用語の定義
◆インシデントとは
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患者さんの診療やケアにおいて、本来のあるべき姿からはずれた行為や事態の発生を意味します。
また、患者さんだけではなく訪問者や医療従事者に実害の発生した事例や実害をもたらす可能性があったと考えられる状況も含みます。
過失の有無を問いません。「患者に実害がなかったもの」及び「実害があったもの」の両方を含みます。
当病院のインシデントとは、「インシデント・アクシデント・オカレンス患者影響度分類」でレベル0からレベル3aまでを指します。
◆アクシデントとは
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医療行為を通じて患者さんに実害が発生したものを意味します。過失の有無は問いません。疾病そのものではなく医療通じて患者さんに発生した合併症、偶発症、不可抗力によるものも含みます。
当病院のアクシデントとは、「インシデント・アクシデント・オカレンス患者影響度分類」でレベル3bからレベル5までを指します。
◆オカレンスとは
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医療行為に関連した合併症や副作用のことです。
当病院のオカレンスとは、「インシデント・アクシデント・オカレンス患者影響度分類」でレベル99を指します(最終的には患者影響度に応じて事象レベルに分類します)。
表1: インシデント・アクシデント・オカレンス患者影響度分類
レベル |
障害の 継続性 |
障害の 程度 |
内容 |
具体例 |
0.01 |
― |
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エラーや医薬品・医療用具の不具合がみられたが、患者に実施されなかった |
仮に実施されていても、患者への影響は小さかった(処置不要)と考えられる |
0.02 |
― |
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仮に実施されていた場合、患者への影響は中等度(処置が必要)と考えられる |
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0.03 |
― |
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仮に実施されていた場合、身体への影響は大きい(生命に影響しうる)と考えられる |
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1 |
なし |
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実施されたが患者への実害はなかった |
何らかの影響を与えた可能性は否定できない |
2 |
一過性 |
軽度 |
処置や治療は行わなかった |
観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた |
3a |
一過性 |
中等度 |
簡単な処置や治療を要した |
消毒、湿布、皮膚の縫合、シーネ固定、鎮痛剤の投与、短期の入院延長 *骨折の場合:保存的療法で、入院日数の延長が短期、退院が可能であった |
3b |
一過性 |
高度 |
濃厚な処置や治療を要した |
バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、手術、長期の入院延長、外来患者の入院 *骨折の場合:手術、観血的処置、手術が患者の病態から保存的治療を選択したが、入院日数が大幅に延長した |
4a |
永続的 |
軽度~ 中等度 |
永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない |
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4b |
永続的 |
中等度~高度 |
永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う |
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5 |
死亡 |
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死亡(原疾患の自然経過は除く) |
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99 |
不明 |
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医療行為に関連した合併症や副作用(医療安全に関する報告基準該当症例) |
※オカレンスレポートは、最終的には患者影響度に応じて事象レベルに分類する |
*医療機関において発生した事例については、下記のとおり、インシデント・アクシデントに関わらず、(財)日本医療機能評価機構(厚生労働省委託)への報告が義務づけられています。
1 |
ヒヤリハット記述情報 (レベル3aまで) |
3ヶ月毎に提出 |
2001年10月から |
2 |
ヒヤリハット全般コード化情報 (レベル3aまで) |
|
2001年10月から |
3 |
医療事故情報収集 重大な事故の報告(レベル3b以上) |
発生より2週間以内に報告 |
2004年10月1日から実施 |
◆重大事例報告基準【(財)日本医療機能評価機構】
・明らかに誤った医療行為や管理上の問題により、患者が死亡もしくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例。
・明らかに誤った行為は認められないが、医療行為や管理上の問題により、予期しない形で、患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例。
・その他、警鐘的意義が大きいと医療機関が考える事例。
・医療行為や管理上の問題とは何ら関係もなく予期せぬ結果となった場合。
◆医療過誤とは
「患者に実害があること」、「医療行為に過失があること」、「患者の実害と過失との間に因果関係があること」の3要件が揃った事態を意味します。
「過失によって発生した医療事故」と表現した場合には、医療過誤と同じ意味です。
◆その他
インシデントの中には、医療行為に関する問題だけでなく、患者さんや家族と医療従事者の間でのコミュニケーションや対人技術に関する問題、患者さんや家族からの苦情なども含まれます。