腎盂・尿管がん
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1 病気について(概要、疫学的なものも含めて)
腎盂(じんう)は、腎臓で作られた尿が最初に流れる込む場所であり、尿管はその腎盂から膀胱へと尿が流れていくためにつながる細い管のことをいいます。腎盂尿管がんとはそれらの場所に発生する悪性腫瘍です。最も多い症状として肉眼的血尿があり、なかでも他の症状を伴わず突然みられる血尿が特徴的です。また、腫瘍によって尿の通過が障害された場合、背中や横腹の痛みが起こることもあります。同じ尿路に発生する膀胱がんと比べ発生頻度は少なく(約1/10)、男女比はおよそ2:1と男性に多く、50-70歳代に好発するとされています。
2 診断について
腎盂尿管がんが疑われる場合、いくつかの検査を行います。
▼超音波検査:簡便に尿路の状態を観察できるため初期評価として有用な検査です。
しかし、この検査では詳細な病気の把握はできません。
▼排泄性尿路造影:造影剤を静脈内へ注射し、腎臓から尿へ排泄される造影剤をレントゲン撮影
で確認し、尿の流れや尿路の形態を観察します。
▼逆行性尿路造影:膀胱鏡を用いて腎盂、尿管へ細いカテーテルを挿入して、カテーテルから造影
剤を注入し、尿路の形態を詳しく観察します。同時にカテーテルから尿の採取が可能です。
▼CT検査:腫瘍の場所や大きさ、広がりなど詳細に確認するための検査です。また、転移の有無などを確認することができます。
その他に尿細胞診検査(尿中の腫瘍細胞の有無)や膀胱鏡検査(膀胱がんの有無)、腎盂尿管鏡検査(組織診検査)などを行います。
3 治療について
1)手術療法
(1)外科的治療
転移のない症例の場合、根治手術として腫瘍のある腎臓と尿管をすべて摘出する腎尿管全摘除術を行います。また、尿管が膀胱へつながる尿管口(膀胱の一部)も同時に切除します。
(2)鏡視下治療(ロボット支援下を含む)
当院では腹腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。これにより、従来の開腹手術を比べて創が小さく、手術後の早期の回復が期待されます。
4 内視鏡的治療
単腎(腎臓が片方しかない)や両側性に発生した場合は、術後の腎機能を保つために尿管鏡を用いて内視鏡下に腫瘍のみを切除する手術を行う場合があります。
但し、この手術は一般に悪性度の低い、小さな単発腫瘍が適応であり、それ以外の腫瘍では難しいとされます。
5 局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)
該当なし
6 薬物療法
(1)抗がん剤
転移のある症例の場合、抗がん剤の投与が第1選択となります。
当院では主にシスプラチンという白金製剤を中心に数種類の抗がん剤を投与します(GC療法:ゲムシタビン・シスプラチン/ MVAC療法:メソトレキセート・ビンクリスチン・ドキソルビシン・シスプラチン)。また、転移のない進行がんの場合に手術前に腫瘍を縮小させる目的や手術後に再発を予防する目的で、抗がん剤治療を行うことがあります。
(2)分子標的薬
該当なし
(3)免疫チェックポイント阻害薬
近年、免疫の働きを利用しがん細胞を排除する「がん免疫療法」が話題となっており、免疫チェックポイント阻害薬もその一つです。この治療法は様々な癌腫でその有効性が期待され、腎盂尿管がんも膀胱がんと同様に2017年12月から薬剤が保険適用となりました(抗PD-1抗体:キートルーダ)。そのため、当院では抗がん剤治療を行っても進行する場合には、二次治療として積極的にこの治療を行っています。
(4)ホルモン剤
該当なし
(5)その他
膀胱鏡を用いて尿管へカテーテルを挿入し、カテーテルから尿管へ薬剤(BCG:結核菌の毒性を弱めたワクチン)を直接注入する治療法です。また、経皮的に腎盂にカテーテルを通して(腎瘻)、薬剤を注入する場合もあります。
この治療法は、一般に粘膜表層にのみ腫瘍が存在する「上皮内がん」が適応となります。
7 放射線療法
根治を目指す治療の適応があるものの他の疾患などにより手術が受けられない場合の根治的治療として、強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度放射線治療を施行できます。また、腫瘍によって生じる症状(血尿や疼痛など)を緩和する目的でも放射線治療を行います。薬物療法と同時に行うことも多く、泌尿器科と放射線治療科が連携して行います。
8 セカンドオピニオンの受け入れ
( 可 )
9 患者さんにメッセージ
当院ではこれまでに多くの患者さんの治療に携わってきました。その治療経験や最新の知見を基に、それぞれの患者さんに適した最良の治療を提供できるよう努めています。
些細なことでもお気軽にご相談ください。
産業医科大学 医学部 泌尿器科学講座 診療につきまして
https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/hinyo/diagnosis.html