者 289名 (修了者 280名)
〔 受講者 195名 (修了者 195名)〕
(2) 産業保健従事者の養成
産業保健学部については、産業保健従事者への進路支援を充実させ、関連職場への就職を促進した結果、81名
(94.2%)が関連職場に就職した。
・ 企業の産業看護職へのニーズの高まりに併せ、産業看護関連科目に関する講義内容や実習の充実を図った。
・ 企業に勤務する先輩産業看護職との交流会等を充実させ、産業看護職志向を高める機会の増加に努めた。
・ リスクアセスメントの実施等、化学物質管理の強化に対応できる教育を充実させるとともに、衛生管理者教育の
強化を図った。
(3) 産業医及び産業保健従事者の能力向上
・ 産業医等のキャリアに応じた研修の一環として、産業保健コアカリキュラム及び産業看護実務研修を実施した。
・ 本学で蓄えられた教育・研究成果を活用し、全国各地で産業保健専門職への専門的研修(産業医学実践研修)を
12プログラム(計16回)を実施し、647名が受講した。
・ ストレス関連疾患予防センターが主体となって、過重労働対策を推進するための研究及び研修教材の開発を行うと
ともに、関連分野の科学及び社会政策について幅広い知識を有する特命講師が全国の主要都市において産業保健
従事者を対象とした研修会を9回実施し、計551名が受講した。
・ 産業医及び産業保健従事者への情報提供事業を行い、産業医・産業保健機能の強化を図った。
・ メンタルヘルスサービス機関の機能認定の更新を行い、当該機関の産業保健サービスの向上を図った。
(4) 首都圏専門的産業医養成支援事業(東京プロジェクト)
首都圏において、質の保証された産業医学に関する教育・研修事業及び産業保健関連分野のネットワークを構築・展
開し、わが国における産業医学分野の人材の更なる育成と情報の収集・発信を進めるための事業を行った。
① 事業Ⅰ(教育・研修事業)
首都圏において、本学以外を卒業した医師の中で専門的な産業医を目指す者に対して体系的な研修を行い、産
業医学・産業保健の分野に関わる高度な人材を育成するため、産業医学基本講座(東京開催)を開催し、12名(平成
30年度実績 12名)が修了した。
② 事業Ⅱ(就職促進事業)
継続的な産業医の供給という社会的な要請に応えるため、大学関連会社と連携協定を締結し、事業Ⅰ修了者の
うち産業医への就職を希望する者への産業医活動に関する相談対応、情報提供等の支援策として、就職希望者と
のマッチングを行い、1名に対し就職先企業を斡旋した。
③ 事業Ⅲ(情報発信・啓発事業)
産業医学・産業保健に関する情報収集、発信拠点として、首都圏プレミアムセミナー(全11コース)の開催を予定
していたが、一部コースについては、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、中途終了及び中止となった。
開催したコース(中途終了含み10コース)については、210名(平成30年度:197名)が受講した。
また、受講者相互の人的ネットワークを構築するための首都圏事業プレミアム会員制度を実施(試行)するとともに、
ウェブサイトを通じて情報共有及び情報交換を行った。
4 病院運営
大学病院と若松病院は、それぞれの機能を生かした運営により、地域完結型医療における高度急性期医療機関として
の診療体制・機能、医療の質の充実・向上を図り、国が進める地域包括ケアシステム、病床機能報告制度への対応、
高齢化が進む地域への適切な医療提供等について、具体的な目標を持った運営を行った。
また、新型コロナウイルス感染対策に関連し、患者向けの対応を行うとともに、職員への感染対策を強化するなど、感染
防止に努めた。
・ 患者の安全を確保するため、常に業務改善を行うとともに、医療安全に関する情報の発信及び教育・研修を通じて、職
員の安全管理に対する意識向上を図るなど、医療事故、院内感染防止等の医療安全対策及び情報管理対策の充実・強
化に努めた。
・ 効率的な病院経営を目指し、業務の効率化、病床稼働率向上のために集患を図るとともに、ベンチマーク(他病院との
比較による)等も活用し、薬品・診療材料費等の経費節減を図った。
・ 診療体制・機能の維持及び充実を図るため、医療設備・機器の整備を継続的かつ計画的に行うとともに、医療スタッフ
の負担軽減を図った。
・ 医師の働き方改革に対応するため、他職種へのタスクシフティングの推進、人員増等により医師の負担軽減を図った。
・ 令和元年12月に病院機能評価の更新審査を受審し、中間的な結果報告に対する改善報告書を提出した。
(1) 大学病院
① 高度急性期医療の推進
・ 高度急性期医療への更なる特化を図り、特定機能病院及び地域の中核病院として先進医療及び地域医療を推進
した。
その結果、令和元年度の実績は、以下のとおりとなった。
【令和元年度診療実績】 〔括弧内は平成30年度実績〕
平均在院日数 10.8日 〔 11.4日〕 (精神科病棟を除く。)
1日平均入院患者数 586.5人 〔 601.2人〕
1日平均外来患者数 1,313.4人 〔 1,294.1人〕
新入院患者数 17,730人 〔 17,164人〕
病床稼働率 86.5% 〔 88.7%〕
手術件数 7,166件 〔 7,343件〕
紹介率 89.8% 〔 90.2%〕
逆紹介率 76.4% 〔 71.6%〕
・ 南別館を令和元年7月から稼働し、病棟、外来及びリニアック等の円滑な運用に努めた。
・ 適切な医療サービスが提供されるべき疾病として厚生労働省が定める5疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿
病 ・精神疾患)に対応した医療提供体制を構築するため、救急医療への対応体制の検討、増加する老人性疾患への
急性期対応と地域医療機関との機能分担等を進め、高度急性期医療及び地域医療の中核病院としての診療体制・
機能の充実を図るとともに、特にがん治療については、手術支援ロボット「ダヴィンチ」での適用範囲の拡大を図った。
・ がんの集学的治療を推進するため、地域がん診療連携拠点病院として、がんセンター及び緩和ケアセンターの機能
を維持し、地域におけるがん診療の中核として、診療機能の充実を図るとともに、教育・研修体制の拡充に努めた。
また、がんゲノム医療に対応するため、平成31年4月にがんゲノム医療連携病院の指定を受け、がん遺伝子パネル
検査の運用開始、遺伝カウンセリング科設置による診療機能の充実を図った。
・ 臨床検査・輸血部及び病理部でのISO15189取得のための準備を行った。
・ 診療機能の強化を図るため、地域の疾患構成の変遷に対応した診療科の見直しを行った。
・ 近隣の病院との機能分化を明確にし、患者急変時の対応、後方ベッドの有効活用等、地域の医療機関との連携強
化による地域完結型医療体制の拡充、機能強化及び紹介患者数の増加を図るため、コア・ネットワーク病院を含む近
隣医療機関等との緊密な連絡、支援等を行うなど、相互支援体制の構築及び連携強化に努めた。
・ 平成30年1月に設置した就学・就労支援センター及び両立支援科については、治療を受けながら就学・就労する者
が増えてきたことから、平成31年4月から全診療科を対象として両立支援の取組を行った。
・ 医療機器については、引き続き計画的に更新を行い、昨年度に引き続き老朽化したMRIの更新を行った。
・ クリニカルパスの利用推進による医療の標準化、効率化に努めるとともに、診療内容の変化に応じた在院日数の適
正化、診療単価の増加、病床の効率的活用等、収入増加及び支出削減のための諸施策を検討・実施し、病院経営基
盤の安定化を図った。
・ 耐震工事及び耐震工事に伴う病棟、関係各部門等の一時的移設・改修に向けて検討を行った。
・ 病院総合医療情報システムの更新に向け、必要な機能等を検討し仕様書を作成した。
・ 平成30年度に災害拠点病院の必須要件となった大規模災害時の事業継続計画(BCP)を策定し、当該計画に基づ
き、令和元年度に災害時の備蓄を行った。
② 安全かつ質の高い医療の提供等
・ 安全かつ質の高い医療の提供のため、職員への医療安全教育の更なる充実を図った。
・ 医薬品の保管、流通、投与等に関する安全管理体制を整備し、引き続き安全管理に関する運用を厳格に行った。
・ インシデント・アクシデントレポートによる報告及び医療安全監査委員会による監査結果報告により、明らかになった
事項 について、医療安全管理委員会において検証を行い、改善策を職員へ提案し、医療安全対策の強化に努めた。
・ 地域住民及び医療機関への情報提供のために、臨床指標の公開、診療実績・機能等の広報活動を積極的に進め
た。
・ 高難度新規医療技術及び未承認新規医薬品等を用いた医療については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、病
院倫理委員会での審議を経て適正に提供した。
③ 学生教育、初期臨床研修の実施等
・ 教育病院として学生の臨床実習を効果的に行うよう努めた。
・ 臨床研修医の確保に努めるとともに、基幹型臨床研修病院として、地域医療機関と協力し、優秀な臨床研修医の育
成を図った。
・ 産業医学修練医及び他大学からの専修医を積極的に受け入れた。
・ 高度な医療に対応するため、専門看護師・認定看護師の増加に努めた。
・ 新専門医制度2年目にあたり、着実に円滑な研修の実施及び定員に対するシーリングへの対応等を行った。
④ 経営基盤の確立
・ 福岡県地域医療構想、診療報酬改定及び医療制度改正に的確に対応するため、算定要件・体制の整備、関係部署
への周知等を行った。
・ 人員体制の整備によるDPC機能評価係数Ⅰについて、人件費との収支バランスを考慮しつつ検討を進めた。
・ 大学病院と若松病院において、相互の機能等についての協力、補完を行い、運営・経営の改善に努めた。
・ 臨床研究推進センターにおいて、治験業務のほかに、臨床研究審査委員会による特定臨床研究を含む臨床研究に
ついての審査、実施支援等を行った。
・ 会計待ち時間の短縮及び患者満足度の向上を図るため、令和2年1月から「医療費後払いサービス」を導入した。
(2) 若松病院
① 急性期医療及び在宅療養支援の推進
・ 若松区唯一の総合的な病院として、医師会及び近隣の医療機関等と緊密に連携し、患者紹介・逆紹介を促進した。
・ 所轄の消防署と情報交換を行い、救急車を積極的に受け入れるなど、地域と密着した断らない医療を目指し、地域
の中核的病院として、急性期医療を推進した。
・ 病棟医長と病棟看護師長との連携を強化し、入院時期や退院時期並びに一般病床と地域包括ケア病床間の転棟・
転室等、早期調整を行うことで効率的な病床運用を図った。
・ 老朽化した医療機器を計画的に更新するとともに、X線骨密度測定装置、レーザー結石破砕装置を導入し、急性期
病院としての機能強化を図った。
・ 産業医科大学若松病院事業継続計画(BCP)を策定し、地域医療機関の支援を行うための体制を整備した。
以上の結果、令和元年度の実績は、以下のとおりとなった。
【令和元年度診療実績】 〔括弧内は平成30年度実績〕
平均在院日数 14.4日〔 15.0日〕
1日平均入院患者数 122.8人〔 129.3人〕
1日平均外来患者数 355.7人〔 370.0人〕
新入院患者数 2,911人〔 2,936人〕
病床稼働率 81.9%〔 86.2%〕
手術件数 1,377件〔 1,323件〕
紹介率 45.8%〔 47.4%〕
逆紹介率 32.7%〔 36.9%〕
② 安全かつ質の高い医療の提供等
急性期病床と地域包括ケア病床において、安全で質の高い医療を提供し、患者サービスの向上を図った。
③ 学生教育の実施
教育病院として、学生の臨床実習の効果的かつ円滑に実施した。
④ 経営基盤の確立
・ 若松区市民センターでの公開講座を積極的に実施し、若松病院の認知度の向上に努めた。
・ 地域医療との連携強化を図るため、若松区内の医療機関を訪問し、広報活動を行った。
5 社会貢献
・ 東日本大震災・福島原発事故に関連した作業を行う労働者の健康支援活動を引き続き実施し、令和元年度は35名
を派遣した。なお、平成23年5月から令和2年3月までに延べ1,211名を派遣した。
・ 医学をテーマにした市民公開講座を継続して行った。特に、若松病院においては、地元自治体と連携し、地域住民
に対する情報発信を推進した。
・ 介護事業の健全な運営を継続するために、良質なサービスの提供に努め、地域への貢献を行った。
6 業務運営
(1) 第3次中期目標・中期計画の遂行
第3次中期目標・中期計画(平成28年度~令和3年度)については、中間評価を行い3年目の進捗状況を確認すると
ともに、外部評価委員会による評価を受け、引き続き着実に遂行した。
(2) 私立学校法等の改正に伴う対応
令和2年4月から施行される私立学校法に対応するため、寄附行為の認可申請を行い、関連規程を整備した。
(3) 組織・人事及び財務・経営管理
・ 医療法の一部を改正する法律の施行を受け、特定機能病院の管理者権限を明確にするため関連規程を整備し、
病院長候補者を選出した。
・ 大学のPDCAを推進支援する組織としてIR推進センターを、医学部に脳卒中血管内科学及び両立支援科学講座
を、大学病院に脳卒中血管内科の診療科をそれぞれ令和2年4月に設置するため、関連規程等を整備した。
・ 「産業生態科学研究所及び産業医実務研修センターの将来構想」を踏まえ、令和2年4月の施行に向けて研究部門
構成等の見直しを行った。
・ 医学部における「一般教育実施体制の見直し」を受け、令和2年4月の施行に向けて総合教育・医学基礎を分野毎に
区分する整備を行った。
・ 大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、当該活動に関係する教職員の能力及び資質を向上さ
せるためのスタッフ・ディベロップメント(SD)を実施した。
・ 情報管理センターにおいて、教育研究支援、情報発信に必要なICT基盤の充実を図った。
・ 医師の働き方改革に対応するため、医師事務作業補助者の増員を図り、医師の業務負担軽減に努めた。
・ 新型コロナウイルスの感染対策に関連し、全学的な新型コロナウイルス感染対策本部を設置し、「対応マニュアル」を
整備し、職員への感染対策を強化するなど、感染防止に努めた。
・ 経営状況の把握と分析による経営管理を行い、現状を認識するとともに、原因把握や具体的な改善を行った。
また、急性期診療棟の建設計画を睨んだ大学運営における資金計画の策定と予算管理を継続して行った。
(4) 自己収入及び外部資金の確保
・ 開学40周年を迎え、記念事業報告会及び各記念事業を、計画に基づき実施した。
・ 大学運営基金及びその他の運用資金について、安全性を重視しながら最大限の利回りを確保する運用を行い、自己
資金の確保を図った。
・ 科学研究費助成事業等各種研究資金の募集情報の周知、申請のための支援等、採択率向上のための取組を行っ
た結果、補助金等の採択状況は、以下のとおりとなった。
【外部資金採択状況】 〔括弧内は平成30年度実績〕
文部科学省・日本学術振興会(科学研究費)
148件( 202,313千円)
〔 132件( 196,004千円)〕
厚生労働省(科学研究費)
36件( 88,467千円、分担分24件を含む。)
〔 32件( 78,432千円、分担分19件を含む。)〕
厚生労働省(労災疾病)
14件( 88,288千円、分担分 7件を含む。)
〔 19件( 106,938千円、分担分 11件を含む。)〕
・ 産学連携活動の推進により、積極的に外部研究資金の獲得を図った。
また、寄附講座2件を受け入れたほか、産業医学に関する研究活動の振興並びに知的財産の更なる創生及び戦略
的・効果的活用に努めた。
(5) 魅力ある職場づくり
・ 魅力ある職場づくりのために、職員の健康面に配慮し、時間外勤務の削減に努めた。
・ 働き方改革関連法の施行に対応し、時差出勤制度の導入、産業医及び産業保健機能の強化等を実施するとともに、
令和2年度から施行される雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に係る制度設計を行い、関連規程を整備した。
・ 平成31年4月から年5日の年次有給休暇を確実に取得させるため、休暇取得に係るシステム化を図るとともに履行
状況の確認を行い、確実に取得させた。
・ 男女共同参画推進センターにおいて、引き続き男女共同参画の推進に係る諸施策の着実な実現に努めた。
(6) 情報発信の推進
・ 本学の教育・研究・診療の状況や成果に関し、引き続き積極的に情報公開・発信を行い、本学の社会的責任を果た
すとともに、認知度の向上を図った。
【報道機関への出演・掲載件数】 〔括弧内は平成30度実績〕
129件(広告等除く。) 〔 168件〕
・ 産業医学・産業保健に係る情報を充実させ、本学が蓄積した知見や成果を社会が求める情報として発信し、平成31
年4月に、働き方改革に対応した寄稿連載を「産業医が診る働き方改革」として書籍化し、更に令和2年1月には増補
改訂版を発行した。
・ 開学40周年記念事業の一環として、本学のプロモーションビデオを作成した。
(7) 評価の充実及び活用
・ 認証評価機関による令和2年度の大学認証評価受審に向けて、自己点検・評価報告書を作成するとともに、必要な
規程等の制定及び改正を行った。
・ 一般社団法人日本医学教育評価機構(JACME)による医学教育分野別認証受審(令和4年度予定)に向けて、医
学教育改革推進センターを中心に作業を進めた。
(8) 施設整備
・ 平成29年度に着工した大学病院南別館について、令和元年7月から診療を開始した。
・ 大学病院本館の耐震化について、令和3年度の完了を目指し、耐震補強工事の契約準備を行った。
・ 急性期診療棟の建設について、急性期医療の充実とともに、産業医養成に係る臨床教育機能を備える診療棟とし
て、実施設計を完了し、建設用地造成工事の着手及び新車庫棟の設計を行い、学内保育園の移転を完了した。
・ 老朽化した基幹設備について、更新計画に基づき、省エネルギー機器の導入を進めるなど、効率的な設備更新を行
った。
(9) コンプライアンスの徹底
職員のコンプライアンス意識の定着を図り、法令及び学内規則等を遵守するとともに、高い倫理観と良識をもって行動
するため、遵守への取組を行った。
・ 学内規則、ガイドライン等の遵守及び情報セキュリティ対策(運用マニュアル等の充実)により、引き続き個人情報の
適正な取扱い及び情報の盗難、漏えい等の防止に努めた。
・ 科学的根拠に基づく安全かつ質の高い医療を提供し、適切なインフォームドコンセントを実施した。
・ 研究活動及び研究費使用に係る不正防止について、コンプライアンス教育による教職員の意識向上を図るなど、組
織的な取組を推進した。
[令和2年6月12日更新:総務課]