臨床工学部
概 要
臨床工学部では，病院内における医療機器の安全使用のため，臨床工学技士による医療機器管理と臨床技術提供を行っている．当院では当直体制を採用しており，病院内に24時間臨床工学技士が待機するとこにより，緊急対応に備えている．
組 織
-
部長:
掘下
貴文
(麻酔科学/教授)
技師長: 高橋 一久
臨床工学技士28名(男性23名，女性5名)，嘱託職員1名
業務体制
I 医療機器の保守管理
医療機器の効率的かつ安全な運用を図るため，各種医療機器の中央管理を行っている．人工呼吸器や生体情報モニタ，輸液ポンプやシリンジポンプ等，病院内の様々な医療機器をデータベースに登録しており，貸出･返却や終業･始業点検，定期点検を実施管理している．加えて，臨床現場で発生した医療機器に関するトラブル対応を行っている．また，医療機器を取り扱う職員に対して，安全使用のための定期的な研修会や，依頼に応じた研修会，情報提供を行っている．
II 臨床技術提供
臨床技術提供に関しては，専門性により5つのグループに分かれており，グループ間で緊密な連携を取りながら，各部署において臨床業務を行っている．また一部業務については，グループ間でローテーションすることで対応している．1. ICUグループ
ICUグループでは，ICU･ERの急性期医療をはじめ，病棟･外来における全般的な臨床技術提供を行っている．
(1) ICU常駐
ICUには平日日勤帯のみ1名常駐者を配置しており，カンファレンス参加をはじめ，ICU内で発生する様々な臨床業務や，医療機器の操作･保守管理を行う．臨床業務については，血液透析(HD)や持続血液透析濾過(CHDF)，血漿交換(PE)や血液吸着(HA)などの急性血液浄化･アフェレシス療法や，体外式膜型人工肺(ECMO)，大動脈内バルーンパンピング(IABP)，経皮的補助人工心臓(Impella)などの機械的補助循環装置の導入･維持管理を行う．さらに人工呼吸器，体温維持療法(TTM)や生体情報モニタセッティングなど，医療機器が関連する業務は全般的に対応する．
(2) 病棟ラウンド･呼吸器関連業務
一般病棟のラウンドを毎日行い，人工呼吸器や高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)，NO吸入療法や排痰補助装置など，呼吸療法関連機器の導入や稼働中点検，回路交換やトラブル対応を行う．また，在宅人工呼吸器･関連機器の管理や転院時の調整，救急車による患者搬送を行う．加えて生体情報モニタや薬液注入ポンプなど，病棟に配置している様々な医療機器の保守管理やトラブル対応も行う．
(3) 睡眠外来におけるCPAP管理･舌下神経刺激療法
耳鼻咽喉科の睡眠外来で，睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者に処方されるCPAP装置に関して，導入(患者説明)，データ管理(遠隔モニタリング)，トラブル対応を行う．また，CPAP装置が使えなかった患者に対する舌下神経刺激療法の管理と，植え込みや睡眠検査の立ち会いを行う．
(4) 輸血療法室等のアフェレシス療法
多発性骨髄腫等に対する末梢血幹細胞採取(PBSCH)や骨髄濃縮(BMP)，難治性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注療法(CART)など，輸血療法室等で実施されるアフェレシス療法を行う．
2. 内視鏡グループ
内視鏡グループでは，内視鏡部における消化器内視鏡業務や，その他部署で使用している内視鏡装置の保守管理等を行っている．
3. 手術室グループ
手術室グループでは，手術室における人工心肺装置の操作や術中モニタリングなど，外科的治療に関連する臨床技術の提供を行っている．
(1) 人工心肺装置および関連装置の操作
心臓血管外科の手術で，心停止中に心肺機能を代行する人工心肺装置の操作を行う．また，補助循環装置を導入する際の介助を行う．
(2) 自己血回収装置の操作･麻酔機点検
整形外科，脳外科，心臓血管外科等，出血が多く見込まれる手術時に使用する自己血回収装置の操作を行う．また麻酔機の始業点検も実施する．
(3) 術中誘発電位モニタリング
整形外科，脳外科，心臓血管外科，呼吸器外科の手術で，術中麻痺予防のために行う術中誘発電位モニタリング装置のセッティング，操作を行う．
(4) 内視鏡手術システムの管理･セッティング
消化器外科や呼吸器外科など，様々な診療科の内視鏡手術で使用される内視鏡システムや手術用治療機器，内視鏡手術支援ロボットの管理，セッティング，トラブル対応を行う．
4. 腎センター･心血管カテーテルグループ
腎センター･心血管カテーテルグループでは，腎センターにおける血液浄化関連業務，血管造影室における心血管カテーテルに関連する臨床技術の提供を行っている．
(1) 腎センターにおける血液浄化･アフェレシス療法
腎センターは12床，基本的に月曜日から土曜日までの2クール運用で，入院患者のバックアップ目的の血液透析(HD)，血液透析濾過(オンラインHDF，I-HDF)や，血漿交換(PE，SePE)，二重膜濾過血漿交換(DFPP)，血液吸着(HA)，血漿吸着(PA)等のアフェレシス療法を行う．また定期的に水質検査を実施し，ガイドラインに適合した水質管理に努めている．
(2) 心血管カテーテル業務
血管造影室における冠動脈造影(CAG)，血管内超音波検査(IVUS)，経皮的冠動脈形成術(PCI)など，様々な心血管カテーテル検査や治療に対し，介助･機器操作等を行う．また，補助循環装置導入時の介助を行う．
5. 不整脈グループ
不整脈グループでは，植込み型心臓不整脈デバイスの操作･管理およびカテーテルアブレーション治療に伴う機器操作を行っている．
(1) 不整脈アブレーション業務
様々な頻拍性不整脈疾患に対するアブレーション時に，心内心電図解析装置，3Dマッピング装置，スティムレーター，クライオアブレーションシステム，パルスフィールドアブレーション(PFA)などの機器操作を行う．
(2) 不整脈デバイス関連業務
除脈性不整脈疾患等に対し，手術時(新規植込み術･電池交換術)の立ち合い･プログラマー操作を行い，術後･外来時の動作チェックなど継続的な管理を行う．また，手術･検査にともなうEMI(電磁干渉)対応も行う．
温熱療法(ハイパーサーミア)
放射線治療科の温熱療法室において，胸部，消化器，婦人科，泌尿器科，頭頚部等の悪性腫瘍に対し，ラジオ波で患部を42～43度に加温する温熱治療を行う．
III 学術活動･資格取得
大学病院の役割である診療･教育･研究のため，臨床工学技士会の委員会や各学会での発表など，学術活動に力を入れている．また臨床工学技士国家資格に加え，専門資格取得にも力を入れている．
[所属学会]
福岡県臨床工学技士会(理事，代議員，運営委員)
日本アフェレシス学会(九州地方会世話人係)
日本臨床工学技士会
日本医療機器学会
日本急性血液浄化学会
日本集中治療医学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本不整脈心電学会
日本体外循環技術医学会
日本人工臓器学会
日本臨床神経生理学会
日本機械学会
[取得資格，学位]
第2種ME技術者
第1種ME技術者(臨床ME専門認定士)
3学会合同呼吸療法認定士
透析技術認定士
体外循環技術認定士
植込み型心臓不整脈デバイス認定士
認定集中治療関連臨床工学技士
認定血液浄化関連臨床工学技士
心血管インターベンション技師
心電図検定1級，2級
衛生工学衛生管理者
臨床実習指導者
臨床検査技師
修士(工学)
修士(医科学)
（更新日：令和７年10月）