産業医 河津 雄一郎 さん

株式会社平和堂 
統括産業医

高齢になっても、病気の治療をしながらでも働き続けられる時代へ。
産業保健の果たす役割はさらに大きく、広がっていく。

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河津 雄一郎 さん

■社員の健康が経営に直結している小売業。データ分析で介入方法を考え、健康度を改善。
少子高齢化に伴って、高齢者や病気の治療をしながら働く人も貴重な労働力となっています。統括産業医を務めるスーパーマーケットは154店舗を展開。健康管理を担当する社員約2万人の中にも高齢者や様々な健康状態で働く人が増えてきました。小売業は、人の労働力に頼る仕事が多い労働集約型産業。社員の健康管理が会社の経営に直結しています。全店舗・全社員に一定の産業保健サービスを提供し、メンタルもフィジカルも健康で働き続けられるようにと努めています。
女性が多い職場であることから、乳がん検診の受診率向上も課題でした。そこで検診バスを送る店舗と送らない店舗とをランダムに割り付けて調査したところ、検診バスを送った店舗では受診率が著しく向上したことから全店舗へのバス派遣が決定。さまざまなデータを分析し、介入方法を考えて実行することで、社員の健康度が実際にどれだけ改善したか見えてきます。

■不調な時だけでなく、元気に復職してからも社員と接していけるのが、産業医の魅力です。
社員が健康な時も、体調を崩した時も、そして回復してからも接することができるのも産業医ならではの喜びです。面談した時にはかなり参っていた社員が復職し、売場で元気に声をかけてくれるとうれしく感じます。また専属産業医は会社のルール作りから社員全体の健康づくりにコミットできるのが面白いところです。
誰もが長く健康で仕事を続けていけるように、生活習慣病の予防、病状に合わせた作業への適正配置や治療との両立支援など、産業保健の果たす役割はこれまで以上に大きくなることが考えられます。また、日常的な有害業務への対応や集団の健康管理の実務は、大規模災害等でも応用できることから、産業医科大学卒業生の活躍の場は社会の中で多岐に渡っています。社会医学に興味があるなら、ぜひ産業医科大学で学んでほしいですね。
なお、今年から滋賀産業保健総合支援センターの所長を兼任。滋賀は製造業比率が高く昔から産業保健が活発な県です。今後は県全体の産業保健にも貢献していきます。  

産業医科大学 大学案内2024から抜粋