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大腸がん

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1 病気について(概要、疫学的なものも含めて)

 

 我が国では、食習慣の欧米化や高齢化などによって大腸がんの患者数は増加しています。大腸がんは大腸のどこにでも発生しますが、中でもS状結腸や直腸に好発します。貧血、血便、便通異常、便が細くなるなどの症状がありますが、自覚症状のないこともあります。大腸の粘膜のすぐ下の粘膜下層という、浅い部分にとどまるものを早期がん、粘膜下層よりさらに深い部分に及ぶものやリンパ節・他臓器への転移を認めるものを進行がんといいます。早期がんの中でも粘膜下層のうち浅い部分までにとどまる癌に対しては内視鏡治療で根治できる可能性があり、進行がんに対しては手術や化学療法などが行われます。

 2 診断について

 

 便潜血検査で陽性になった場合や、血便や便通異常などの症状を認める場合は、大腸内視鏡検査を行います。内視鏡検査で大腸に腫瘤を認めた場合には、病変の一部を採取(生検)して顕微鏡で細胞の観察(病理組織学的検査)を行い、良性・悪性の診断を行います。大腸がんと診断された場合には、注腸造影検査、CT検査、超音波検査などの画像検査を用いて病気の拡がりを調べることで病期(ステージ)の決定を行います。これらの検査で十分な病期決定ができない場合には、MRIPET検査などを行うこともあります。

血液検査で腫瘍マーカーというものがあり、大腸がんではCEACA19-9が一般的に使われます。しかし、腫瘍マーカーだけでは大腸がんの診断はできません。がんがあっても腫瘍マーカーは上昇しないことがありますし、逆にがん以外の原因で上昇することがあるからです。ただし、大腸がんの手術後や化学療法などの治療中に定期的に測定することにより、がんの再発を予測したり、治療効果の判断に有効です。

3 外科的治療

 

1)手術療法

 ①外科的治療

 大腸がんの治療において内視鏡的切除が困難な症例は手術適応となります。具体的にはがんが腸管の壁の深いところまで浸潤している症例やリンパ節転移が疑われる症例となります。手術のアプローチ法としては、大きくお腹を開ける開腹手術と下記に示す腹腔鏡手術(ロボット支援下を含む)に分けられます。当院では大腸がん手術のほとんどを侵襲が少なく、術後回復の早い腹腔鏡手術で行なっておりますが、根治性が損なわれると判断した場合や腹腔鏡手術ではリスクが高いと判断した場合は開腹手術も行なっております。

術後の病理検査で再発リスクの高い状態(ハイリスクStageⅡStageⅢ)と判断した場合には再発予防目的で半年間をめどに抗がん剤治療も追加する場合があります。現時点で、5-FUとロイコボリン、内服薬のUFTとロイコボリン、カペシタビン、S-1のいずれかによる治療や、5-FUとロイコボリンとオキサリプラチンを組み合わせたFOLFOX療法や、カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせたXELOX療法を選択することができます。

最近では局所進行直腸がん(腫瘍が大きい、周囲のリンパ節転移が高度ながん)については手術の際に細胞レベルでの取り残しが無いように、術前に腫瘍を小さくする目的で抗がん剤や放射線治療も行なっております。時折、特に直腸がんにおいて、がんが他臓器(小腸、精嚢、前立腺、膀胱、子宮など)に直接浸潤している場合がありますが、その場合でも上記の抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせながら、合併切除を行い、根治を目指しております。受診時にすでに他臓器転移(肝臓や肺など)にある場合でも抗がん剤や放射線治療後に、手術で切除し根治を目指すことも可能となっております。

②腹腔鏡手術(ロボット支援下を含む)

  上記でも記載しましたが、現在当院では腹腔鏡手術を多くの症例で行なっております。腹腔鏡手術はお腹に小さな孔(512mm)を5箇所ほど開けて、そこからカメラや鉗子(手術を行う器具)を挿入し、手術をお腹の中で行う方法です。大きくお腹を開ける開腹手術に比べると傷が小さく、術後の回復が早い、出血量が少ないという利点がある一方、手術時間がやや長く、手術チームとしての習熟が必要といった欠点もあります。ガイドラインでも以前は良性腫瘍や早期がんのみが適応となっていましたが、現在はがんの部位や進行度、手術チームの習熟度を考慮し適応を決定するとなっています。当科では以前より腹腔鏡手術を行なっており、手術チームの習熟度は保たれております。

最近では直腸がんに保険適応になったロボット支援下手術も積極的に行なっております。従来の腹腔鏡手術に比べ、狭い骨盤内での手術操作性に優れており、非常に質の高い手術が可能となっております。

上記のように現在では手術といっても、抗がん剤治療や放射線治療などを絡めた様々な治療戦略があります。当院ではガイドラインを参考にすることはもちろんですが、最新の知見を踏まえながら、定期的にカンファレンスを行い、患者さんに合ったベストな治療方法を選択することが可能です。ご不明な点がございましたら外来主治医に遠慮なくお尋ねください。

 

4  内視鏡的治療

   早期がんの中でも粘膜下層の浅い部分までにとどまるものに対しては内視鏡治療が適応となり、ポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などを行なっています。ポリペクトミーやEMRでは、スネアというリング状の器具を病変の根元にかけて切除します。ESDは特殊な電気メスを用いて病変の下を剥がすように切除します。EMRでは一括で切除(ひとつの病変をひとかたまりで切除すること)できる大きさに制限があるのに対し、ESDではサイズの大きな病変に対しても、一括で切り取ることが可能であり、その後の病理検査で正確な診断が可能となります。その一方でESDEMRより難易度が高く、治療時間もかかりますので腫瘍のサイズや細胞の顔付きの悪さなどにより使い分けます。

5 局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)

   該当なし

6 薬物療法

  

(1)抗がん剤

   大腸がんに使用可能な抗がん剤は数種類あり、それらを組み合わせることで治療を行うことが一般的です。オキサリプラチン、イリノテカン、5-FUといった抗がん剤がその代表的なものであり、組み合わせによってFOLFOX療法、FOLFIRI療法と呼ばれます。この5-FUを内服薬(S-1やカペシタビン)に替えてより投与しやすくしたSOX療法、XELOX療法、IRIS療法、XELIRI療法なども行われます。

大腸がんでは、癌の部位や遺伝子の変化により予後が不良(生存期間が短い)と考えられるものがあります。これらの大腸がんに対しては、上記のオキサリプラチン、イリノテカン、5-FUをすべて一度に投与するFOLFOXIRI療法で生存期間が延びることが証明されています。比較的若く全身状態がいい方ではこのようなさらに強力な治療を行うことも考慮されます。これらの治療法にの分子標的薬を組み合わせることで、さらに治療効果を高めることができます。

これらの有効性の高い化学療法を1番目、2番目と優先して使用しますが、効果がなくなってしまった場合はトリフルリジン・チピラシル(TAS-102)やレゴラフェニブという薬を投与します。これらの薬剤は腫瘍を小さくする効果はそれほど高くはありませんが、生存期間を延長させることが期待できます。


(2)分子標的薬

   分子標的薬には血管新生阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト)、抗EGFR抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)などがあります。の抗がん剤と組み合わせて使用することで、治療効果を高めることができると言われています。

  

(3)免疫チェックポイント阻害薬

 がん細胞はPD-1という蛋白を介してリンパ球による攻撃から身を守る性質があります。このPD-1に作用して、リンパ球ががん細胞を攻撃しやすくする薬が免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブです。人体にはDNAを複製する際に起きるエラーを修復する機能がありますが、この機能が欠損している場合エラーが修復されずに蓄積してしまいます。この状態をマイクロサテライト不安定性(MSI-high)といい、遺伝子検査を行い調べることができます。MSI-highを有する大腸がんにおいては、ペムブロリズマブの有効性が高いことがわかっています



7 放射線療法


(1)術前放射線治療

局所進行期(腫瘍が大きい、リンパ節転移が目立つ)にある直腸がん(主に肛門に近い下部直腸がん)では、手術でがんの取り残しを生じる可能性を減らす目的、性機能や排尿機能の温存率を高める目的、また人工肛門の増設を回避する目的などで、術前放射線治療を行うことがあります。治療効果を高める目的で、抗がん剤を同時に併用します(術前化学放射線療法)。術前化学放射線療法により再発率の低下、排尿・性機能の温存率の上昇、また肛門温存手術の実現率の向上などが期待できます。

 当院では隣接する正常臓器への放射線の照射線量を低減する高精度な照射手法である強度変調回転放射線治療 (VMAT)を採用しています。さらに、放射線治療の治療効果を高める目的で温熱療法(後述)の併用が選択可能です。


(2)手術療法後の再発予防を目的とした放射線治療

 手術で切除した大腸がんの遺残がある場合やがんの再発リスクが高いと考えられる場合に、放射線治療を追加します。再発や転移を生じるリスクが高い場合には、抗がん剤を併用することがあります。


(3)術後の局所再発や小数個の遠隔転移に対する救済的放射線治療

 切除した大腸がんの局所再発や、遠隔転移を生じたものの小数個である場合に、薬物療法に加えて救済的放射線治療を選択することが可能です。遠隔転移の部位は、肺や肝臓の転移、骨転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。局所再発では、強度変調回転放射線治療 (VMAT)を採用しています。さらに、温熱療法(後述)を併用することで、治療効果の改善を図っています。また、5cm以下の少数個の肺転移や肝転移に対しては、定位放射線治療(ピンポイント照射)が選択でき、より高い腫瘍の制御が期待できます。

 過去に放射線治療が行われた骨盤内の再発では、摘出術が困難な場合に再度の放射線治療(再照射)が選択肢となります。通常、十分な量の放射線を投与できませんが、当院ではより腫瘍に対して高精度に放射線を集中させる強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いることや温熱療法(後述)を併用することで、治療効果の改善を図っています。


(4)脳転移に対する放射線治療

 脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。


(5)緩和的放射線治療

 他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。腫瘍からの出血の止血、疼痛の鎮痛また骨転移に伴う疼痛や神経症状の緩和に有効性が高いです。緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は3週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。


(6)温熱療法 (ハイパーサーミア)

 当院では、大腸がんに対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。パット内の液体を還流させ、皮膚表面の熱感や痛みを抑えます。1回の加温時間は4060分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

 

8 セカンドオピニオンの受け入れ

   ( 可 ) 

9 患者さんにメッセージ

 

 早期発見、早期治療を行うことができれば、大腸がんを根治させることが可能となります。便潜血検査はこの早期発見に有用な検査法の一つであり、職場の検診などで受けることができますので、ぜひ利用されてください。



産業医科大学 医学部 第三内科学  患者様へ

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/3nai/homepage/m_kanjya.html


産業医科大学 医学部 第一外科学教室  患者の皆様へ 下部消化管グループ

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/1geka/m_group3.html