医学概論教授 藤野 昭宏 さん

産業医科大学 医学部 医学概論教室 
教授

医学とは何かを一生問い続ける。
医師としての基盤となる教育と研究を実践、建学の使命である「哲学する医師」を養成する。

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藤野 昭宏 さん

■医師に必要なのは、常に問い直す姿勢。正解のない問いに対して、医学を深く理解していく。
病いとは何か、死とは何か。人間とは、人生とは、生きるとは何か。医学概論教室は、医学とは何かを一生問い続ける、その基盤となる教育・研究を実践。産業医科大学初代学長である土屋健三郎先生が開学当初に設置して以来、哲学する医師を養成しています。
医療現場では、マニュアル思考ではどうにもならない場面があります。医学的には正解であっても、患者さん個人にとって本当にベストかどうかを考える。医師は傲慢になることなく、常に自らに問い直す姿勢が大切です。
医学概論教室を設けているのは現在、本学が唯一の医科大学。土屋先生から教えを受けた私も、正解のない問いを考え続けてきました。卒業生からも医師の経験を積むほど改めて医学概論を学んでよかったという声をよく耳にします。医学とは何かを問い続ける学問は、これからの医学教育においてもさらに重要になると考えられています。

■ひとりの人間として、苦悩する患者さんとしっかりと向き合う共感力を持った医師に。
教育で重視している漢方医学は、産業医学と非常に密接です。産業医学は予防医学ですが、漢方は病気になる前の段階の“未病”を癒す、積極的な予防を実践する医学です。たとえば産業医面談で話をよく聞き、働く人自身も気づいていないメンタル不全などを見極め、漢方薬を処方。症状が悪化する前に健康を守る診療ができる漢方医学は、産業医学に大いに活かせるのです。
医師に欠かせないのは、人を好きでいること。人としっかりと向き合う姿勢です。医学的知識とプロフェッショナルな技術を身に着けているのはもちろん、苦悩する患者さんの生活といのち、人生に、ひとりの人間として寄り添う共感力が必要です。「人間愛に徹し、生涯にわたって哲学する医師の養成」という建学の使命こそが、産業医科大学で学ぶ意義。本学での医学生生活が将来医師として生きていく基盤となる、貴重な宝物としてほしいと思います。

産業医科大学大学案内2024から抜粋