卵巣がん
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病気について
卵巣がんは、おなかの中に2つある卵巣からできる悪性腫瘍です。卵巣の異なる部分から発生するがんがあり、以下の3つに分類され
ます。
上皮性卵巣癌
表面の皮から発生する、最も多い卵巣がんです。
悪性胚細胞腫瘍
卵巣がんの5%以下と少ないですが、10-20歳代の若年女性に多くみられる卵巣がんです。
悪性性索間質性腫瘍
卵巣がんの5%程度、ホルモン産生性があることもあります。
それぞれ、発生する元の組織が異なるため、腫瘍としての特徴、治療内容に違いがあります。分類は、病理組織診断(摘出した腫瘍の顕微鏡的な形態診断)で行います。
卵巣は、多少がんのために大きくなっても自覚症状が出にくく、卵巣がんは見つかりにくい病気です。進行しても、腹部の膨満感や違和感、腹痛などの症状で、婦人科疾患を疑われにくいこともあり、現在でも卵巣がんは半数以上がⅢ期以上の進行がんで発見されます。
診断について
卵巣ががんによって腫れていることを、内診や超音波検査で発見することでまず疑います。進行がんであれば、卵巣の腫れの前に、腹水貯留や転移した病変の症状から発見されることもあります。
CT検査やMRI検査等の画像診断で、病気の広がりを確認したり、腫瘍の形からがんであることを推測します。
確定診断は、手術で卵巣を摘出して、病理組織診断(顕微鏡検査)を行うことで決定します。
手術療法
外科的治療
卵巣がんの確定診断を行うこと、がんであれば、その組織分類と、進行期を決めること、かんの完全摘出を目指してがんの量を減らすことを目標に手術を行います。
卵巣は完全におなかの中にある臓器なので、確定診断のためにまず手術で卵巣腫瘍を取り出し、術中迅速病理診断(手術中の急ぎの顕微鏡検査)を行います。結果、卵巣がんであれば、そのまま引き続いて進行期を決めるために子宮や大網等の転移しやすい臓器の摘出や、おなかの中にがんが散らばっていれば、できるだけ腫瘍を取り除く手術を行います。
卵巣がんは、抗がん剤が効きやすいので、進行癌でも比較的積極的に手術を行い、がんをできるだけ取り除く手術を行います。
片方の卵巣に留まった上皮性卵巣がんや、化学療法が効きやすい胚細胞性腫瘍で、妊娠を希望している場合には、がんと反対側の卵巣卵管、子宮を温存する治療を行うことがあります。
鏡視下治療(ロボット支援下を含む)
化学療法を行うために組織を一部採取したり、おなかのなかを観察する目的などで腹腔鏡下手術を行うことはありますが、現在一般的には卵巣がんに対しては開腹手術を行います。
内視鏡的治療
該当なし
局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)
該当なし
薬物療法
抗がん剤
卵巣がんは、抗がん剤の治療効果が高いため、積極的に抗がん剤治療を行うことが多いです。ごく早期のIA期、IB期の卵巣がんを除き、術後化学療法を行っています。上皮性卵巣がんに対しては、通常TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン療法)を行います。
胚細胞性腫瘍に対しては、BEP療法(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン療法)を行います。
ホルモン(内分泌)薬
該当なし
分子標的薬
化学療法に併用してベバシズマブという分子標的薬を使用することがあります。遺伝学的に家族性乳癌・卵巣癌症候群(BRCA遺伝子変異を持つ)と診断された上皮性卵巣がんに対しては、初回治療時にオラパリブという分子標的薬を使用することがあります。
プラチナ感受性再発(初回治療時のカルボプラチン等のプラチナ製剤を含む抗がん剤の治療効果が十分あり、再発時にもプラチナ製剤の効果があった場合)にも、オラパリブという分子標的薬が有効とされています。
免疫チェックポイント阻害薬
該当なし
放射線療法
少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療
腹部や骨盤内リンパ節の再発、あるいは少数個(1~3個程度)の遠隔転移を生じた場合に、薬物療法に加え救済的な放射線治療を選択することが可能です。遠隔転移の部位は、肺や肝臓の転移、骨転移や鎖骨上・縦隔リンパ節転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。
緩和的放射線治療
他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。腫瘍からの出血の止血や疼痛の鎮痛、また骨転移に伴う疼痛や神経症状の緩和に有効性が高いです。緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は2週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。
脳転移に対する放射線治療
脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。
温熱療法 (ハイパーサーミア)
当院では、卵巣がんに対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。パット内の液体を還流させ、皮膚表面の熱感や痛みを抑えます。1回の加温時間は40~60分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。
セカンドオピニオンの受け入れ
(
可
)
患者さんにメッセージ
卵巣がんは種類も多く、治療のための方法も多彩であり、まずはしっかりと診断を確認して、病気の状態と、患者さん自身の状態から最善の治療を選択していく必要があります。保険適応として使える治療法もどんどん増えているため、最新の検査、治療の選択肢を主治医と相談していくことが大事なことです。
産業医科大学 医学部 産科婦人科学 病気と治療の説明
https://uoeh-sanfujin.com/sub/fujinka.html
産業医科大学病院 放射線治療科